ドラマティックにいこうじゃないか! 北京オリンピック フィギュアスケート団体予選・決勝観戦記

オリンピック開幕してすぐに、メダルのニュースが流れて、私たちはスポーツの祭典只中にいますよね。フィギュアスケートも、団体戦後半に向けて、興奮と熱狂がヒートアップしてきました。本日行われたのは女子シングルショートプログラムと男子シングルフリーの模様。新たなドラマが生まれた瞬間を思い出していこうと思います。

 

女子シングルSP、日本勢から出場したのは、平昌オリンピックから4年後、悲願のオリンピック出場を決めた樋口新葉選手。ここまでの意気込みはおそらく並々ならぬものがあったことと思います。演目は「Your song」。演技が始まる前、新葉ちゃんがとても緊張しているように見えて、こちらも心に緊張が走りました。しかし、曲がかかる直前、新葉ちゃんの硬い表情が柔らかくほころんで、優しい笑みをたたえた表情になった時に、「これは、いける!」と、安心することができました。

トリプルアクセルが持ち味の新葉ちゃん。冒頭のアクセルジャンプは、余裕のあるダブルアクセル。降りた後も流れが美しく、文句なしの出来栄え。団体戦、メダルのプレッシャーのかかる中での勝負。安全に、確実に、ジャンプを決めることは、とてもいい選択だったのではないでしょうか。スピードに乗った3回転3回転のコンビネーションを決めて、更に流れは加速します。ステップの足元は、昔の規定演技、コンパルソリーのパターンステップを思わせるようで、美しい弧を描いていました。上半身の動きも、ステップに連動して、穏やかな優しいメロディーと呼応するかのように、柔らかく優雅に動いているのが印象的。表情も、曲の盛り上がりと共に、ほとばしる情熱を感じてうっとり。「Your song」でここまで、曲との一体感を全身から感じられたのは、私にとって、新葉ちゃんが初めてに思えました。

演技が終わって高得点が出たときの高得点。新葉ちゃんは、喜びを静かに噛みしめているように見えて、個人戦にむけて、いい流れができたと思います。

 

SP首位に立ったのは、その卓越した技術力と表現力で、他の選手に絶望をもたらすことから、「絶望」というニックネームで知られる、ロシアの新星、カミラ・ワリエワ。

とにかく、全ての技術がとてつもなくえぐい! 演目は蝶々を追いかける少女の物語。

少女は蝶々を追いかけながら、夢の世界へ私たちを誘ってくれるのです。何かを追いかけるいたいけな少女を演じるワリエワさん。突如、高難度のジャンプをふわっと飛んだ瞬間、彼女自体が、空を舞う蝶々に姿を変えたように見えました。そして、最後は、飛んで行ってしまった蝶々を見送る少女に戻り、フィニッシュ。ロシア陣営の振付は、割と独特なストーリー仕立てになっていることが多く、随所にちりばめられるマイムの意味が、理解できないことも多々あるのですが(私調べ)、この演目は非常にストーリーが伝わってくる、いい演目だと感じました。時にあどけなく、時に憂いがあって、優雅であり力強い、今の彼女にぴったりのプログラム。終わった瞬間、点数を見るまでもなく、彼女が一位になることを疑いませんでした。

 

そして団体戦決勝は男子シングルフリーからスタート。

 

日本からは注目の若手、鍵山優真選手がエントリー。ここで、鍵山くんはものすごいドラマを見せて、我々をくぎ付けにしてくれました。

冒頭から、流れのある美しい4回転をきめた鍵山くん。流れに乗って、ずっと挑戦し続けた、新たな大技4回転ループをオリンピックで飛んで見せてくれました。

降りた後、少しターンが入ってしまいましたが、回転は足りていて、ちゃんと片足での着氷の形が出来ていたように思えます。シニア一年目で、四回転の種類を増やすことを明言し、短期間のうちにオリンピックで、あともう少しのところまで仕上げてきた、その努力と精神力に度肝を抜かれます。他のジャンプは全てノーミス。新葉ちゃんもそうだったのですが、鍵山くんもすごいスピードでリンクを端から端まで滑りぬけます。スピードスケートとはまた違った種類のスピードのある滑走。疾走感とピュアな情感が、新鮮な感動を私たちに運んできてくれました。シニア二年目、ここまで、オリンピックで大技を入れて、演技をまとめ上げられるなんて、なんという度胸、なんという精神力。

かつて、鍵山正和さんの演技をオリンピックで見たときのことを思い出しました。膝と足首が柔らかく、大和魂揺さぶられる演技をオリンピックで披露してくれた正和さん。息子である優真くんは、正和さんのマインドを受け継ぎながら、世界の大舞台で堂々と、高レベルの演技を披露しました。時を経て実現した父子によるバトンの受け渡しは、感慨深いものがあります。いろいろな意味で、本当にドラマティックな4分間でした。

 

