カーキのパンツと古着屋さんのお話。

7月になり、熱さが本格化してきました。皆さん、お変わりはないですか?

 

夏になると、一斉にショップがセールを始め、夏のファッションに話題が自然と集まりますよね。今日は、個人的に私が気に入っている夏のコーディネイトと、古着屋さんのお話をしたいな、と思います。

 

事の起こりは今年の6月。私の推しがファッション雑誌のWeb連載を担当することになり、お気に入りのファッションについて語っていました。

その中で、一つのコーディネイトが目に留まり、昔のことを思い出したのです。

そのコーディネイトは、白いTシャツと、カーキのパンツ。

実は、このコーディネイト。私が、夏になると必ずチャレンジしてみたくなるコーディネイトにテイストが近かったのです。

 

今から、14年位前、白いシャツのコーディネイトをネットサーフィンして、検索していた私は、ある古着屋さんのブログに行きつきました。

 

そのブログでは、白いロングシャツを、様々なコーディネイトで紹介していたのですが、その中で、目に留まったのは、白いロングシャツ、黒いジレ、そして、カーキのパンツのコーデでした。

 

清涼感のある白と、土臭さを感じるカーキのパンツ。このメリハリはとても新鮮で、つい真似したくなるものでした。早速店の名前をチェックしつつ、毎日、ブログをチェックしては、手持ちのもので、コーデを真似する日々が続きました。

 

そのお店では、常にありそうでない、オリジナリティのあるアイテムが紹介されていました。藍染のロングスカートや、アフリカの民族衣装のようなチュニック。華やかなアイテムの中に、一点、ベージュのリネン地のストールや、ロングコートを組み合わせて、どこかに硬さを演出しているのが非常に特徴的でした。

 

古着のファッションを生かしつつ、メッセージ性のある古着の世界。お店のコンセプトに惹かれながら、私の住む地域からは、気軽に通えない函館。お金が溜まったら、このお店に行って、ショッピングを楽しもう、そう、思って、日々のお仕事を頑張っていました。

 

ある日、突然、そのお店が閉店のお知らせをUPしたとき、驚いたのと同時に、私の中で、ある思いに行きつきました。「永遠に続くものなんてないんだ。好きだと思うなら、行けるときにその場所に行って、楽しめるときに、思い切って楽しまなくちゃいけないんだ」と。

 

夏になると、必ず、白いレースのブラウスと、カーキのパンツを合わせて、街へ繰り出したくなります。私にとっての夏の定番。そのコーデをするたびに、いつも、ワクワクしながら、ブログをチェックしていた、あのお気に入りのお店を思い出します。

 

私の推しも、白いシャツにカーキのパンツ、宝探しのように、古着屋巡りをしているのかな? 楽しめるときに、お洒落を楽しんで、行けるときにお気に入りの古着屋さんに行ける、そんな瞬間を大切にしてほしいなって思いました。

This show was tasty. 結弦くんが私たちに語りかけるもの Fantasy on Ice2022

とにかく、すごいものを見た。一瞬私は、夢を見ていたのか?

いや、違う。そのショーは現実にあったことなのだ。あまりにあっという間に彼は、氷上を滑りぬけて行った。その感動を、今、私は書き留める。自分の備忘録のために。

Fantasy on Ice 2022 静岡公演が先ほど行われた。

 

羽生結弦くん。あなたは最初のオープニングから、今までとは違う何かを漂わせていた。オープニング宮川大聖さんによる「略奪」。氷上はお洒落なバーにいるような雰囲気。少し、煽情的な振付の中、今までにない妖艶なムードの結弦くん。以前、彼は記者からの質問で「自分をアイスクリームに例えたら、どんなフレーバーか?」と問われたことがある。その時彼は、「ポッピングシャワーかな。一見、甘く見えるかもしれないけれど、口の中に入れたらぱちぱちと勢いよく弾けだす」と、答えていた。

なるほど、口当たりは確かに何かがはじけるような刺激があった。繰り出されるジャンプも勢いを感じた。しかし、その口当たりは、アイスクリームよりも、もっと大人の味わい、そう、よく冷えたシャンパンのような、まろやかさが刺激を包み込むような風味だ。

