人生はチャレンジだ! グランプリシリーズトリノ大会観戦記2

 

グランプリシリーズイタリア大会2日目。昨日の早起きが祟ったのでしょうか、今朝はうまく起きられませんでした。本当はリアタイ(リアルタイムで応援すること)したかったのですが、年には勝てません。

 

必死でアーカイブをチェックする中で、心に留まったシーンを綴っていきたいと思います。

 

まずは女子フリースケーティング

 

宮原知子選手の「トスカ」。イタリアのお客様にも、彼女のエモーショナルな表現力が届いたのではないでしょうか。曲の序盤から盛り上がり、そしてエンディングまで、一人の女性の人生、物語が凝縮されて伝わってきました。喜びだったり、悲しみだったり、スケーティングやジャンプを駆使して「女性の一生」を表現できるのは、今の宮原知子選手だからなのかな、って思ったりしました。一人の女性スケーターとしての円熟味を、今季感じています。

 

三原舞選手。森の妖精がトリノに降り立ちました。けれども、不思議です。今までのようなはかなげな妖精のイメージではないのです。ジャンプを飛ぶたびに、指先一つ伸ばすたびに、舞依ちゃん扮する妖精に、魔法をかけられているような気がしたのです。なんだか、心が浄化されて、マイナスな気持ちが消えていくような。見終わった後に前向きな気持ちになれていたような。一試合、一試合、彼女の滑りに力強さが宿っていったと感じています。その分、彼女の「強さ」と「清らかさ」がより明確に見ている人に伝わっていったのだなあと思いました。得点も前の試合より伸ばすことができて、彼女にとって収穫の多い試合だったとおもいます。

 

ロシアの女子たち、シェルバコワちゃんもフロミフちゃんも、4回転失敗する気がしないくらいの完成度で、早くも私はオリンピックを目撃しているような気になりました。ロシアの国内戦ものすごいことになりそうですよね。誰が選ばれてもおかしくないほどの技術力。ロシア勢の層の厚さをまざまざと見せつけられた気がしました。

 

3位に入ったレオナ・ヘンドリックス、シャンパンゴールドの衣装が上品で大人の女性の体形にとても映えるすてきなものでした。女優さんみたいなレオナさんが、豪快なトリプルルッツのコンビネーションジャンプを決めるのは爽快さがありました。大人の女性の演技が表彰台に乗れることは、とても素晴らしいことだと思います。様々な努力を経て、最高の演技を届けてくれるベテラン選手には、ただただ、頭が下がります。

 

そして、話題は男子シングルス フリースケーティングへ。

6位の友野一希選手。今までで、一番柔らかさのあるラ・ラ・ランドだったように思えました。前半、難しいジャンプが次々に決まったことによって、コリオシークエンスや、ステップシークエンスの快活さがより華やかに伝わってきました。動と静を兼ね備えているこのプログラム、体に入るまでに苦労もあったと思いますが、友野くんの表現したい世界観が表現できた試合だったのではないかなって思います。エキシビションにも選ばれた友野くん。

トリノのお客様のハートを、ぜひ、ぜひ、盗んじゃってください!

 

鍵山優真選手。やってくれました。まさかの7位からごぼう抜きの優勝。なんということでしょう! 昨日、ちょっと元気がないかな~って思っていたのですよね。そんな中、昨日とはまるで別人のように躍動感に満ちたグラディエーターを見せてくれました。滑っている内に鍵山くんがいろいろ、表情を変え、強さだったり、儚さだったり、少年から、急に大人に変貌を遂げるような驚きに満ちたフリースケーティングだったとおもいます。このプログラム滑っているときの鍵山くん、凛々しくてカッコよくてドキッとしました。

 

2位のミハイルコリヤダ選手。ジャンプがちょっとステップアウト多かったかな…このプログラム好きなんですけどね。演目、シンドラーのリスト。冒頭に入る、ちょっとしたジェスチャー、書類に目を通して作る指の動きに、なんだか、深い意味があるような気がしてしまうんですよね。彼の悲しみの解釈が私は個人的にとても素敵だと思います。感動を呼ぶプログラムで表現される悲しみは難しい、と個人的には思ってしまいます。過剰にしすぎると、それは、心に刺さるものにならないことも多くて…彼の抑制された淡々としたアプローチと、ジャンプがうまくはまったら、きっともっと高得点になるでしょう。難易度の高いプログラムですが、期待してしまいます。

 

SPで1位だった中国のボーヤン・ジン選手がまさかの失速。残念ではありますが、彼はつい最近、病気で手術をしたばかり、まだ長いプログラムを体になじませるのに時間がかかっているのかもしれません。確かにミスが多かったのですが、このボレロのプログラム、ボーヤンの動きにすごく合うような気がしました。繊細だけど強さを感じさせる旋律がボーヤンの正しいフォームから繰り出されるジャンプとカチッと合ったら、きっとカッコいいプログラムになると思います。まだまだ、戦いは長い。ぜひ、より大事な試合までに仕上げていってほしいと思います。

 

成功したチャレンジも、うまくいかなかったチャレンジも、いろいろあった今大会。けれども、チャレンジを経て変化していく選手たちの姿が、この不安な時代、フィギュアスケートを見ている私たちの心を照らしてくれていたのは確かなことだと思います。人生はチャレンジだ! この大切な季節をもう少し見届けていきたいと思っています。