最終滑走はアメリカの情熱系フィギュアスケーター、ヴィンセント・ジョウ。前半は緊張していたのか、硬さが見え、4回転ジャンプの回転が抜けてしまったり、回転不足になってしまったり、小さなミスがありました。しかし、後半に行くにしたがって、落ち着きを取り戻したのか、動きにも流れができ、ジャンプもソリッドにきまる瞬間が随所に見られました。前半のミスを忘れさせるほどに、後半で巻き返しが出来たのは、成長の証。

個人戦では、もっと、落ち着いて演技に集中できるはず。今から更なる展開が楽しみになりました。

 

まだまだ、始まったばかりのオリンピック。すでにここまで、白熱した展開が待っているとは! これからの応援にますます力が入りますね。

今後も、一人でも多くの選手が、練習してきたことの成果を思いっきり発揮できるように、手に汗握る応援を続けていきたいと思います。

奇跡を見届けよう! 北京オリンピック フィギュアスケート団体予選観戦記

 

 

いよいよ、オリンピックが始まりました! 本日行われたフィギュアスケート団体予選。ブルーを基調としたオリンピックリンクで、スケーターたちの華麗な戦いが幕をあけたのです。まだ、団体戦、ということで、エンジンをかけたばっかりの選手たち。けれども、みなぎる緊張感と高揚感の中で行われた演技は、特別エモーショナルな風景に見えました。

全てをご紹介は出来ませんが、ここまで頑張ってきた日本人選手たちと、トップ選手たちの珠玉の舞を、ここでシェアさせて頂きたいと思います。

 

まず始まったのは、男子シングル・ショートプログラム

日本代表は、宇野昌磨選手。北京入国前にコーチのステファン・ランビエール氏がコロナ陽性に。その後の検査で陰性になりましたが、手続き上、出国まで足止めの状態で、合流まで、時間がかかります。演技の前の突然のアクシデント。動揺はしたと思いますが、演技は非常に落ち着いていました。

ひとつひとつのジャンプが軽やかにきまると、肩の力が入っていないしなやかさと、ためのある動きで会場を魅了します。今回、宇野くんのスピンを見たとき、初めて、向こう側に、スピンをしているランビエールが見えてくる気がしました。スピンに定評のあった、ランビエールさん。そのマインドは、教え子の彼にしっかりと引き継がれているように思えました。

 

トップに立ったのは、アメリカのエース、ネイサン・チェン選手。全く失敗する様子がないくらい、全てのエレメンツが安定していました。演目のラ・ボエーム。哀愁を感じる曲調の起承転結を、いつも以上に詩的に、情熱的に演じているネイサンを感じました。それまでの彼は、どちらかというと、スポーティーで、ドリルのような高難度のジャンプに目がいきがちだったけれど、大きな変化がオリンピックでみられました。年月を重ねて大人の彼のテイストがオリンピックという舞台でフルに発揮されていました。圧倒的な高得点で首位。しかし、戦いは始まったばかり。ここから、さらにギアを上げていくであろう彼を感じます。このとっておきのフルコース料理に、どんな味付けをこれから加えていくのか、期待が高まってきました。

 

続けて行われたアイスダンスのリズムダンス。

日本代表は、小松原美里/小松原尊組。夫婦カップルの登場です。

リズミカルなディスコナンバー、冒頭から、貫録と躍動感に満ちていました。ツイズルやステップは流れがあり、リフトもダイナミックで、女性が美しく見える素敵なリフト。念願の大舞台で、クールだったり、コケティッシュだったり、魅力を存分に伝えることが出来たのではないかと思います。みんなが注目するオリンピックで、溌溂としたチームココの演技が見られるのは、本当に嬉しい瞬間でした。

 

アイスダンスでトップに立ったのは、アメリカのカップル、マディソン・ハベル/ザカリー・ドノヒュー組。冒頭から終わりにかけて、どんどん加速していくスピード、どの場面においても、斜めに傾いたエッジ使い。こんな構成でよく転ばずにエレメンツを行えるな~と圧倒されました。近代的なリズムの楽曲とモダンで硬質的なムーブメント。ふしぎと、カナダのシェイリーン・ボーン、ヴィクター・クラーツ組の演技を思い出しましたね。低い重心でも、体勢が崩れない足腰の強さがあるからできるスケーティングだったと思います。

 

目が離せない戦いはまだまだ続きます。ペア・ショートプログラム

 

日本代表、りくりゅうこと三浦 璃来/木原 龍一組。

冒頭、笑顔でスタートラインに着いた二人。「Hallelujah」の曲が始まると表情は一変。憂いのある表情で、私たちを惹きこみます。

最初のスプリットツイストリフト、三浦選手が高く宙に上がって吸い込まれるように木原選手が受け止めると、もうそこから、最後まで安心してみることが出来ました。難しい要素のリフトやスローイングジャンプも、流れのある安定した完成度を見せてくれて、二人の絆の強さを思わせてくれました。この会心のSPで全体の4位につけたのは大健闘。日本のペアが世界で堂々と戦えることを、オリンピックで更に証明してくれました。

 