そして、あなたが演じた「レゾン」。ネット上では「セクシー」や「背徳的」という評判が高かった。しかし、実際に目にしたときに、私が感じたのは、「激しく痛切な心の叫び」と「狂気」だった。短い時間の合間に微妙に凝った動きが随所に詰め込まれていて、瞬き禁止。ありったけの熱情とひたむきさ。何か失って、その先に何か手にしたような。思えば、北京オリンピックで思うような結果につながらずにいた彼。きっと、終わった後に、喪失感もあったことだろう。しかしその一方で彼は「幸せです」とインタビューで答えていた。転倒こそあれ、認定された4回転アクセル。彼にしかできない感動は世界を包み込んだ。その道を究めた選手にしか到達できない境地に彼は到達できたのかもしれない。そのような経緯を経ての、このレゾン。終わった後に、感動と同時に私はなぜか、涙がこみあげてきた。

 

そして、アンコールには、ゲストアーティスト NAOTOさんと新妻聖子さんによる「ノートル・ダム・ドパリ」。これは、ウィルソンの振付による、以前、結弦くんが、少し苦戦していたプログラムだった。「エスメラルダとカジモドを一人で両方演じると言われても、俺、分かんねーし」と、当時答えていた結弦くん。時を経て、表された表現は、磨き抜かれた狂気と情感。きっと、あの頃は、はまらなかった表現も、様々なプログラムを滑ることによって、パズルのピースがはまるように、自分のものになっていったのだな。更なる感動が氷上からあふれ出していった。結弦くん、今回のプログラム、あなたは、年代物の豊潤なワインのように表現が熟成されていた。その一杯に汗と涙、苦悩の果ての笑顔を感じる。

 

いつも全力の結弦くんが、更に上を行く全力で私たちに見せてくれた至高の演技。幸せな気持ちになったし、普段抱えている不安や苦悩を、一瞬忘れることができたよ。

貴方に必要なのは、「金」というより、「プラチナ」かもしれない。

この幸せに、しばらく浸っていよう。また、新たなシーズン、貴方を応援するために。

Good morning World! 朝に聴きたいプレイリストを追いかけて

 

 

おはようございます。日付が変わって金曜日。新しい一日がスタートしましたね。今、このブログを読んでくださっている方は、夜勤の最中でしょうか、それとも、通勤中の電車に揺られているでしょうか? 

朝は、なんとなく慌ただしく過ぎ去ってしまっていませんか? いつも、ゴミ出しに外に出ると、朝にしか感じられない空気の匂いを感じます。すれ違う小学生が「おはようございます!」と挨拶してくれると、嬉しいと同時にこちらも背筋をピンと正して、「おはようございます!」と返事し返してしまいます。

 

今日は、そんな忙しい朝のひと時に寄り添うような私の朝のプレイリストから、今の気分に合った曲をご紹介したいと思います。

 

まずは、オーソドックスなナンバーをご紹介。

Diana Rossの「Touch me in the morning」。

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この曲には、とても思い入れがあります。短大時代にイギリスにホームステイをしていた朝、ホストマザーが用意してくれたコーンフレークを齧りながら、彼女がかけていたラジオに耳を傾けていました。すると、そのラジオからこの曲が流れてきたのです。以前から、お気に入りだったこの曲。私は彼女に「私、この曲、好きなの」と告げました。そしたら彼女も「私もよ。素敵な曲よね」と答えてくれたのです。滞在しはじめて数日目の朝、思えば、その瞬間から、彼女との距離が少し縮まっていったような気がします。「We don’t have tomorrow. But we had yesterday」このフレーズを聴くたびに、私はイギリスの朝を思い出すのです。

 

 

飲み会の次の日に、こんな曲はいかがでしょうか? 

Lukas Grahamの「Drunk In The Morning」。

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朝の五時頃に酔っぱらって、愛しい君に電話をかけちゃう彼。なんとも必死な感じがします。

お酒の「酔い」と朝の時間って、とてもミスマッチで背徳的ですよね。そんな状況でも、会いたい人がいて、話がしたくなっちゃうのは、幸せな気がします。ピアノの心地よいサウンドと歯切れのいいボーカルが、楽しい気持ちにさせてくれる曲。飲み過ぎた昨日の自分に反省しながら、気持ちを切り替えたい人にお勧めです。

 

ちょっぴり切ない朝に聴きたい曲があります。

Shawn Mendesの「Where Were You In The Morning」。

 

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きっと、朝が来るまではいい感じだったのでしょうかね。気持ちはいつしか、すれ違い、出て行ってしまった彼女。揺れ動く気持ちがテーマになっています。なんといっても、甘く切なく相手に呼びかけるボーカル、雨の中で聴くと景色をエモーショナルなものにしてくれるのではないでしょうか。

