Rina Sawayamaを知っていますか? 個性的な歌姫の道のり

 

 

海外で話題の日本人シンガーがいる。その噂をSNSで目にしたのは、2年ほど前のこと。彼女の名前はRina Sawayama。新潟県出身で、ロンドンを拠点に活動しているシンガーソングライター。ふとした、好奇心で曲をチェック。最初に目に飛び込んできたのは、「Cherry」という曲のMVだった。

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かなり、挑戦的な演出、踊り、メイク。歌詞の内容は、思いを寄せている女子に「私のCherry(最初の人)になってくれない?」と誘いかけるもの。「おそらくはLGBTQの方なのだろうな」とすぐに分かった。後のインタビューで彼女が自身のセクシャリティを「パン・セクシュアル」(全性愛者。男性・女性・トランスジェンダー・愛する対象が性別に捕らわれない)であると語っている。ケンブリッジ大学に在学していたRina Sawayama。アジア人差別から、いじめを経験していたようだ。うつ病を経験した彼女を受け入れてくれたのが、LGBTQのコミュニティーであったという。

ストレートの自分にとって、正直、軽い驚きはあったものの、そういった事実はあまり気にならなかった。彼女の歌声が最高に気に入ったからだ。妖しく危うい世界観のMVとひたむきに相手に問いかける切なさ。その中で、生き生きと力強く歌い上げる圧倒的なボーカルには、パワーと深さが感じられた。

Sawayamaさんの歌の世界には、友情と愛情のアンバランスなコントラストが感じられる曲がある。

アルバム「SAWAYAMA」に収録された曲の中の一曲。「Bad Friend」だ。

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友達と疎遠になって、自分が壊してしまった人間関係。そのことがずっと心にひっかかっていたのだろうか。何度も「I’m a bad friend」と繰り返すフレーズ。彼女の後悔や苦悩が感じられる。美しいメロディーと対照的な攻撃性のあるMVを見ていると、友情の儚さや、青春の狂気のようなものを感じて切なくなる。

最近は、日本のテレビ番組などに取り上げられることも多くなってきたSawayamaさん。日本でもかなり、知名度が高くなってきたのだろうと思う。

日本語で話すこともある彼女は、少し、シャイで、礼儀正しく知的な日本女性という印象だ。

快活に話す彼女を見ていると、「こんな、素敵な女性なのに、世界でこんなに苦労してきたんだな…」と複雑な気持ちになった。

人種のマイノリティーセクシャルマイノリティー、どんなに多様性を世界が訴えても、なかなか、世界はひとつになったりはしない。理解し合うということは、とても難しいのだと、常日頃から考えさせられる。ストレートの私も、幼い頃から、生きづらさと戦ってきた。どこのコミュニティーにも属せないことの痛みも経験してきた。けれども、私の「痛み」と彼女たちの「痛み」は、辛くても同じものではない。とてもデリケートな問題だ。

フィギュアスケートを長年見ていると、時間がかかって、カミングアウトする選手たちの言葉を受け止めることがたまにある。心に痛みと解決できない難しさを抱える人に驚いたりすることは少なくなってきた。そう、まだまだ理解にはほど遠いけれど、受け入れて前に進む時代になってきつつあると感じる。自分と他人。考え方、感じ方、全て理解することはできなくても、歩み寄れる瞬間が増えれば、一歩ずつ、世界は動いていく。

 

最後に最近リリースされたRina Sawayamaと、Elton Johnのコラボ曲。「Chosen Family」をご紹介。

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この曲で表現される「Chosen Family」に様々な意味を感じてしまう。Sawayamaさんと、Elton。年齢も人種も、経てきた時間も違う二人。でも、確かに通い合う思いや絆。二人でこの歌を歌うことによって、広がっていく世界を感じて、心が動かされた。なんて、優しく、切なく、強い意志を感じる歌だろう。私たちは、様々な思いを経てどこかで、家族に「辿り着く」のかもしれない。これからも、Sawayamaさんの活躍を注目していたい。唯一無二の個性と歌声を持つ彼女が、歌を通して、私たちに届けてくれるエネルギーに励まされたいと思っている。