そして、ペアのトップはもう、点数を見る前に子の方々であろうと思わせてくれた二人。

中国の隋文静/韓聡組です。

もう、全てのエレメンツが段違いレベル。力強いリフトに、流れのあるスローイングジャンプ。非常にパワフルなのに優雅。なんだか、二人の演技を見ていると、女性のスイ選手が、鳥になって大空を飛んでいるみたいに見えてくるように感じました。余分な力が入っていないように見えるのに、やっていることは超力業。とっぷのペア選手のすごみにただただ、驚き、うっとりと見入ってしまいました。

 

団体予選、残りは女子シングルを残すのみ。団体戦が始まる前に、コロナウイルスの陽性反応で、ペアの選手が棄権になってしまったり、カナダのキーガン選手が、入国できなかったり、波乱が続き、不安にもなりましたが、戦いはすでに始まっています。様々な緊張の中で、選手が力を発揮しているこの瞬間、それは奇跡の連続なのかもしれません。今後も続いていく試合の中で、ひとつひとつの奇跡を大事に見届けていきたいと思います。

オリンピック目前! 気持ちを奮い立たせる応援ソングを追いかけて…

2月に入りました。いよいよ、北京オリンピックが始まろうとしています。ここに来るまで、いろんな不安がみんなの心にあったと思います。深刻なニュースがあまりにも多すぎて、果たして、オリンピックが開催されるのだろうか?という思いが、誰の心にもよぎったのではないでしょうか? いまだ、予断を許さない状況ではありますが、選手が続々と入国を果たし、準備を進めているニュースを見ると、ここまで、頑張ってきた一人ひとりへの特別な思いが溢れだしてくるのを感じます。

 今回は、例年になくハードな戦いが待っているオリンピック。地道に頑張る選手へ、祈りと、応援を込めて、スポーツをするときや、やる気を出したいときに聴く、応援ソングたちを綴っていきたいと思います。

 

まず、目的の場所へと向かった選手たちへ、静かな祈りを傾けたいと思い、この曲を選曲。

Pentatonixで「Hallelujah」

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期待と不安、希望と絶望が入り混じる舞台。誰もが栄光を手にするわけではない世界。そんな、素晴らしく、悲しい挑戦を続ける選手たちに、一筋の光を照らすことができたなら。

重厚だけれども、どこか悲しい旋律は、まるで凍えた心を包み込むベールのようで、祈りをささげる曲としてぴったりくると思いました。

フィギュアスケート 日本のペアスケーター 三浦・木原組が歌い手違いでこの曲をSPで使用していることもあり、要注目です。

 

そして、戦場へ赴く選手たち、一瞬のチャンスをものにできるのか、という正念場。浮かんできたのはこの曲。Michael Sembelloで、「Maniac」。

 

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かなり懐かしい80年代のナンバー、明日を夢見るダンサーのサクセスストーリー「フラッシュダンス」の挿入歌としてもおなじみですよね。悲喜こもごものダンスの世界。一瞬のチャンスをものにできれば、世界を手にすることが出来ます。そのギリギリの瀬戸際の心情に、この、ビートが聞いた曲が寄り添ってくれるような気がしてきます。この曲は、スペインの名スケーター、ファビエル・フェルナンデスが、エキシビションで使ったことでも有名でした。エアロビとスケートを融合させた独特な世界観。当時は、「キャンデロロの再来」とまで言われて話題になっていました。

 

勇気を出して、一歩踏み出そう! そういう応援ソングに、こちらの曲はどうでしょうか?

Sara Bareilles で「Brave」。

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「あなたの勇気がみたいの、言いたいことを言って!」強いメッセージを発するサビの部分が刺さる名曲。夢を叶えるためには、勇気が大事。気持ちを振り絞って、前を向けば、希望が近づいてくる可能性も広がります。

ここぞ!と心にエンジンを賭けたいとき、スイッチを入れたいときにはまさにうってつけですね。

 

さらに、運命を切り開きたい全ての人の応援歌といっても過言ではない曲をご紹介。

 

Kelly Clarkson で「Breakaway」

 

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この曲には、個人的な思い入れがあります。当時、人生の長いトンネルの中にいたとき、アメリカの人気オーディション番組「アメリカンアイドル」という番組出身の歌手だった彼女の歌をたまたま聞きました。歌詞の内容は、「羽を広げて、未来を切り開いていこう」という強く、優しいメッセージ。その温かみのあるボーカルと、辛かった過去もすべて抱きしめて前へ進んでいこうとする歌詞の世界観に、何度も救われました。それまで、灰色にしか見えなかった自分の過去が、カラフルに見えるような気がしたのです。

緊張したり、落ち込んだり、試合の渦中に見える光景は、色がない世界に思える時もあるかもしれません。だからこそ、強い気持ちで心の羽を広げて、世界を彩りで満たせたら。スポーツをする方ばかりではなく、全ての人への応援歌になりそうですね。

 

最後に、最近、自分が引き寄せられた素敵な曲をご紹介。

Kesha で「Rainbow」。

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雨の後は虹がかかりますよね。心の雨を拭った後は、虹のような美しいラインが心に広がっていくと、いいな、と思います。実は、この曲を見つける前、何人かのフォロワーさんと虹の話をしていました。それは、とても素敵な偶然で、何かに引き寄せられたのかな?と思ったりしました。

応援を続けて、汗と涙を感じて、応援という温かい感覚の中で、私たちは虹を見つけられるかもしれません。

 

オリンピックまで、待ったなし。頑張っている選手の皆さんと応援している全ての「私たち」に幸せな光景が待っていますように! 歌や絵や言葉で、この2月を盛り上げていきましょう!