 

朝の空気を独特な世界にかえてくれるのは、この曲。

Rei Brownで、「Islands」。

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サウンドも、ボーカルも、とても心地よく、癒されるナンバー。歌われているのは、水平線のはるか向こうの景色。島が見えて海が広がって、そして、思い出されるのは、愛しい恋人との思い出。隔てた島が、二人の距離のよう。比喩表現の美しさが光ります。こういった表現は、彼が日本にルーツがあるから生まれたのかな…と思ってしまいました。

昨日別れた「誰か」を思い出したい朝に、この曲が寄り添ってくれるかもしれません。

 

そして、一週間を乗り切った週末の朝に、こんな曲はいかがでしょうか?

 

Rocketmanで「Saturday Morning」。

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タイのバンコクを拠点とするバンド。彼らの曲を知ったきっかけは、あるお気に入りのフィギュアスケーターのインスタストーリーからでした。シティポップを思わせるお洒落なサウンドと、優しいボーカルが癖になり、最近、お気に入りになりつつあります。

この曲は、MVが映画を見ているみたいで独特ですね。一週間頑張ってきた自分を、トーストやコーヒーと一緒に癒したいときに、この曲はおすすめです。

 

一日の始まりに、人はいろいろなことを思いながら、社会へと飛び出していくのですね。千人いたら、千通りの朝の姿がそこにあります。

 

忙しい朝だからこそ、音楽の力を借りて、エネルギーをチャージさせて、生まれたての世界にいってらっしゃい! 朝のプレイリスト紹介でした!

名曲の雨を降らして… 推しのリリースラッシュ徒然日記

 

 

6月も、もう中旬になりましたね。そろそろ梅雨入りした地域も出てきているのではないでしょうか。5月から引き続き、曇りや雨の日ばかりで、今年も鬱々とした気候に悩まされている方、多いのではないでしょうか。

私も、寒くなったり暑くなったりで体調を崩しそうになりながらも、なんとか日々をこなしておりました。

そんな中、最近になって、私が推しているアーティストさんの新曲が次々とリリース! どの曲も名曲ぞろい。早速、曲を聴いた感動をシェアしたいと思います。

 

まずは、NYを中心に活動する神戸出身のシンガーソングライターRei BrownでJojiと共作の「Thinking Bout you」。

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Rei brownは、私がブログで何回かご紹介させていただいたアーティストJojiの幼い頃からの友達で、二人は過去に何度か共作で曲を発表しています。ソフトで美しい歌声と、心地の良いメロディー、そして甘く、愛することに希望を持たせてくれるような歌詞が特徴的で、最近、活躍の幅を広げています。

今回のJojiとのコラボ、二人の声質がとてもよく似ていますが、歌詞は相反するムードをかもしだしています。光と影のようなフレーズが交錯しながら、思いを伝えたい相手に必死に呼びかけている、そんなイメージの切ないラブソング。公式のMVでは、壮大な宇宙からみた地球の映像が映し出されて、歌詞に表れる「真夜中に空を見上げたら、 君のことを想っていると分かって」という、強い思いを強調しているかのようです。別れるぎりぎりまで迷いや葛藤があったのでしょうか。やっとの思いで離れ離れになった後でも、相手を思い、相手を感じているのがダイレクトに伝わってきました。現実的な距離と近づこうとする心の距離が一つテーマになっているような気がします。

 

続いて、88risingで異彩を放つ女性ボーカリストと言えば、インドネシア出身のNiki、曲は「Before」。

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別れてしまった恋人に何年後かに数日間だけ会いに行く女性のストーリー。まだ、気持ちはあるけれど、煮え切らない元恋人。次の彼女候補の女友達もいるみたい。数日間のスリリングな葛藤。だけど、もう、付き合っていたあの頃には戻れないみたい… 揺れ動く女性の気持ちがリアルに伝わってくる大人のラブソングです。ここでも、すぐそばにいるのにすれ違う、相手との距離がテーマになっていますね。MVの作り方も、歌詞の世界をそのままに「歯磨きしている私を抱き寄せる彼」がそのまま出てきたりして、映像と歌の世界がシンクロしています。好きな気持ちが残っていて、そういったものをすべて清算して前に進んでいくことって、簡単なことじゃありませんよね。できればやり直したい、そう思っても、時間が経って、自分が変わって、相手も変わっていってしまう。ついこの間まであった「確かなもの」、失っていった時間が「Before」に込められていて、秋口に聴くと、心が締め付けられそうになると思います。曲調は穏やかで少し刺激を抑えたナンバー。優し気なボーカルが、静かに恋を諦める女性の姿を象徴するかのようでした。

