のこのことパチンパチン ~For special garden~

亡くなった父は、庭に木をたくさん植えたがった。ジャングルのような庭にするのが好きだと、生前よく口にしていた。

こんなに狭い庭に、もう木は植えられないと、よく母とけんかしていた。でも、父はうっそうと茂った庭を見るのが好きだったのだ。

病気をして、外を出歩けなくなっても、よく、窓から庭を見ていた。季節が過ぎるごとに変化する庭を見るのが、数少ない父の息抜きだったのかもしれない。

 

父が亡くなってから、庭を整える気力もわかなくて、母としばらく無気力な日々を過ごしていた。荒れていく庭を見ては、ため息をつきながら、日々が暮れていく。そんな時間が繰り返されていった。

ある夏の日、ゴミ出しをした後、庭を見たら、「このままではいけない」と、急に心の中から、声がしたような気がした。

「少しだけ、草を抜いてみるか」軽い気持ちで草を抜き始めたら、少しだけ気持ちが軽くなるのを感じた。

その日から、毎日少しずつ、目につくところの草を抜くのが日課になっていった。草を抜いたら、伸び放題の枝が気になって、枝切りばさみを手に、あらゆるところをパチンパチンと切り落とす。ところどころ、枯れた太い枝、そういったものも、目につき始め、のこぎりを片手に力いっぱい、枝を削り、ひもで束ねた。

そうしているうちに、庭は少しずつ整い始め、息を吹き返したように、緑が息づいてきたのが感じられた。

いつしか、母も元気を取り戻し、季節は庭いじりに最適な初夏になっている。

「庭の木を切ろう。そして野菜の苗を植えようよ。」

母のそんな言葉から、天気のいい日には庭に出て、のこぎりをのこのこ、枝切りばさみでパチンパチン。庭には、みずみずしい野菜の苗が増えていく。ピーマンにおくらにプチトマト。父が好きだった庭が、少しだけ再生されていく。

庭いじりをするたびに、父のことを思い出し、新たに生命が動き出した庭に喜びを見出しつつある今日この頃。

思えば、庭を整えることは、私たちと父をつなぐ営みで、私たちの乾いた心を潤すことでもあったのだ。

やわらかい日差しの中で、リハビリのような庭いじりをする私たち。そんな日々の中で、心に触れる歌をみつけた。

OneRepublicでSunshine。

youtu.be

 

前へ動き出そうとしてる庭と、日差しと音楽と。そんな風に特別な日々はさりげなく過ぎていこうとしている。