青春ってほろ苦い? わが青春のポップソング特集

 

 

1月も、もうじき終わりを告げますね。つい、この間、なんとなく、自分が青春時代に聞いていた曲をTwitterでつぶやいたら、フォロワーさんと、「懐かしいですよね~!」って盛り上がったことがあったのです。ブログを始めて、もうじき1年。これまで、フィギュアスケートや、お気に入りの洋楽について、たくさんお話をさせていただきました。

今回は、自分の青春時代に焦点をあてて、どのような音楽を聴いてきたかを皆様にご紹介できれば、と思います。(今回の投稿で多分、私のだいたいの年齢、ばれますね。笑)

 

まず、物心ついたときに聞いていた音楽は、もちろん、テレビで流れていた歌謡曲。あまり、意味も追いかけずにクラスで流行っているからと、一通り、浅く広く口ずさんでいた子供時代。そんな時代がわりと続きます。

 

高校時代に辛い時期、自分が強く心を動かされた曲があります。それは、The Boomで「島唄」。

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沖縄民謡の三線から始まる独特な旋律。歌われている内容は痛ましい過去と平和への祈り。全ては「島に住む人々へのメッセージ」と、私には感じられました。実は、この曲、フィギュアスケート関連のエピソードも関係していて好きなのです。今、注目を集めている若手のフィギュアスケーター、鍵山優真選手のお父様、鍵山正和さん。正和さんは、現役を引退して、プロフィギュアスケーター時代に、この「島唄」で滑ったことがあったと、当時、雑誌で知りました。残念ながら、アイスショーだったのか、プロフィギュア選手権だったのかは、覚えていませんが、確か、外国人選手も多数参加しているイベントだったという記憶があります。日本人が、日本語の曲で、オリエンタリズムを表現する。今では、羽生選手が披露したことで、スタンダードになりつつあるこの流れ。しかし、私の若い頃は、インターネットもまだそこまで、進化しておらず、このような名曲をフィギュアスケーターが滑ることはとても珍しい出来事でした。このエピソードを知ってから、私はこの曲が更に好きになったのを覚えています。

 

そして、島唄とは対照的なムードの歌も、この当時、魅了されていたので、そちらもご紹介。

ORIGINAL LOVEで「接吻」。

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こちらの曲は、都会的でおしゃれなムードの曲ですよね。姉の影響で、ピチカートファイブなどを聴いていた私。野宮真紀さん以前にピチカートに所属していた田島さんが、新しく、立ち上げたバンドで披露したこの曲を聴いたとき、より、大人のリアルな恋愛ソングに感じて、かっこいいと思った記憶があります。まだ、恋に恋していた時代。大人の世界へのあこがれを強く意識させられた一曲ですね。

英語の勉強に、バイトに励んでいた短大時代、私の心に強くヒットした曲はこちら。

Michael Jackson, Janet Jackson で「Scream」。

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マイケル・ジャクソンがすごいのは、それは、もう、音楽にうとい私でもわかっていました。しかし、このジャネットとタッグを組んだ曲のインパクトってものすごいものがありましたね、当時。今のHIP HOPダンサーの方々が、当たり前に取り入れているスタイルを、このころに確立していたマイケルとジャネットのすごさ。このMVを何度も何度もビデオで見て、熱狂していました。おそらく、この当時日本で流行っていたダンス込みのエンターテインメントは、みんな、マイケルに影響を受けていたと言っても過言ではない、と思います。

 

そして、この時期、洋楽で私が大好きだった曲がもう一曲。

Des'ree で「You Gotta Be」。

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たまたま、マイケルがノミネートされていたMTVアワードでこの曲も、ノミネートされていたんですね。歌詞とか、分からなかったのですが、メロディーと深さを感じるボーカルに惹かれて、CDショップをはしごして、この曲を探し回った記憶があります。(当時、インターネットがなかったから、音楽を探すときは、CDショップの視聴コーナーで探す、というのが、私のスタンダードでした。)

前向きな歌詞と穏やかな歌い方、いつも、人生に迷ったときに聞くと、元気づけられます。こういう女性でありたい、と強く思わせてくれる歌ですね。

 

全て、という訳ではありませんが、青春時代に私が聞いていた音楽の一部をご紹介させていただきました。そうですね~。10代の頃は結構、コンプレックスの塊で、ネガティブな感覚にとらわれていた私を、音楽とフィギュアスケートが救ってくれていたような気がします。短大時代、世界に目が向き、洋楽などもチェックするようになって、視野が広がっていた時代。イギリスにホームステイした時に、日本のことを聞かれて、「日本ってどんな国なんだろう?」って思ったのをよく覚えていますね。日本のことを日本人の私がよく知らなかったら、国際交流って難しいんじゃないかな?そう、強く思った記憶があります。