 

そして、2年の沈黙を破ってあの男が帰ってきました。そう、私のブログで何回も紹介させていただいている88risingの看板スター Joji。曲は「Glimpse Of Us」。果たして、どのようなナンバーなのかと期待に心震えながら見たMV。

youtu.be

 

序盤の美しく透き通るようなコーラスで、すでに心をつかまれてしまいました。描かれていたのは「彼女の腕の中で“君”のことを想う男の姿」。あまりにもまっすぐに痛みを美しく表現している魅惑の歌声。そして、MVの内容はその曲調とは真逆の不穏な世界観。非行に走る若者から見えてくる世界が断片的に映し出されます。何度か現れる暴力のシーン。荒れた若者の暮らし。その合間には川の岩場でくつろぐ彼ら。暴力的な彼らが時折見せる「人間らしさ」。恋人に送っているらしき「I miss you」のメッセージ。道路沿いの壁にスプレーで書かれた「Help」の文字。

 

世界中のどこにでも広がっている貧困や暴力や最下層に追いやられる人々の苦しみや痛み。そして、花火が舞い上がり、最後には、燃やし尽くされる車と座り込む若者。この世界中の不穏な空気をまるで切り取っているかのような世界に美しい旋律が鎮魂歌のように寄り添います。「Glimpse」という単語には「垣間見える」という意味があります。「Glimpse Of Us」は「僕らに垣間見えるもの」ということになるでしょうか。「埋められない距離」を抱えた恋人たちの間に垣間見えるもの。MVのギャングたちのあいだにふと垣間見えるもの。その「垣間見えるもの」を現代に生きる私たちにリアルに示しているのがこのMVと曲だとしたら、Jojiはなんと、深いテーマを新曲にもってきたのでしょうか。

 

すごくショッキングなMVなのに、つい見てしまうのは、悲しみをリアルに映し出しているからでしょう。入り込んでくる雑音までが、この曲の効果音として的確に機能している、全てが巧みに計算されつくしているのを感じます。

重いテーマなのになぜか、今を生きる私には「解毒剤」のように感じられ、この曲を何度もリピートしてしまいました。賛否両論あるかもしれませんが、今年の私の中で、ナンバー1、来てしまったようです。改めて、Jojiのすごさを思い知りました。

 

どの曲からも、埋められない距離の中でもがく人々が見えて、それはそのまま、昨今の空気を表しているのかと思うほどです。

ここから、推し達は、ツアーが開催され、世界各地を回ることになります。どうか、歌声を待っている私たちに、名曲という雨をたくさん降らせてほしい。そう思うようなリリースラッシュでした。

今度新曲が届いたときには、どのような世界をご紹介できるでしょうか。それまで、どうか、お元気で。

シカオちゃんがフィギュアスケートに出会ったら Fantasy on Ice 2022

 

 

楽しみにしていたアイスショー、Fantasy on Ice2022がいよいよ開催された。正式に開催されるのは、3年ぶり。アイスショーを楽しめる日常が、少しずつ戻ってきたのかな、と少しほっとする気持ちが湧いて来ていた。ゲストアーティストの発表があった時、驚きを隠せなかった。私が長年ファンでいたアーティストさんの名前がそこにあったからだ。

その人の名前はスガシカオ

1995年のデビュー以来、存在感のある楽曲で魅了し続けている個性的なシンガーソングライターだ。

私がスガシカオさんの楽曲に強く惹かれたのは、1999年リリースの「夜明け前」からだった。

独特の渇きを感じさせる歌詞とクールな楽曲。聞いたとき、「夜中ってそう思うことがあるよね…」と強く共感させられたのを覚えている。

更に、1999年、スガシカオさんは「甘い果実」という衝撃的な作品を世に出している。

重苦しい情念と背徳的な歌詞。正直言って心臓がどくどくなってくるような、背筋がぞくりとなるような。なのに聞いた後、なぜか元気になってしまうから不思議だ。正直、この時、私は仕事で悩みを抱えていて苦しかった時期だった。そんな自分の心情が、この曲によって洗い流されていくのを感じた。今思えば、ショック療法だったと思う。

 

綺麗なのに、綺麗なだけじゃないシカオちゃんの曲は、ずっと色あせることなく、心にとどまりつづけていた。そんなシカオちゃんアイスショーで生歌を披露する。羽生結弦をはじめとした素晴らしいスケーターたちが集結する、あのFantasy on Iceに!

