それぞれのクリスマスの断片 全日本フィギュア2022女子シングル

 

 

今年もやってきました。全日本フィギュア2022。聖夜に行われる負けられない戦い。忙しさと、疲れの中、あまり、好きなことに気持ちが向かない日々が続いていましたが、今年も、熱戦を繰り広げた選手たちによって気持ちが上向きに引っ張り上げられました。

印象に残った女子選手の演技をご紹介したいと思います。

 

大庭雅選手

社会人スケーターの大庭雅選手。SP Send In The Clownsで、切れ味鋭い3回転ジャンプや、シャープなスピンを披露。このシーズンの間に、プログラムが熟成され、スケーティングがブラッシュアップされているのが本当にすごいことだと思います。最後まで微笑みを絶やさず、滑る喜びに満ち溢れている雅ちゃんを毎年、全日本で応援できるのは、喜びです。

フリー Aesthetic、安藤美姫さんとの共作で振付にも挑戦。ひたむきに祈りをささげているような、繊細で成熟していて、名前の通り、「雅なスケーティング」で会場を魅了。見ていて温かい気持ちになる演技だなと感じました。

 

 

千葉萌音選手

あの羽生結弦選手と同じ東北高校の17歳。SPのシンドラーのリストを見て、驚愕。繊細な音を一つ一つ拾い、シームレスに情感たっぷりに演じていく姿は、とてもジュニア選手とは思えませんでした。ジャンプの前に無駄な動きが無く、スケーティングもスーッと伸びていく感じには、基本に忠実で素直さが感じられ、好印象を持ちました。

フリー、バタフライラバーズ、少し緊張したためか、冒頭のルッツジャンプ転倒。それでも、ミスを引きずることなく、高難度のジャンプをシームレスに決めていき、総合5位。

間違いなく彼女は、これから頭角を現していくな、と感じた今回の試合。伸びしろ十分に広がっていく世界を見詰めていきたくなりました。

 

三原舞依選手

SP戦場のメリークリスマス。自身の人生のようだと評するこの演目。見ていると、平和への祈りだったり、強い決意だったり、いろんな舞依ちゃんが見えてくるようだと思いました。ジャンプをすべて難なく決めて、ハイライトのシットスピンで高らかに天を掴むように手を上げる姿はこのプログラムに前向きな力強さを際立たせるようで、見入ってしまいました。フリー恋は魔術師。緊張もあったとは思いますが、前半うまくはまらなかったコンビネーションを後半にリカバリーと、冷静な姿勢が垣間見えました。いつも思うことですが、舞依ちゃんの滑りは真心に溢れていて、心をふっと溶かしてくれるような優しさと慈愛に満ち溢れています。常に人への感謝を忘れない姿勢が演技に生きているのだと思いました。

 

坂本花織選手

SPジャネットジャクソンメドレー。ダイナミックでパワフルなかおちゃんの演技に人さじ、媚びない色香を感じました。直線的な動きが少なくて、常に上半身、下半身、リズムの取り方が複雑な振付の中で、ジャンプも高さがあって見ごたえ抜群。見ていて楽しくなるようなプログラムです。

フリー Elastic Heart。高レベルな演技が、連続し、少しのミスも許されない最終滑走。しかしその中で、かおちゃんは落ち着いていて、スピードがあって高さのあるジャンプを次々にきめていきました。歩幅の少ないスケーティングでトップスピードに持っていく技術力で、演技全体が途切れない印象でした。去年のかおちゃんからも強い女性という姿を感じてはいましたが、今年は柔軟な筋肉の動かし方や、音の複雑な演じ分けも加わって、更に演技に成熟度が増したと思います。終わってみれば、総合一位、完全優勝を果たしました。

 

時はクリスマス。ケーキを焼いたり、仕事に勤しんだり、思い思いの時間の中で、私たちは、試合に臨む選手たちの姿を目に焼き付け続けました。

違う立場で、違う場所で、でも同じ試合を応援出来ている一体感は私に特別な喜びを運んできてくれたと、思います。

 

一瞬だけれども尊い、クリスマスの断片を、今年も記憶に刻んで、残りの年末の日々をエネルギーチャージして過ごしていきたいと思います。

 

選手の皆さん、応援の皆さん、お疲れ様でした。そして、メリークリスマス!