音楽を通して、青春時代、どんなことを考えてきたかを再確認。好みや思考、国際感覚は今も、自分の中に核としてあるな~って改めて思うことができました。

 

最後に、青春のほろ苦さを歌う。最近の曲をご紹介。

藤井風で「青春病」

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大人になって振り返る青春の日々。

様々な思い出と共に私は今を生きている。皆さんの青春時代はどんな色をしていますか? 今度、機会がありましたら、シェアしあいたいな、って思います。

 

咲き誇れ、君たちよ! 四大陸フィギュアに寄せて

 

 

昨日、四大陸フィギュア2022が無事に閉幕しました。オリンピック前に開かれる国際試合、そこに派遣されたのはオリンピック・世界フィギュアに派遣されることのなかった選手たち。そして、彼らは私たちに大きな感動をもたらしてくれました。今回は、素晴らしい演技を披露してくれた日本人選手たちにスポットライトをあてていきたいと思います。

 

まずは、女子シングル。

 

今回、欠場した宮原知子選手の代わりに出場することになった、横井ゆは菜選手。急遽の決定で、準備をするのも大変だったと思います。SP、ところどころ、ミスはありましたが、切れのある動きでマラゲーニャを演じきりました。FP、クイーンメドレーの時、彼女の中で何かが沸き上がるのが感じられました。クイーンは魂の叫びのような音楽、シャウトするボーカルの盛り上がりと共に、ジャンプも次々絶妙なタイミングで決まっていきます。動きは音楽に呼応すると共に、観客とコネクトしているゆは菜ちゃん。感情がほとばしり、一瞬、この瞬間が競技会であることを忘れさせてくれるくらい、その日のゆは菜ちゃんのスケーティングは「歌って」いました。終わった後の大号泣。つられて、こちらまで涙が頬を伝いました。今季のクイーンメドレーは彼女も観客も心を揺さぶられるものになっていたと思います。

 

若手日本女子のホープ、松生理乃選手。SP冒頭のジャンプ、惜しくも転倒してしまいましたが、ワンハンドビールマンポジションのスピンはものすごい速さで目を奪われました。躍動感と疾走感が素晴らしく、若手のさわやかさと初々しさがプログラムを華やかなものにしていたと思います。FPは月光。ブルーを基調としたコスチュームには、ゴールドのラインがほどこされて、プログラムのイメージぴったり。気持ちを切り替えられたのか、終始、ジャンプが軽やかで、スケーティングも滑らかでした。まるで、紺碧の夜空に光る月の光のようなイメージが膨らんでいき、うっとりとする演技でフィニッシュ。終わった後、感極まったように涙を拭った彼女。何かから、解放されたような安どの表情と共に、こみ上げてくるものがあったのかもしれません。

 

そして、「優勝」という2文字を目標に掲げ、今大会に臨んでいた、三原舞依選手。全日本選手権、あと1歩のところで、オリンピック、世界選手権大会の代表を逃した彼女。しばらく、落ち込んでいたとのこと。それでも、レベルアップのためには、練習しかないと、気持ちを奮い立たせて、この大会まで、プログラムをブラッシュアップさせてきたであろうことは、演技からも感じ取ることができました。

SP、「夢破れて」ただただ、舞依ちゃんのひたむきな思いがリンクを満たしていくのを感じました。ふんわりとしたジャンプ、そして柔らかなスケーティング。その中に漲る強い想い。

これまでの舞依ちゃんの道のりを感じるようでした。

FPで妖精を演じた舞依ちゃん。最終滑走で臨むプレッシャーは相当なものだったでしょう。ジャンプ一つ一つが決まっていくごとに舞依ちゃんの動きはいきいきとしていて、リンクの妖精を思わせつつも、エネルギーがほとばしる、そんなFPだったと思います。

キスアンドクライで、点数が出た瞬間。優勝が決まった瞬間に見せた彼女の幸せな涙。

これまでの努力が花開いた瞬間を感じました。

 

男子シングルでもドラマティックな展開が。

 

今季、躍進を見せた、三宅星南選手。SPでは、4回転をきめて、音楽表現も情感たっぷりに演じます。点数はもう少し欲しかったところですが、まだまだ、新人の星南くん。この大会で間違いなく、みんなに存在を知らしめたことと思います。かならず、次の大会ではもっと点数が上がってくると確信。FPは白鳥の湖。王子様と魔王を演じる難しいプログラム。優雅なところと、激しさと、音楽によって演じ分ける巧みさ。彼の様々な個性が発揮されていました。このFPで、自己ベストを大きく更新。総合で4位につけたことは、今後の自信につながっていくのでは、と思います。

 

