雅ちゃんから受け取った花束
昨日、お気に入りの女子スケーターのインスタラジオを偶然、聞いていました。一人一人のコメントに丁寧に応えてくれる彼女から、スケートに対するまっすぐな思いを感じて、ラジオが終わった後、彼女の演技を見返したくなりました。今日は、彼女のことについて、ブログを書きたいと思います。
そのスケーターの名前は、大庭雅選手。愛知県出身で、中京大卒業後、社会人スケータ-として、頑張っている選手です。
彼女に注目し始めたのは、2010年頃だと思います。4歳から10歳まで器械体操を習っていた彼女は、演技に瞬発力とキレがあり、見ていて、爽快な印象を与えてくれました。氷上で、ただ、滑っているところでさえも、ぱっと光が差すような、華を持っている選手。私も、中学校時代、器械体操部に所属していたので、彼女に親近感を感じて、応援していました。
最初のうちは、雅ちゃんのジャンプとか、スピン等、テクニックに注目していた私。けれど、シーズンを重ねて彼女の演技を見ていくうちに、「彼女は、どこか、ストーリーを感じさせてくれる選手だな」と、思うようになりました。
演技の始まりから、彼女の表情はスイッチが入ったみたいによく変わります。そのプログラムの登場人物に入り込み、難しいジャンプを飛びながら、最後まで、演技の起承転結を演じ切る、言うだけなら簡単ですが、それは、とても難しいことで、誰もができることではありません。雅ちゃんには、最初のころから、イメージをスケートで伝えられる、天性のセンスが感じられました。
2014-2015シーズンの「レスフィーナ」は、元気な雅ちゃん、というよりも、しっとりとした大人の女性のイメージを私に残してくれました。2016-2017シーズン、安藤美姫さんの振付の「ミッション」では、光と影、そして、静かに祈りをささげているイメージが、私の心の中に入り込んで、演技が終わった後も、心地よい余韻が残り続けていたのを覚えています。
2018-2019シーズンの「エデンの東」、社会人となっていた雅ちゃん。サポートしてくれる企業を探しながら、練習も頑張って、大変なシーズン。社会人として、スケートを続けることは、とても大変なチャレンジだったと思います。様々な経験を乗り越え、全日本で披露してくれた演技には、空高く飛んでいく鳥のような解放感を感じ、心が熱くなりました。
雅ちゃんの演技は、年齢を重ねるごとに、成熟し、深みを増していっているように思えます。私が特に感動した演技は、2019-2020シーズン、中部選手権大会のタイタニックです。
雅ちゃんから、「最後まで決してあきらめない」そういう気迫を感じました。のびやかな体の動かし方、正しい軸の取り方で行うスパイラルやスピン、ジャンプが決まっていくごとに顔がほころび、演技に花が咲く。雅ちゃんのこれまでやってきたことが、全て、形になっていて、それは、大人の女性として頑張ってきた雅ちゃんにしかできない演技でした。雅ちゃんは、この中部選手権大会、ショートプログラム13位から、フリーで3位、総合で3位になりました。
2020年はコロナのシーズン。私たちは、不安の中にいました。予定されていた試合も、アイスショーもキャンセルが続き、正直、私自身、フィギュアスケートを見たいという気持ちが薄れかけていた時期があります。
そんな時、ビバスクエア京都が主催する屋外のクリスマスアイスショーに、雅ちゃんがゲスト出演するということが決まり、アイスショーで披露された演技を配信で見て、私の心の中に暖かいものが広がっていきました。
演目は、「Send In The Clowns」と「Luv Letter」。スケートの一歩一歩が丁寧に、よく伸びていて、表情もいきいきとして、風が吹いて寒そうな外のリンクで、彼女は気持ちがよさそうに、真心たっぷりに舞いました。スケーター一人一人、思うように練習ができなくて大変だっただろうに、彼女の演技からは深い祈りと、スケートを滑れる喜びに満ち溢れていました。「雅ちゃんの演技を見ていると、幸せな気持ちになる」私はそう感じて、なんだか、スケートで花束を受け取ったような気持ちになりました。
雅ちゃんのこれからのシーズン、これからも、たくさんのチャレンジと、課題が待ち受けていると思います。けれども、私は、なるべく長く、雅ちゃんの滑っている姿を見ていたい。
雅ちゃんは、いつも華やかなスケートで、私たちに、花束を渡してくれているから。私も、いつか、コロナが収束したら、とびっきりの花束を持って、会場で、雅ちゃんの演技に声援を送りたい、と思っています。