Happy momentはBlueに溶けて… フィギュアスケートグランプリシリーズ ロシア大会 エキシビションについて

 

 

本来であれば、フィギュアスケート グランプリファイナルが行われるはずだった、今日。昨今の状況から、開催中止となり、その衝撃はスケオタだけではなく、日本中にショックを与えました。状況から考えたら、やむを得ないのは、頭では分かっていても、選手の気持ちを考えると、言葉になりませんでしたね。そして、こういった状況が、今後のシーズンにどう関わっていくのかを考えたとき、私たちは厳しい現実を前にブルーになってしまったと思います。

 

そんな状況の中、自分の心に浮かんできたのは、先月開催された、グランプリシリーズロシア大会のエキシビションの光景でした。そう、あの時、私たちは確かに幸せを受け止めていました。まだ、そのことを言葉にしていませんでしたね。個人的に印象に残ったエキシビションの数々、ほんの少しですが、思い出を辿っていきたいと思います。

 

まず、エキシビションの前半グループで印象に残ったのは、イタリアの選手、今回5位に入った、マテオ・リッツォ選手。インストゥルメンタルの静かな曲に乗せて、滑らかなスケーティングを披露。優雅な所作が、黒いTシャツとデニムのシンプルな装いに華を添えました。

 

そして、女子シングルで8位に入った松生理乃選手。曲名は「Say something」切ない別れのバラードナンバーです。若い彼女には意外に思えたナンバーでしたが、曲が始まると、ぴったり馴染んでいると感じました。音の拾い方や緩急の付け方が素直で、自然に曲のイメージが広がっていく。途中の3回転3回転も鮮やか! 音楽表現が豊かでジャンプもすごいってもう、これからが本当に楽しみになったのです。とても素敵な「Say something」でした。

 

後半、軽快なナンバーが続きます。

今回、4位に入ったアメリカのマライア・ベル選手。カントリー調のミュージックが明るく会場に響く中、小粋なリズムで滑る彼女は最高にキュート。今回の試合では、しっとりとしたナンバーの印象がつよかったのですが、終始、陽気な曲調のエキシビションは、彼女の明るい元気なイメージを強く印象付けてくれました。マライアの別の魅力が伝わってきて、楽しい気持ちになりました。

 

そして、今回、話題をさらったエキシビションと言えば、もちろん、この選手!

今大会3位に輝いた、我らが「浪速のエンターテイナー」、友野一希選手の登場に客席はヒートアップ。このプログラムは、スーツとネクタイに身を包み、ビジネスバックを手にした友野くんの「社会人1年目物語」です。丁度、今年の3月、同志社大学を卒業し、晴れて社会人スケーターとなった友野くん。同期で引退し、会社員となっていったお友達のことを思いながら、自らアイデアを出して作られたというこのプログラム。ビジネスマン一年目のストーリーが、リンクに展開していきました。新聞を読みながら「あ、やばい遅刻しちゃう」と大急ぎでバックを持って滑り始める友野くん。コミカルな動きの連続で、冒頭のトリプルアクセル、見事に決まった! 曲は「Bills」。ノリノリのボーカルが盛り上がる中で、動きも滑りも、生き生きしていて、エネルギーがリンクに満ち溢れていきました。2本目のトリプルアクセルも鮮やかに決めると、客席はさらに大歓声! 腰が痛いジェスチャー、大変そうな社会人生活、でも、勢いでのりきっていくぜ! そんな、メッセージがダイレクトに伝わってきて、なぜだか、私、涙が出てきました。何度も見ていたはずのエキシビションなのに、不思議ですね。この日のエキシビションの友野くんは本当にキラキラしていたのです。友野くん、あなたは「浪速のエンターテイナー」から「世界のエンターテイナー」になったね。友野くんの演技は、みんなを幸せにするよ。そんな風に思えたこの瞬間、私は間違いなく幸せでした。

その後も、素敵な演技は、どんどん、続いていきました。ミハイル・コリヤダ選手のイーグルは見事でうっとり。エリザベータ・トゥクタミシェワ選手の妖艶で誘うようなナンバーはロシアの土地をラスベガスに変えるほどの熱演でした。

今大会のエキシビション、終始、ブルーのライトが強かった! あまりにもブルーの色味が強いために、数名、ブルーの衣装を着たり、ブルーのボディペイントをしていたりした選手がライトに同化してしまうというハプニングがありましたが、それもまた、ご愛敬。

終始、幸せな時間でした。大会が終わった今でも、私は時々、このエキシビションを見返します。ともすれば、気持ちがブルーになってしまう昨今。でも、ほんの一時、ブルーのライトの下で、幸せな瞬間が溶けていたことを、折に触れて思い出したくなるのです。

忘れられないHappy momentをありがとう!また、いつか!