 

今回は、私を闇から救ってくれたアーティストの一人、スガシカオさんの楽曲で滑ったスケーターたちを中心に、Fantasy on Iceの模様を綴っていきたい。

 

まずは冒頭、アイスショーの始まりを飾るにふさわしい、軽快でさわやかなナンバー「午後のパレード」より、全体のグループ演技。

MVの動きと、スケーターたちの動きがシンクロして、曲の世界が更に氷上でクリアーになっていく。熱量はヒートアップ。羽生くんMVの振付を完コピ。キレとしなやかさで魅せていた。カメラワークがもう少し全体をとらえていたら、全体のテーマがより明確に見えてきたのだろうな、と思いながら、みんながすごく楽しそうに観客とコネクトしているのをみると、「ショーが始まるんだな…」としみじみした気持ちになった。

「きっと明日は君の街へ パレードがほら やってくる」これから、何公演も様々な街へアイスショーが開催される。スケーターの想いとアーティストの想いが完全に一つになっていた。

最初にシカオちゃんのナンバーで演技を行ったのは、この間引退を発表したばかりの田中刑事選手で、曲は「Progress」

どこか、夢の途中で挫折を経験したことのある人なら、誰もが共感する切なさがあるナンバー。刑事くんは、ジャンプを次々に軽々ときめていった。アマチュア時代、難しいジャンプを飛ばなければいけない難しさと戦ってきた刑事くんの姿が思い出された。今は、そういったプレッシャーから解放されたすがすがしさと軽やかさがそこに感じられた。甘く切ないシカオちゃんのボーカルと動きがよく合っていた。「世界中にあふれているため息と 君とぼくの甘酸っぱい挫折に捧ぐ “あと一歩だけ前に進もう”」この部分、非常に伸びやかさを見せていた刑事くん。向かい風の中、意を決して進んでいこうとする刑事くんが見えた。

 

続いてのシカオちゃんのナンバーは、織田信成さんで「黄金の月」。「どんな人よりもうまく

自分のことを偽れる 力をもってしまった」の辺りで陰りのある演じ方を見せていた。いつも明るくふるまっている信成くんと、この曲のギャップについて、思わず考えさせられた。長年、活躍の場を広げ続けている信成くん。心の葛藤を胸に秘めていることがあるのだろうか。指先まで神経を行き届かせた所作と、こちらも安定感のあるジャンプ。独特の濁りのある歌詞の中で、綺麗なムーヴメントが随所に印象に残った。まるで、これから、もう一花咲かせようとしているみたいに。

 

後半の演技で魅せてくれたのはアメリカのジョニー・ウィアーさん。演目は、誰もがおなじみの「夜空ノムコウ」。この曲の中で、ジョニーはダブルアクセルを2回、シャープに決めた。昔から、ジョニーはアクセルジャンプが綺麗な選手だった。勢いを感じる正確なアクセルの踏切りの時に、選手時代のジョニーが思い出されてきた。シカオちゃんのツイートからの情報だが、ジョニーは歌詞を翻訳して、「この解釈でいいの?」と何度も確認をしていたという。ジャンプだけではなく、様々な要素を丁寧に行っているジョニーを見たとき、彼は、この曲を自分の人生に重ね合わせて、とても気に入ったのではないだろうか。

「あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほどうまくはいかないみたいだ」過ぎ去った思い出に感傷的に浸るような表現を見せるジョニー。今のジョニーにしか出せない味わいを感じた。「夜空の向こうには もう明日が待っている」のフレーズで、情感あふれる目線で上を見上げるジョニーは綺麗だった。

 

最後はお待ちかね 羽生結弦選手。曲目は「Real Face」KAT-TUNのヒット曲としても知られているこの曲を聞いた瞬間、「そう来たか!」と思った。

シカオちゃんは、サラリーマンからミュージシャンに転職した過去がある。一時期売れずに、食べるものに困った時は、胃薬をご飯にかけたりして食べたこともあると、テレビで語っていた。レーベルを変更して、インディーズからまたメジャー契約と、ここまで順風満帆な道のりではなかったと思う。この曲のフレーズ「ギリギリでいつも生きていたい」は自身の人生経験から生まれた言葉だったと思う。そんなシカオちゃんの独特なフレーズと羽生くんが出会ったとき、それはそのまま、フィギュアスケーター羽生くんの人生と共鳴したのに違いない。

