諦めないって大切 スケートカナダ観戦記2日目

 

 

今回もまた、先の読めない展開が待っておりました。フィギュアスケートグランプリシリーズカナダ大会。なかなか、全員を追うのは難しく、私の心に触れた演技をピックアップして綴っていきたいと思います。

 

まず、女子シングルフリースケーティング。最初に現れたのは河辺愛菜選手。ショートプログラム12位からの滑り出しでしたが、ほぼノーミスの演技で、フリープログラムを終えることが出来ました。とくに冒頭のトリプルアクセルは美!勢いに乗って、高さも幅も素晴らしいジャンプでした。彼女の演技は、どこか、シャープでエネルギッシュ。前半も後半も、難しいジャンプが待ち構えていましたが、彼女は果敢に挑んで、成功させていました。国際試合のデビュー戦、ショートプログラムの失敗の後、緊張と重圧はとても大きなものだったでしょう。しかし、大事な試合で自分のベストの演技が披露できたことは、自信につながったのではないでしょうか。フリーを終えて、総合9位に浮上。のびのび笑顔で滑る河辺選手が見られて、幸せでした。

 

総合5位に入った樋口新葉選手も、果敢にトリプルアクセルにチャレンジ。こちらも美!彼女の回転の速いジャンプとスピンは見ていて、溌溂とした、気持ちよさを感じさせてくれます。SPの柔らかい表現と違って、壮大な自然を描いたフリープログラムはステップもダイナミックで、SPとFPのイメージの違いを明確に魅せてくれました。時にかっこよく、時に穏やかに、時に激しく、新葉選手はいろいろな音を表現できるスケーターです。スピードの中で、そのように演じ分けができるなんて、すごいなあといつも思います。

 

そして、メダルまで、あと1歩だった三原舞依選手。全て水が流れるようなスムーズさを感じました。ジャンプを失敗する気がしないほど、落ち着いて見えていたし、表情に妖精が舞い降りているかのような神々しさを感じました。演技後半に難しいジャンプがたくさんあったのに、余分な力が入らないエアリーなジャンプはまさしく、あちこちの湖に花を咲かせる妖精そのもの。終わってみれば高得点。舞依ちゃん。あなたは戻ってきた。シーズンが進むにつれ、舞依ちゃんのいいところが随所で見られて、活躍のステージが上がっていくことを私は期待せずにはいられません。

 

3位のコス美こと、コストルナヤ選手。少し、元気がなかったかな?でも、私は、このフリープログラムの「Lovely」という歌が大好きなのです。美しいけど、どこかかなしい、ビリーアイリッシュとカリードの切ないハーモニーが最高にエモい曲。エモーショナルな曲にチャレンジするのは、本当にスケートの技術力が問われることかと思います。コス美のようにジャンプ・ステップ・スピンすべて「美」と表現されるような選手こそ、ふさわしい選曲のようにおもいます。なので、シーズンが進んだ時に、この「Lovely」の完成形が必ずやみられるものと、今から、期待しております。

 

2位に食い込んだリーザ様こと、エリザベータ・トゥクタミシェワ。おお!なんとすごい! のっけからトリプルアクセルのコンビネーションジャンプ、さらに単独のトリプルアクセルと、私たちの度肝を抜いてしまいました。「シェヘラザード」の妖しい調べに乗って、彼女の繰り出す技術は年々、更に進化していく一方です。彼女の妖艶さは、圧倒的な技術力と、これまで積み重ねてきた貫録が引き出しているのではないかと感じます。正しい技術力で息の長い活躍を見せてくれる選手の一人として、とても尊敬しています。

 

1位のカミラ・ワリエワ。もう言葉はいりません。これぞ、フィギュアスケートボレロという曲は、フィギュアスケートの歴史において、非常に意味のある楽曲です。まだ若い彼女がその曲を選んでも、誰も異を唱える人は出てこないでしょう。それほどに、全ての要素の完成度が高いのです。これは今シーズン中にフリースケーティングだけで、200点越えちゃうんじゃないの?と、今からどこまで彼女のレベルアップがあるのかを期待せずにはいられません。

 

男子シングルス。山本草太選手は、残念ながら、4回転ジャンプで失敗をしてしまいました。しかし、そのほかのエレメンツは丁寧に行っていて、曲の切なさとその丁寧な所作がとてもリンクしていたと思います。大事なジャンプで失敗してしまうと、気持ち的に諦めてしまいそうになる気がします。でも、山本選手は最後まであきらめないぞ、というガッツが溢れていて、見ている私たちにプログラムを途切れさせなかったような気がしました。終わった後に勇気を貰えたFPでした。

 

3位に入ったエフゲニー・セメネンコ選手。ややジャンプはシェイキーに思えるものも多々ありましたが、大きく崩れることなく、重厚なイメージの演技を演じ切りました。やっぱりここでも、諦めない気持ちが演技をつなげたように思います。彼もまだ若く、グランプリシリーズのような国際試合で、メダルをかけて戦うのは非常にプレッシャーがあったことでしょう。しかし、一つでも上の順位へ。一つでも多くのジャンプを飛ぼう。そういう熱意が結果を手繰り寄せて行ったのでしょうか。見ている私たちも、若いのに粘り強い演技を見せてくれたセメネンコ選手が印象に残りました。

 

2位のジェイソン・ブラウン。4回転サルコウの失敗は残念。しかし、演目の「シンドラーのリスト」とてもシリアスなこのテーマを様々な技と技の間のつなぎを駆使して、演じ切るのは大変そうに思います。ひとつ崩れてしまったら、あらゆるところに綻びが生まれていってしまう危険さえあるように感じました。非常に見た目以上に体力を必要とするプログラム。後半戦までに、どこまで仕上げてくるか鍵になるようなきがします。

 

そして、大本命登場。ネイサン・チェン。スケートアメリカの演技は微塵も感じさせぬほど、ジャンプを難なく降りて、終わってみれば、一人別次元。さすが、世界王者。短期間で仕上げてきましたね。ただひとつ、フリーのステップシークエンスの所作ですが、モーツァルトのクラシックな旋律にこのシークエンスの動作は合っていたのでしょうか?敢えて、モダンな動きを取り入れているのだとは思いますが、少し違和感を覚えました。演技構成点、プログラムコンポーネンツに関しては、ある程度高く出るのは分かるのですが、ジェイソンの繋ぎもりもりのコンポーネンツよりも、高く評価されるというのは少し私にはわかりませんでした。ネイサンのショートプログラムが良かっただけに、少し、辛口評価になってしまいました。ファンの方々、すみません。

 

ともかく、グランプリシリーズの2戦目が終わり、次はトリノ大会ですね。そこでも、さまざまなドラマが待っていることでしょう。推し達の新たな活躍を期待して、楽しみにまっていることにします!