~Love history~素晴らしきスケーターの軌跡

音楽とフィギュアスケートをこよなく愛する私は、Spotifyでお気に入りのプレイリストを作成しています。 その名も「Love history」。今回は、そのプレイリストの中から、私がインスパイアされた曲と、スケーターについて、ご紹介したいと思います。

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今から、10年以上も前のこと、私は、ふとしたことで、ある魅力的なスケーターに心惹かれました。そのスケーターの名は、Drew Meekins。コロラドを拠点としている、元ペアスケーターで、現在は、コーチ兼振付をされている方です。

 当時、私がよく覗いていたコミュニティで、「個性的なスケーターがいる」と、度々、彼の名前が話題になっていたことがありました。「どんなスケーターなんだろう?」そう思った私は、さっそく彼のSNSをチェックすることに。当時、彼は、パートナー解消したばかりで、シングルを目指すか、もう一度、ペアスケーターとして、活動するのか、揺れていた時期だったようで、人生に悩んでいるようなツイートをよく目にしました。Twitterには、お友達のことや、お料理のこと、ファンとの交流についてがメインでしたが、当時、「Ice Network」という媒体で、文章を書いていた彼は、とても、言葉のセンスがあり、何気ないことも、すごく詩的につぶやくことが多く、「この人の言葉には、表現力があるなあ」と、次第に興味を覚えていきました。

 そんな時、彼は、お友達が振り付けてくれた短いプログラムをYoutubeにアップします。曲名は、イモージェン・ヒープの「Hide and Seek」。

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 闇にさらわれていってしまいそうな儚げなボーカル。難しいジャンプはないけれども、最初から、最後まで、Drewの周りに色のついた風が吹き抜けていくのを感じました。切ないけれど、温かい。ダークだけれども、とてもエレガント。男性にしては、高く上がるスパイラルも効果的に、彼の持ち味が存分に発揮されているプログラムです。私は、いまでも、時々、このプログラムが見たくなって、検索してしまうくらい、このプログラムが大好きです。おそらく、パートナーがいない中で、彼は一生懸命、練習していたのだと思います。「あきらめない祈り」のようなものが、最後まで感じられて、私は、ますます、彼を応援したくなりました。

 

そんな彼が、若いフィギュアスケーター達のキャンプの手伝いをすることになったのは、2014年のこと、広い体育館で、陸上のダンスレッスンで、彼が振り付けたグループ演技が、Youtubeにアップされました。それが、セリーヌ・ディオン featuring Ne-yoの「Incredible」。

 

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「Incredible」には信じられないほど素晴らしいという意味があります。このプログラムを踊ったスケーター達は、これから、未来に向かって羽ばたこうとする可能性のある子たち。歌詞の中に「We were Incredible. Simply Incredible」というフレーズがあり、一人一人の将来を思って、作られたことが伝わってくる優しい作品。きっと、これを踊った子たちは幸せだっただろうな、そして、そういう若い子たちの可能性に携わる仕事をDrewは選んだんだな。そう思った私は、とても、感慨深い気持ちになりました。このダンスプログラムは、彼らにとっても、Drewにとっても、スタート地点になったかもしれません。

 

更に、2014年、Drewはあるスケーターにバラードナンバーを振り付けています。それが、ジョン・レジェンドの「All of me」。

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このころになると、彼は、自分で滑るというよりも、誰かに振付を提供するアシスト側に回っていることが伺えました。ソウルフルに愛を歌い上げるこのバラードナンバー。一時期、どこでもかかっていましたよね。このスケーターさんは、このプログラムを本当に好きなんだな、というのが、最初から最後まで伝わってきました。ほとばしる情念が、とてもドラマティックで、ロマンティック。このプログラムはスケートで「愛」を表現していたと思います。

 

Drewは、この後、アメリカの若手スケーターヴィンセント・ジョウの振付を手掛け、その振付で、ヴィンセントは世界ジュニアを制しました。

 

そして、今回行われた世界選手権。女子シングル4位に入ったカレン・チェンのショートプログラムもDrewは振付けているのです。

 

彼は、現役時代は、世界ジュニア1位の後、パートナー解消等もあって、葛藤を抱えた時期もあったかもしれません。でも、こうやって、今、現役の選手のいいところを伸ばし、一気に飛躍するプログラムを手掛ける名アシストとして、あらたな伝説を作っている。そのことを私は、本当にうれしく思っています。

 

彼が、当時抱えていた、葛藤。スケート愛。人生への思い。そういったものを長年応援して、見守り続けた私は、プレイリストに彼が当時使っていた曲や、彼にとって、思い入れのあった曲などを次々に追加して、「Love history」を作成しました。今も、コロラドで、スケートに打ち込む彼のことをプレイリストを聞きながら、思い出してしまう私です。