ハイライトは「雨上がり濡れた堤防で はじめて君についたウソは いまも乾いちゃいない」の部分。ここで、羽生くんは用意していた紙コップの水をかぶる。一瞬ハッとして心をつかまれる動作だ。しかし、そのシーンは歌詞の世界を表すのには、とても自然で無理がなかった。昔からそうなのだ。彼の挑むことには明確な理由がある。

年齢を重ねて、大人の魅力が増してきた彼のオリジナリティのある無意識な色気の出し方は観客の心を鷲掴みにするのには十分すぎた。

全体的にロックで激しいナンバーをキレのある動きと滑らかなスケーティングで、しなやかに魅せていく羽生くん。待てよ、曲名は「Real Face」。途中までフードをかぶっての演技だった。あれ?これは前作「マスカレイド」から続いている? 仮面を脱ぎ捨てて、素顔を取り戻すってことか。一旦は、そう思った。だが、後のインタビューで羽生くんは、「リアルを取り戻す」ということを「4アクセルジャンプを取り戻す。飛べるようになるという思いを込めた」と語っている。いわば、このアイスショーのナンバーは、「新生・羽生結弦の決意表明」という重厚なテーマがこめられているのだ。

シカオちゃんのリアルに傷口をぬぐうような複雑な世界観を、羽生くんは熱い想いと抜群のリズム感やクリアーなジャンプで、表現しつくしていた。その高いエンターテイメント性は、私の心にしっかりと刻まれた。熱いものが体の中に走り抜けていくようなショーだった。

 

シカオちゃんは歌詞の中に綺麗なだけじゃない複雑な感情が垣間見えるアーティストさんだ。そういうシカオちゃんの世界観をフィギュアスケーターたちが、自分なりに解釈し、自分のカラーに染め上げていく。このアイスショーの中でしか見られない、スガシカオとスケーターたちの魂の化学反応に強く心を揺さぶられた。

幕張公演はひと段落して、アイスショーはまた別の街にパレードを運んでいく。

よその街でも、更に世界はブラッシュアップされて私たちの心に火をつけるだろう。

Life is a journey スケートで世界を回る Stars on Ice ジャパンツアー 2022について

 

 

フィギュアスケートもシーズンオフを迎え、4月からはアイスショーの話題がタイムライン上に上がってくるようになりました。その先陣を切って開催されたのは、Stars on Iceジャパンツアー2022。毎回、アイスショーを通して深いテーマが設けられているのですが、今回のテーマは「Journey(旅)」です。振付を行ったのは、ジェフリーバトル。果たして、スケートを通して、私たちはどんな世界を旅することになるのでしょうか。今回は東京公演の最終日の模様を、ところどころ、印象に残った部分でお届けしたいと思います。

 

まず冒頭、グループナンバー 「The weekend メドレー」。

昨今の洋楽ヒットシーンに欠かせない存在のThe weekendナンバーから、旅は始まります。色とりどりの衣装を着て現れたメンバーたち。ビートの効いたリズムの中で、徐々に熱が高まっていく予感を感じさせます。音楽の波を泳ぐように滑りぬけていくと、そこに見えるのは、ぶつかり合ったりして波が大きくなっていくフォーメーション。旅立ちと若々しさが随所に垣間見えました。

 

トップバッターを飾るスケーターは北京オリンピック代表の河辺愛菜選手で「ファイヤーダンス」。清潔感のある妖艶さが際立つプログラム。そこから繰り出す3ルッツ、鮮やかです。旅先で出会った、刺激的な踊り子のよう。基礎のしっかりしたテクニックで観客を沸かせました。

 

引退を表明した田中刑事選手が披露したのは、ジャズのナンバー。欧米のお洒落な街並みに誘われるような演技でした。

 

かなだいこと、村元哉中高橋大輔組は力いっぱい「ソーラン節」を演じました。その演技は、日本の漁港に船が迷い込んでいるかのようなハイライト。

 

続いて、見せ場を作ったのは、友野一希選手「Daft Pankメドレー」。非常にキレのあるロボットダンス。近未来の都市に現れたロボットのよう。音はめばっちり。トリプルアクセルもダイナミックに決めて、全身からビートを感じ取って滑りぬけます。高揚感が伝わってくる演技でした。

 

スピード感のあるジャンプが持ち味の樋口新葉選手。「Bird Set Free」は試合でも披露されたナンバー。自由に空を飛び回る鳥の軽やかさをスケートで表現してくれました。スピードと情感を自由に司る姿は圧巻。

