咲き誇れ、君たちよ! 四大陸フィギュアに寄せて

 

 

昨日、四大陸フィギュア2022が無事に閉幕しました。オリンピック前に開かれる国際試合、そこに派遣されたのはオリンピック・世界フィギュアに派遣されることのなかった選手たち。そして、彼らは私たちに大きな感動をもたらしてくれました。今回は、素晴らしい演技を披露してくれた日本人選手たちにスポットライトをあてていきたいと思います。

 

まずは、女子シングル。

 

今回、欠場した宮原知子選手の代わりに出場することになった、横井ゆは菜選手。急遽の決定で、準備をするのも大変だったと思います。SP、ところどころ、ミスはありましたが、切れのある動きでマラゲーニャを演じきりました。FP、クイーンメドレーの時、彼女の中で何かが沸き上がるのが感じられました。クイーンは魂の叫びのような音楽、シャウトするボーカルの盛り上がりと共に、ジャンプも次々絶妙なタイミングで決まっていきます。動きは音楽に呼応すると共に、観客とコネクトしているゆは菜ちゃん。感情がほとばしり、一瞬、この瞬間が競技会であることを忘れさせてくれるくらい、その日のゆは菜ちゃんのスケーティングは「歌って」いました。終わった後の大号泣。つられて、こちらまで涙が頬を伝いました。今季のクイーンメドレーは彼女も観客も心を揺さぶられるものになっていたと思います。

 

若手日本女子のホープ、松生理乃選手。SP冒頭のジャンプ、惜しくも転倒してしまいましたが、ワンハンドビールマンポジションのスピンはものすごい速さで目を奪われました。躍動感と疾走感が素晴らしく、若手のさわやかさと初々しさがプログラムを華やかなものにしていたと思います。FPは月光。ブルーを基調としたコスチュームには、ゴールドのラインがほどこされて、プログラムのイメージぴったり。気持ちを切り替えられたのか、終始、ジャンプが軽やかで、スケーティングも滑らかでした。まるで、紺碧の夜空に光る月の光のようなイメージが膨らんでいき、うっとりとする演技でフィニッシュ。終わった後、感極まったように涙を拭った彼女。何かから、解放されたような安どの表情と共に、こみ上げてくるものがあったのかもしれません。

 

そして、「優勝」という2文字を目標に掲げ、今大会に臨んでいた、三原舞依選手。全日本選手権、あと1歩のところで、オリンピック、世界選手権大会の代表を逃した彼女。しばらく、落ち込んでいたとのこと。それでも、レベルアップのためには、練習しかないと、気持ちを奮い立たせて、この大会まで、プログラムをブラッシュアップさせてきたであろうことは、演技からも感じ取ることができました。

SP、「夢破れて」ただただ、舞依ちゃんのひたむきな思いがリンクを満たしていくのを感じました。ふんわりとしたジャンプ、そして柔らかなスケーティング。その中に漲る強い想い。

これまでの舞依ちゃんの道のりを感じるようでした。

FPで妖精を演じた舞依ちゃん。最終滑走で臨むプレッシャーは相当なものだったでしょう。ジャンプ一つ一つが決まっていくごとに舞依ちゃんの動きはいきいきとしていて、リンクの妖精を思わせつつも、エネルギーがほとばしる、そんなFPだったと思います。

キスアンドクライで、点数が出た瞬間。優勝が決まった瞬間に見せた彼女の幸せな涙。

これまでの努力が花開いた瞬間を感じました。

 

男子シングルでもドラマティックな展開が。

 

今季、躍進を見せた、三宅星南選手。SPでは、4回転をきめて、音楽表現も情感たっぷりに演じます。点数はもう少し欲しかったところですが、まだまだ、新人の星南くん。この大会で間違いなく、みんなに存在を知らしめたことと思います。かならず、次の大会ではもっと点数が上がってくると確信。FPは白鳥の湖。王子様と魔王を演じる難しいプログラム。優雅なところと、激しさと、音楽によって演じ分ける巧みさ。彼の様々な個性が発揮されていました。このFPで、自己ベストを大きく更新。総合で4位につけたことは、今後の自信につながっていくのでは、と思います。

 

若手の勢いそのままに大会入りをした三浦佳生選手。SPのビバルディの四季では、ほれぼれするほどに見事なジャンプ。そして、ぐいぐい加速する疾走感。若さと迫力を感じました。クラシックの綺麗なプログラムの中にも、力強さを織り交ぜてくる、という個性が独特に思えました。FP、ポエタ。実は、直前に肉離れを起こしていたというかおくん。演技の途中も少し、痛そうな顔をしていたので、心配しながら、見ていました。しかし、四回転をなんなく決め、最後まで演技をまとめきった、かおくんは気迫が満ちていて、貫録も十分。総合で3位に入ったのは、かおくんの強い気持ちが引き寄せた結果だったと思います。

 

友野一希選手も、今回、優勝を目標に、この大会に臨んでいました。彼もまた、しばらくは落ち込んでいた時期もあったとのこと。しかし、気持ちを切り替えて、練習に励んでいたことを語ってくれていました。

SP、「ニューシネマパラダイス」今まで以上に映画を見ているような気持ちになったのは、私だけではないかもしれません。ジャンプ、スピン、スケーティング、動き、全てが一本の糸でつながっているかのように途切れなさ。ジャンプもきれいにきまって、これまでよりも更にハイクオリティな演技内容でした。

FP「ラ・ラ・ランド」。ところどころ惜しい部分もありましたが、最後まで引きずることなく、ミュージカルの世界を表現していました。友野くんが、「決して、あきらめない」と、口にしてから、大分時間が経ちました。友野くんの決意が、一歩ずつ、友野くんを「世界」へと近づけてきているのを、今回の戦いでも感じることができました。

 

気がづけば、もう、新春。春の訪れを気配で感じ取れるようになってきています。今回、日本の選手たちが、喜びに溢れ、幸せな涙を流しているのを見ることが出来て、本当にうれしかったです。諦めなければ、幸せに近づける、そういう風に感じられる試合でした。それぞれが、それぞれの花をリンクで咲かせることのできた四大陸フィギュア。見事に咲き誇った選手の皆さんに、大きな拍手と声援を送り続けたいと思います。