若手の勢いそのままに大会入りをした三浦佳生選手。SPのビバルディの四季では、ほれぼれするほどに見事なジャンプ。そして、ぐいぐい加速する疾走感。若さと迫力を感じました。クラシックの綺麗なプログラムの中にも、力強さを織り交ぜてくる、という個性が独特に思えました。FP、ポエタ。実は、直前に肉離れを起こしていたというかおくん。演技の途中も少し、痛そうな顔をしていたので、心配しながら、見ていました。しかし、四回転をなんなく決め、最後まで演技をまとめきった、かおくんは気迫が満ちていて、貫録も十分。総合で3位に入ったのは、かおくんの強い気持ちが引き寄せた結果だったと思います。

 

友野一希選手も、今回、優勝を目標に、この大会に臨んでいました。彼もまた、しばらくは落ち込んでいた時期もあったとのこと。しかし、気持ちを切り替えて、練習に励んでいたことを語ってくれていました。

SP、「ニューシネマパラダイス」今まで以上に映画を見ているような気持ちになったのは、私だけではないかもしれません。ジャンプ、スピン、スケーティング、動き、全てが一本の糸でつながっているかのように途切れなさ。ジャンプもきれいにきまって、これまでよりも更にハイクオリティな演技内容でした。

FP「ラ・ラ・ランド」。ところどころ惜しい部分もありましたが、最後まで引きずることなく、ミュージカルの世界を表現していました。友野くんが、「決して、あきらめない」と、口にしてから、大分時間が経ちました。友野くんの決意が、一歩ずつ、友野くんを「世界」へと近づけてきているのを、今回の戦いでも感じることができました。

 

気がづけば、もう、新春。春の訪れを気配で感じ取れるようになってきています。今回、日本の選手たちが、喜びに溢れ、幸せな涙を流しているのを見ることが出来て、本当にうれしかったです。諦めなければ、幸せに近づける、そういう風に感じられる試合でした。それぞれが、それぞれの花をリンクで咲かせることのできた四大陸フィギュア。見事に咲き誇った選手の皆さんに、大きな拍手と声援を送り続けたいと思います。

それぞれのスタートライン 新年を彩るNew Yearソング2022について

 

 

新年、あけましておめでとうございます! あわただしく年が明け、気が付いたらもう、仕事始めになってしまいましたね。初詣に行った人、家でゆっくり過ごした人、いろいろなお正月の過ごし方があったと思います。そういえば、お正月のBGMってみんな何を聴いているかな?とひらめいたのが数日前。そこから、Spotifyで曲を探し、まだ少し続くお正月モードに合わせた曲をセレクトしてみました。

 

まずは、こちら。寅年にちなんで、Katy perryの“Roar”。

youtu.be

 

例え、抑え込まれても立ち上がり、虎の目を手に入れた戦士となる。そして、私はチャンピョンよ! 大きな声で吠えて見せるわ! なんだか、とっても挑戦的な歌。今年は寅年ですよね。試練は毎年襲ってくるけど、自分はチャンピョンなのだと言い聞かせて、虎のように強く進んでいけたら。なんだか、決意表明のようにも受け止められるこの曲。今年は、オリンピックもありますし、推しに対する応援、そして自分に対する応援という意味でも、すごくぴったりくるような気がします。

 

去年、辛いことがあった人は、今年、気持ちを切り替える必要がありますよね。そんな時にこの曲はいかがでしょうか?

Dua lipaで”Don’t Start Now”。

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恋人との別れを選んだ女性。もう立ち直って、新たな道を選んだの。私の前に表れないでね。あなたとのことは、終わったの。引き止めたって無駄なのよ。

強気な言葉で、過去を振り切ろうとしている反面、恋人に対する思いも伝わってきますよね。それでも、立ち直って前を向く姿を貫くカッコよさ、私も見習いたいなって思います。

リズムはとても、キャッチ―で少しディスコ調。パーティー感覚で聴ける曲と、少し感傷的な歌詞のバランスがとてもカッコいいですね。

 

新年にリリースされたJojiとBonoboのコラボナンバーは、自然と溶け合った美しいMVが特徴的な”From you“。

 

youtu.be

幻想的なメロディーと、Jojiのささやくような歌い方には、独特の浮遊感を覚えます。新年、仕事始め、色々なことをこなしていく中で少し疲れたときなどに、エモーショナルなこの曲に癒されてみたいな~と思い、選曲。幻想的な曲に浸っていると、気分がリセットされて、新たな気持ちで新年に臨んでいけそうです。

 

そして、新年のパーティーが終わりを迎えるころ、こんな曲はいかがでしょうか。

Taylor Swiftの “New Year’s Day”。

youtu.be

パーティーが終わって、恋人とワインのボトルを片付けている女性。彼はとても、モテる男性? 彼を独占したいけど… 様々な未来に思いを馳せ、この先もずっと、彼とこうしていられたら、先のことなんて、分からないけど、ね。新しい年が始まる時、大事な人と、この先も変わらぬ思いで過ごしていきたい、そんな気持ちは誰しもありますよね。パーティーの後片付けの合間に、過去や現在、未来の瞬間に思いを馳せることに、永遠性を感じました。とても、深い歌詞だと思います。

