美しい夢よ、覚めないで… フィギュアスケートグランプリシリーズ スケートアメリカ男子シングルフリー

戦いの始まりから一夜明けた今日。早くも王者の決まった試合がありました。

フィギュアスケートグランプリシリーズ、スケートアメリカ男子シングル。フリースケーティングが行われ、熱戦が繰り広げられたのです。

果たして、勝利の女神はどのスケーターにほほ笑んだのでしょうか。早速、印象に残った選手の模様を綴っていきたいとおもいます。

 

島田高志郎選手

まさかの最下位スタートから始まったフリーのプログラムは、チャップリンメドレー。

序盤は硬さも見えたのですが、音楽が進んでいくにつれ、自然にチャップリンの世界を氷に描いていきました。動きの一つ一つに無駄がなく、演技全体がつながっていて、チャップリンの夢のある世界や悲哀が、なんとなくムードで伝わってくるような。プログラム全体にジャンプがうまく溶け込んで、終わるころには、ミスを忘れていました。FP高得点をたたき出し、順位も大幅にUPしました。

 

三宅星南選手

前から思っていたのですが、星南選手は白シャツが似合うなあと感じます。どことなく、ノーブルな雰囲気を漂わせている彼は、タイタニックのジャックに、自然になり切っているように見えました。若干、ミスが目立ってはいましたが、シーズンの前半。ここから、ジャンプのタイミングが合ってくれば、とてもドラマティックなプログラムになるのではないかと、思います。

 

イリア・マリニン選手。

冒頭、4回転アクセルを難なく着氷。いったい、何が起こったのか、回る軸が細く、3回転に見えてしまうほど、スピーディーに高難度ジャンプを決めると、そこからは、完璧にマリニンくんの世界。それほど助走をつけずに、4回転のジャンプや、3回転半のシークエンスや。もう、どういうこと? 技のデパート状態に口あんぐりです。しかし、マリニンくん、ジャンプだけではなく、スケーティングでも、マリニンくんの雰囲気を客席に伝えていたと思います。大胆不敵で、野心家で、ストイックな若者が成長し、どのように羽化していくのか、もう、今から楽しみでなりません。終わってみれば、総合点300点に迫る勢い。逆転優勝の演技となりました。

 

チャ・ジュンファン選手

007のナンバーで、スリリングな色を全面的に出したプログラム。いくつか、ミスはありましたが、全体の流れがシームレス。技と技のつなぎにも微妙に凝ったものが多く、全体的な難易度の高さを随所にちりばめて、それが音楽と融合していました。総合的に魅せる力は、もしかしたら、出場選手の中で一番だったかなと、いう気がしています。

終わってみれば、3位に食い込む熱演を見せてくれました。

 

三浦佳生選手

冒頭の4回転ループ、惜しくも転倒してしまいましたが、あともう少しのところまで、来ていると感じました。全体的にスピードがあり、必死でひたむきな感じが、何かを追い求めているようで、そのまま、演じているビーストに重なるような気がしました。

佳生選手の視線の先に、美女が見えるようで、最初から最後まで、見所満載。

一つ順位を下げましたが、大健闘の銀メダル。次の試合の弾みになるような演技に思えました。

 

シーズン序盤ですが、この熱気。熱戦はやはり、フィギュアシーズンに突入したことを教えてくれますね。今回、思ったことなのですが、アメリカのお客さん。とても優しかったです。どの選手の素晴らしい所も、きちんと見て、大歓声でたたえてくれて、こういうムードの中で試合ができるって幸せだな、と思いました。

まだまだ、戦いは続きますが、夢を見ているような余韻に今しばらく浸りたいと思います。