フィギュアスケートとダンスからつながったDaft Punkの世界

2月の後半に、びっくりするような音楽界のニュースが飛び込んできました。なんと、有名な音楽デュオDaft Punkの解散。彼らの音楽は、フィギュアスケートやダンスでも、使用されることが多く、一スケート、ダンスファンの私にとっても、思い入れのあるアーティストの一人でした。

私がDaft Punkを認識したのは、今から数年前、たまたまネットサーフィンで、ダンス動画を検索していた時のことでした。当時、私は、世界的なダンスグループ、kinjazの主力メンバー、Anthony Lee氏のダンスがとても好きで、Anthony氏が振り付けたあるダンス動画にDaft PunkのDoin' it Rightが使われていたのです。

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 近未来的な背景と、無機質な音楽、光と影の調和。すべてがカチッとはまり、心が揺さぶられました。歌詞の中で「Shadows on you break. Out into the night」という部分があるのですが、男性二人で、片方の人が床に横たわり、立って踊る人に呼応するように踊る。「Shadow」を効果的に表現しているのが他のダンスには見られない高度な表現で、歌の世界を立体的に表した、いいパフォーマンスだな、と感嘆してしまいました。夜の刹那的な雰囲気をよく表せる音楽グループなのだな、と強い印象を持ったのです。

 それから、ほどなく、私はフィギュアスケートを通して、Daft Punkにまた、熱狂することになりました。Daft Punkで最高のパフォーマンスを披露してくれたのは、私の大のお気に入り、浪速のフィギュアスケーター友野一希選手です。

 2017―2018シーズンの世界選手権5位に輝いた後、翌年のシーズンエキシビションナンバーに選ばれたのは、Pentatonixが歌う「Daft Punkメドレー」。最初の「One more time」の始まりから、彼はがっちりとファンの心をつかんでしまいました。シルバーの衣装にサングラス、やはり、近未来的で無機質なDaft Punkの音楽の世界を感じさせながら、彼はリンクの上を、まるでパーティー会場に変え、鮮やかにスケートで滑り切ります。一つ一つのリズムを体でとらえ、指先まで神経を行き届かせた、ロボットダンスのテクニック。ボーカルの絶妙なタイミングできめるトリプルアクセル。スポットライトを浴びて滑る友野くんは、「Daft Punk」の光と影の世界を、おしゃれに、華やかに演じてくれました。このプログラムを披露してから、だいぶ時間は経っているけれど、友野くんといえば、Daft Punkのメドレーは外せないくらい、はまりプロになっていると思います。会場で見ていたら、きっと、踊りたくなってしまっただろうな、と思うくらいに、魅力的でした。

 更に、フィギュアスケートで、もう一組、忘れられないプログラムを滑ってくれたアイスダンスカップルがいます。マイア・シブタニアレックス・シブタニ組が滑った、Daft Punkメドレー。兄妹カップルということで、息がぴったりの二人。ダンスで、お互いの動きをシンクロさせながら、常に一定の距離を保ち、しっかりとそろったツイズル、音楽の盛り上がる場面で繰り広げられる、移動しながらのリフト。いやはや、かっこいいの一言。アイスダンスということで、女性を美しく魅せる動きや、リフトが、リズミカルな動きの中に絶妙に組み込まれていて、無機質というよりは、艶のある世界観に仕上げられていました。普段は、清楚で、優雅なイメージのシブタニ達が、こういう、かっこいいはじけたプログラムをすべると、また違った印象になると感じ、二人の表現力の幅の広さを再確認させられました。

 

Daft Punkは、フィギュアスケートやダンス等、肉体表現の分野で、インスピレーションを掻き立てられるアーティストだったのだと思います。かっこよく、ビートが聞いた音楽のほかにも、重厚で優雅なインストゥルメンタルを発表したりと、自由で独創的な発想で音楽を発表し続けていたアーティスト。彼らが解散しても、これから、きっと、新しく彼らの曲を使用するスケーターや、ダンサーは現れると思います。音楽とダンス、フィギュアスケートの融合で、Daft Punkの音楽はこれからも、多くの人の間で聞かれ、人々を熱狂させ続けるでしょう。私も、今回の解散を機に、様々な演技を振り返り、彼らの音楽に触れたいと思います。