 

個性的なプログラムを披露したのは、アメリカのヴィンセント・ジョウ選手。演目は「Lonely」。不死鳥がゆっくりと空を羽ばたいていくイメージ。彼のラインの美しさを随所に感じられました。以前よりも、ジャンプ前後の所作がナチュラルになった気がします。孤独から解き放たれて大空へ向かう、そんな旅の光景がそこにありました。

 

ピンクのコスチュームが華やかだったのは、紀平梨花選手。シーズン全休した彼女は、再び氷上に戻ってきてくれました。貴族の舞踏会のお姫様のような紀平選手。流れるスケーティングは上品で贅沢な気分にさせてくれました。

 

前半の最後はグループナンバー 「カイト」。全員が白い衣装で優雅なスケーティングを披露。まるで大海に白い帆を広げる船出のよう。希望や夢を運ぶように観客とコネクトしていました。

 

後半もグループナンバーからの幕開け。「What a wonderful world」。

ブルーの衣装で、バラードの繊細な音を拾って滑るスケーターたち。まるで、夜明けの航海を表しているようです。ここから新天地を目指すのでしょうか

 

韓国のチャ・ジュンファン選手が披露したのはKpopの曲? 一蹴り一蹴りがよく伸び、手をゆったり広げただけで人の心に何かを残します。ジュンファンの中の無垢なイメージが客席にひろがっていきました。

 

力強いボーカル曲を披露してくれたのは三原舞依選手で「Never enough」。何かを追い求めるようなそんなプログラム。ふわりと軽いジャンプを次々にきめていきます。滑る喜びを内側から放出している演技には心を打たれました。

 

グループナンバーで大活躍だった島田高志郎選手が選んだのは「チャップリンメドレー」。

スケーティングが綺麗で華がある高志郎君。雰囲気作りがとても上手な選手です。一瞬にして、モノクロムービーの世界に観客を誘います。演技力がすごいとおもいました。終わりのお辞儀まで、チャップリンになり切っていたのも印象的。

 

アメリカのマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組はエレガントなプログラムで沸かせました。「I hear a symphony」。 こちらもまた、ラブストーリーの映画を見ているみたい。難しいリフトのポジションチェンジがすばらしく。ドラマのハイライトのようにくっきりと心に刻まれました。

 

今季、オリンピックに、世界選手権に大活躍だったのは、鍵山優真選手で「君ほほ笑めば」

。4トウループ、ナイストライ。アイスショーでも4回転に挑んだのは、おそらく、鍵山くんだけでした。ジャズのお洒落なプログラムの中にも強気な部分をにじませます。スケーティングものびがあって、華やか。体幹とリズム感がずばぬけているので、あっという間にプログラムが終わってしまう気がしました。

 

惜しまれつつ引退を発表した宮原知子選手は「悲しみの聖母は旅立ちぬ」という重厚な演技で観客に別れのご挨拶。ゆったりと体を音楽に預けて、音と呼応するかのようなスケーティング。もう、試合で見ることが出来ないのは寂しいですね。

 

旅の終わりは、アメリカのネイサン・チェン選手。ロケットで宇宙を旅するロケットマンに行きつきます。今季の裏テーマは「宇宙」なのではないかと個人的に考えていました。前半は旅人の哀愁を、後半はエンターテイメント性を発揮するプログラムで、ショーを締めくくりました。

 

最後のグループナンバーは「エルトン・ジョンメドレー」。

攻撃的なロックのパートで、熱狂はヒートアップ。バラードパートで旅の終わりを感じさせます。リズムが再び盛り上がる時に、私たちは気づきます。新しい旅が、また始まるということに。

 

フィナーレまであっという間。コンセプトがはっきりとしていて、ちりばめられた演技の数々に理由があると感じさせてくれたアイスショーでした。

スケーターたちはスケートシーズン中に各国を旅します。あらゆる旅先で私たちはスケーターたちの演技から、かれらの人生に触れたような気持ちになりました。シーズンオフ、彼らは自らの翼を休めながら、また新しい旅へ準備を始めているのです。

