彼女たちが見せてくれた幸せ 北京オリンピックフィギュアスケート 女子シングルSP観戦記

 

 

疑惑が会場を覆うようなムードの中で、北京オリンピックフィギュアスケート 女子シングルが開幕しました。件のドーピングの件は、皆さん、もうご存じのことと思いますので、割愛いたします。私個人の見解といたしましては、やはり、受け入れがたいものがありますね。本人にも、周りの大人たちにも、考えて行動する意識があれば、結果は違っていたのではないか、と思います。頑張ってきた選手たちの、その頑張りを、台無しにするようなことは、あってはならない。私個人はそう感じます。本来ならば、上位の演技を追って、公平な目線で述べなければいけないのでしょうが、今回は、簡単にそれができそうにありません。そこで、今回のSPは私独自のランキングで上位に入った選手たちの紹介をさせていただきたいと、思います。

 

まず、今回、フィギュアスケート女子シングル、切り込み隊長として、先陣を切ったのは、期待の新人、河辺愛菜選手。演目はヴィヴァルディの四季。冒頭のトリプルアクセルこそ転んでしまいましたが、その次の大技、3回転3回転のコンビネーションジャンプ、高さも降りた後の流れも、申し分のないクオリティ。白いコスチュームが冬の清涼感を運んできて、スピードの中で躍動する彼女のすばらしさを引き立てていましたね。終わって全体の15位につけました。まだまだ、これから花開く期待を感じさせてくれる演技です。フリーでも、見事なジャンプが見られるのを楽しみにしています。

 

大人の表現力と確かな技術力を魅せてくれた選手がいます。ジョージアのアナスタシア・グバノワ選手。元々はロシア出身の19歳のスケーター。黒と赤の大人っぽい配色の衣装に身を包み、曲調も大人っぽいリズムで滑りぬけます。つややかな表現を心掛けながら、その中でもスピードに乗った、確かな技術力。プログラムがすでに完成されている雰囲気を感じました。総合10位。彼女もまた、未来に期待大の選手です。

 

総合9位に入った韓国のキム・イェリム選手。SPは「愛の夢」。会場に柔らかな旋律がこぼれます。3回転ルッツ3回転トゥル―プのコンビネーションが鮮やかにきまった後は、終始、優雅なムーブメントでプログラムの世界に統一感が生まれていました。ポーズの静止から、ポーズのほどき方、一連の所作にオーソドックスな美しさを感じます。

 

そして、美しいトリプルアクセルを決めたのは、我らが樋口新葉選手。緊張していたのかもしれませんが、そのようなことを感じさせないほど、キレがあって降りた後の流れもよいジャンプ。私には、どこに踏切違反があったのか、分からないほどでした。そして、思いの丈があふれ出してくるほど、表情豊かな音楽表現。オリンピックのピリピリしたムードを溶かしてくれるような、気持ちのいい「Your song」を披露してくれました。総合5位。フリーでの巻き返しを期待したいと思います。

 

最終滑走、緊張が走る場面で、成熟した女性の素晴らしさを披露してくれたのは、巧みな技術と表現力で存在感を放つ「リショー・プログラムの伝道師」坂本花織選手。シャンパンゴールドの素敵な新衣装に身を包み、重厚な「グラディエーター」の世界を表現します。冒頭の2アクセル、高さと幅と、スピードが満点の出来。エッジエラーを取られがちな3ルッツも、今回は充分な踏切。プレッシャーのかかる舞台で、ジャンプノーミス。とにかく、彼女のスケーティングを見ていると、水が流れているようで、素直で優しく、気持ちのいい印象が心を満たしてくれました。フィニッシュのポーズの後、リンクにはけていくときに涙が頬を伝った花織ちゃん。最終滑走の大変なシチュエーションの中、耐えて、最高の演技を披露できたことは、喜びだったと思います。総合3位。私の中では一位の演技でした。さすが、私たちの舞姫

 

と、ここまで、独断と偏見で素晴らしいと感じた女子シングルSPの演技を振り返っていきました。特に日本の3選手の演技を見ていると、「スポーツっていいな」って感じました。私にスポーツが好きな理由を思い出させてくれる演技をしてくれた選手たちに、ありがとうって言いたいです。FPは明日、行われる予定です。どうか、スケートの神様、正しい努力をしてきた選手たちに希望の光をあてて下さい。