メロディーも美しく、心地いいので、浮かれた新年モードの中にひっそりと祈りの気持ちを持ちたいときには、ぴったりくると思います。

 

ここまで、ご紹介してきた、New yearソング2022の数々。新しい年は、心機一転、これからまた、始まるのだ、という気持ちになりますよね。仕事も、恋愛も、家事も、介護も、またひとつ、新しい気持ちで踏み出せたらいいな。そう、願わずにはいられません。燃え盛る炎にお正月飾りを放り込む前に、どうか、もう少し、お正月の気分に浸らせて…

今年一年、また、素敵なことが、皆様にありますように。

 

 

それぞれの翼をはためかせて… 全日本フィギュア フリー編

 

 

泣いても笑っても、全てが決まる、全日本フィギュア2021、フリー。当初から混戦模様が予想されていましたが、やはり、オリンピックシーズンの全日本には、通年とは違うドラマがありましたね。特別な印象を残してくれた演技を振り返っていきたいと思います。

 

女子シングル、冒頭に演技を披露したのは、念願のフリー進出を果たした、大庭雅選手。プログラムは、「タイタニック」。役柄になり切った雅ちゃんの船が静かに出港していきました。いつも、思うのですが、氷上の雅ちゃんは、本当に女優さんみたい! 動きや表情を見ていると、恋に落ちて、葛藤と、恐れがあって、それでも強い気持ちと、生きる喜びを噛みしめて…という一連の流れがはっきりと伝わってきます。今回、どのジャンプも、しっかり絶妙なタイミングで決まって、更に雅ちゃんが笑顔で滑っていくステップまで鮮やかでした。終わった後、納得したようにうなずく雅ちゃん。そして、キスアンドクライには、振付をされた安藤美姫さんの姿。雅ちゃんの夢が叶った瞬間に立ち会えたことに、喜びと幸せを私も感じていました。

 

ショートで気持ちのこもった、「レ・ミゼラブル」を披露した、三原舞依選手。フリーは、妖精になりきって、優雅に滑っていきました。一つ一つのジャンプは羽が生えたように軽くて空気を含んでいるよう。舞依ちゃんのもつ、優雅さやたおやかさが、会場を包み込んでいるように見えました。途中で、回転が抜けてしまう等のミスがありましたが、舞依ちゃんは、最後まで妖精でした。いつでも、夢みたいに美しい演技を見せてくれる舞依ちゃん。今回の演技も、「舞依ちゃん、大好き!」って、会場にいたら、叫んでしまっただろうと思います。

 

ショートが終わった時点で、かなりの緊張に包まれていただろうと思われる河辺愛菜選手。

フリーはまさに正念場。見ているこちらも、ピリッとした雰囲気をひしひしと感じていました。しかし、冒頭、彼女はショートの時同様、迫力のあるトリプルアクセルを決めました。そのジャンプは、すごく豪快で、高くて幅もあるジャンプ。理想的なトリプルアクセルが宙を舞いました。途中、ハラハラする部分もあったりしましたが、後半にこれまた、大きなトリプルトリプルをリカバリーで決めたとき、彼女の執念を感じました。まだまだ、若くてこれから伸び盛りの河辺選手。きっと、これからも、彼女は大きく飛躍していくだろうな、と期待を感じた4分間でした。

 

4年前、オリンピックまであとちょっとだった、樋口新葉選手。今季の彼女は、勝ちに来ている、そう演技が始まる前に思わせてくれました。力強く躍動感のある新葉ちゃんにぴったりの「ライオン・キングトリプルアクセルは少し着氷が乱れましたが、その他のジャンプはスピードに乗って、流れのある、新葉ちゃんの真骨頂ともいえるジャンプが続きました。ジャンプが決まるごとに、スピードも加速して、リズミカルな動きも気持ちよくはまっていく。プレッシャーのかかる場面で、演技を楽しんでいるように見えた新葉ちゃん。彼女の強い気持ちは最後まで途切れることがありませんでした。終わった後に、大粒の涙を流した新葉ちゃん。積み重なった思いがあったのでしょうか。信じて、努力してきたことが花開く瞬間を見られるのは本当に嬉しいです。うれし涙の新葉ちゃんに私ももらい泣きしてしまいました。

 

最終滑走の坂本花織選手。演技が始まってすぐ、プログラムのテーマ「強い女性」の姿が顔をのぞかせました。花が咲くような見事なダブルアクセルを決めた後のかおちゃんは、なぜか、安心してみていられる気持ちにさせてくれました。シーズンの初めは、難しいステップや動作がたくさん入った、このプログラムを体に馴染ませるのに、苦労していたように見えたこともありました。しかし、気持ちを奮い立たせ、試合のたびに、全て要素をブラッシュアップさせてきたかおちゃん。今回のフリーでは、今までやってきたことを信じて、自信たっぷりに、光り輝く強い女性を最後まで演じ切りました。終わった瞬間、スタンディングオーベーション。しなやかだったり、パワフルだったり、安定感があったり、女性の様々な要素をスケーティングで感じさせてくれた貫録の演技でした。