夏が始まるころには、また、素晴らしいアイスショーが目白押し。更なるスケーターたちの旅を、客席から感じ取っていきたいと思います。

新緑の下で輝いて! 夏まであと少し 気持ちを上げる初夏ソング

 この間、私の住む街で、青葉祭りという祭りが開催されました。毎年5月、新緑のまぶしいこの季節、「すずめ踊り」という伝統的な舞踊を、老若男女、所狭しと扇を翼のように操りながら披露します。ずっと、夏が始まる直前に行われるこの祭りは、私の街の密かな風物詩でした。コロナの影響で、昨今中止が続き、満を持して3年ぶりの開催となったのです。まだまだ、県内の感染者の状況など、安心できない情報もありますが、それでも、私の街で、久しぶりに祭りが開かれたことは、どこか、心躍るようなことだったりするのです。

 そこで、今回は、夏まであと少しのこの時期、新葉の下でエネルギーを蓄えている私たちに、更にエネルギーを注入してくれるような初夏ソングを選んでいきたいとおもいます。

 

まず、この間Spotifyで見つけたこちらの曲からご紹介。

Kahi dreamsで「Sunkissed」。

youtu.be

 

MVはどこか、不穏で幻想的な夢の中を思わせます。歌詞は直球のラブソングですね。

ただ、純粋に好きな人の力になりたいと願う。太陽の光が鋭く感じられるような、どこか突き抜けた世界観を感じます。初夏から夏にかけて、太陽の上がってくる時間帯にこの曲をかけて、気持ちにスイッチを入れてみてはいかがでしょうか。

 

 そして、88risingレーベルから、異色のコラボが誕生。

宇多田ヒカルとWarren Hueで「T」。

youtu.be

 

曲の中に登場するのは、仕事も恋も、張り切り過ぎて、少し無理をしている彼と、そんな彼を優しく見守り、愛で包み込もうとしている彼女。大人の珠玉のラブソングですね。宇多田ヒカルと言えば、忘れもしない、「Automatic」でデビューを果たした時は、彼女自身も早熟で、尖ったものを感じていました。しかし、時間が経ち、彼女は、自分の息子と言ってもいいくらいの男性と、こんなに大人な世界を歌で表している。

なんだか、とても、感慨深くなる瞬間です。

この曲を聴きながら、大切な人を思って料理をしてみるのも、悪くない、そんな気持ちにさせられますね。

 

 さて、軽快なチューンで、ドライブにもってこいなのは、

Khalidで「Skyline」。

 

youtu.be

 

君が僕の腕をとって、車に乗り込めば、なんだかとてもワクワクして、宙に浮かんでいる気持ち。非合法なものの作用のように夢心地になれる。君となら。

サウンドもウキウキしたものが感じられる心地よい曲。MVも、新緑の季節の中、踊りだすKhalidとダンサーたちから、躍動感も感じられます。そのまま、車のCMに使われてもいいような、そんな軽快なナンバーと言えるでしょう。

 

 そして、浮かれた気分の中、家に戻り、曲をかけて、のんびりすごしたいときには、こちらはいかがでしょうか?

tofubeats で「Smile」。

youtu.be

 

街を歩いていると、様々な喧騒が自分の周りについて周ります。どこかで、巻き込まれないように、自分の心のスイッチをOffにしておく必要がありますが、そんな時にこの曲は、自分にちょうどいいバイブレーションを運んできてくれます。音楽をただ聞いて、情報を遮断して、自分の空想の世界にトリップできたら最高。サウンドも軽く、ウキウキさせてくれる感じが、この季節の新緑の雰囲気とマッチしているようで、この曲を選びました。

 

 最後になりましたが、皆さんは、この季節、「五月病」に悩んだりすることはありませんか? せっかく新しい季節を迎えているのに、なんとなく、気持ちが前に進まない。ふさぎ込んでしまう。そんな厄介な五月病に効きそうな曲を最後にご紹介しておきたいと思います。

 

Sam Smithで「Love Me More」。

 

youtu.be

 

かつては、自分も、自己嫌悪と葛藤していた時期があった。でも、そんなことはもう、過去の事。今を生きていく中で、もっと自分を愛せるようになってみない?優しいボーカルで呼びかけてくる言葉には、力があり、全ての生きとし生けるものへのテーマソングになっている気がするのです。そう、世の中は、悲しいニュースで溢れていて、私たちは、不安が心を占めていることが、多いような気がします。みんなを楽しませる人たちが、実はとても深い孤独を背負っていることもあるのだと気づかされたりします。

そんな時、自分を自分が愛せるように、そして、人を愛して、愛の言葉を発信していけるように。心の応援歌を聴くことで、まもなく梅雨入りを迎えるこの世界に、パワーを注入していきましょう。

 

一風変わった初夏ソング特集。皆様が心豊かに、夏へ向けて進んでいけますように。