 

アイスダンス、チームココこと、小松原美里・小松原尊組が披露したのは「SAYURI」。和を感じさせてくれる美しい着物風のコスチュームの二人。愛を語る日本語のナレーションが随所に入る。珍しいナンバーでした。最初から、最後まで、二人のスケーティングの流れが途切れることはなかったです。スピードが加速していくごとに二人の間に通い合う「愛の強さ」も加圧していったように思えます。日本人として、世界に誇れる愛の世界をフリーダンスで魅せてくれた小松原組。会場の拍手が、二人の勝利を物語っていたように感じました。

 

男子シングル。リンクをミュージカル会場に変えたような印象を与えてくれたのは、「La la land」で挑む友野一希選手。演技が始まる前、とても穏やかな顔をしていた友野くん。始まった瞬間から、表情が豊かで楽しい気分に、観ている人を惹きこんでいきます。難しい4回転ジャンプも軽やかにリズムの中で決めていく。コレオシークエンスに差し掛かった時に、生き生きとのびのびと、音楽を演じ切るShow manの友野くんがそこにいて、会場は熱狂に包まれました。空まで飛んで行ってしまうのではないか、と思わせる躍動感。幸せの青い鳥になったみたい。そういう友野くんの演技が見られたことが嬉しかったです。

 

ショートプログラムで、高得点をたたき出し、最終グループでも、期待を集める新人スケーター、三浦佳生選手。ショートの勢いそのままに、フリープログラム「ポエタ」でも、「三浦佳生旋風」を巻き起こします。ジャンプがとにかく大きい!始まりから終わりまで、竜巻みたいに空中に舞い上がるかおくん。怖いもの知らずに見える16歳は、緊張を強さに変えて、最後のスピンまでスピードの中、演じ切りました。強気で、野心的で、冷静で、情熱的。これからも、いろんなかおくんが見たくなる。そんなかおくんのフリープログラムでした。

 

3位で折り返した鍵山優真選手。ここが決まれば、オリンピックもだいぶリアルに見えてきます。この「絶対失敗できない」状況をものにするのは、とてもプレッシャーのかかること。

しかし、始まりから、次々に難しいジャンプをさらっと決める優真くん。まるで、一本の糸がつながっているように、流れが途切れることのない演技。大事な時に大事なジャンプを決められる強い精神力を感じました。「彼の心は鋼で出来ているのか?」そんなことを考えそうになった時、演技を終えた優真くんが控えめに涙を拭った瞬間をカメラがとらえました。ああ、そうか、彼も、ここまで、悩んで、苦しんで、不安な状態と戦ってきたのだ、と悟りました。あまり感情を表に出さないようにして、クールに見えていたけれど、それはじっと心で耐えてきたということなのだな。父である正和さんと固い握手を交わした瞬間に、優真くんはいつものシャイな優真くんに戻っていきました。

 

宇野昌磨君選手が今季、チャレンジしてきたのは、名作のイメージが強い「ボレロ」。彼もまた、オリンピックに静かな闘志を燃やして臨んできました。いくつか、決めきれなかったジャンプもありながら、高難度の4フリップをプレッシャーのかかる場面で降りる等、ここぞ、というときの執念を感じました。エネルギーやスピードのコントロールの仕方、音楽の捉え方などは、これまでの経験が大きく作用していたように思います。ボレロの重厚なメロディーに彼らしい繊細さと大胆さを織り込んでいました。

 

そして、大トリは、やはりこの人、羽生結弦選手。演目は「天と地と」。誰もが驚愕したのは、最初のジャンプ。4アクセル。回転不足ながら、あと、もう少しのところまで、この難易度の高いジャンプを仕上げてきていたなんて、本当に人間業とは思えませんでした。オリンピックまでの時間の間に、このジャンプがどのくらい進化していくのかと、つい、未来に思いを馳せてしまいます。上杉謙信の姿を自らに重ねて、戦いに繰り出す武将を演じる羽生くん。彼の流れのあるジャンプや、しなやかで芯のある動きを見ていたら、まるで、彼は、この世界の自然を司る神の化身なのでは、と思えてきました。エネルギーが漲って、優しさと慈愛に満ちた羽生くんは、プログラムの中で風になったり、水になったり、火になったり、羽ばたく鳥になったりしました。「皆さんの幸せのために」そう、インタビューで話していた羽生くん。羽生くんは演技でみんなを幸せにするだけじゃない。彼は、氷上から、みんなを救っているのだと、そう思わせてくれる演技でした。

 

大きな感動の渦に包まれた全日本が終わっても、その余韻は今も尽きることなく、私の心にとどまり続けています。感動を与えてくれた選手たち、みんな、特別な翼でも持っているのでしょうか? 美しく、宙を舞い、特別な時間を運んでくれた、選手の皆さん、ありがとうございました。それぞれの翼をはためかせ、ドラマの続きは、また次の試合へと引き継がれます。