赤い靴は救世主。お洒落が下手な私のお話

今週のお題「赤いもの」

 

赤い靴がずっと好きだった。特に好きなのは赤いバレエシューズ。

黒を着がちな秋の季節。上下黒のコーディネートになることも珍しくない。

黒いスウェットに黒いパンツ。どこまでもシックなトーンにひとさじ、赤いアイテムを足す。赤い靴でもいい、赤いベルトでもいい。赤いバックでもいい。

でも、赤いバレエシューズを履くと、なぜか、自分がとてもお洒落な装いをしているような気になって、気持ちが華やぐのだ。

赤と黒はとても相性がいい。フィギュアスケートのコスチュームでも、女性のスケーターは赤と黒の組み合わせのコスチュームを着ていることが多い。

そんなときの演目は大抵、スパニッシュダンスか、タンゴになるような気がする。

どこか抑えた中にほとばしる情熱という解釈なのだろうか、黒と赤のスカートをひらひらさせて宙を舞うスケーターたちはとても美しかった。

 

そんな、赤と黒が好きだった私に、最近ちょっとした変化が訪れるようになった。

今年はなんだか、ブラウンやベージュの洋服がとても流行っている。

カーキっぽいブラウンや、ミルクティーのようなベージュ。今年の茶系は多種多様な色身を帯びていて、カラフルな色よりも気持ちがそそられる。

そんなブラウンやベージュも、実は赤い靴と相性がいいのではないか、と思うようになったのだ。今年の冬は、ライトブラウンのニットワンピースに赤い靴を履いてみようか、ベージュのコートに赤いストールを巻いてみようか。今から、来る冬の装いのためにコーディネイトを考えるのは、とても楽しい。そして、そういうときでも、私は差し色としての赤をどこか意識する。

 

コロナで、どこにも遊びには行けないけど、どこにも遊びに行けないからこそ、赤い靴はたまのお出かけを特別なものにしてくれるのかもしれない。

赤はお洒落がそれほど得意ではない私の救世主の色なのである。

人生はチャレンジだ! グランプリシリーズトリノ大会観戦記2

 

グランプリシリーズイタリア大会2日目。昨日の早起きが祟ったのでしょうか、今朝はうまく起きられませんでした。本当はリアタイ(リアルタイムで応援すること)したかったのですが、年には勝てません。

 

必死でアーカイブをチェックする中で、心に留まったシーンを綴っていきたいと思います。

 

まずは女子フリースケーティング

 

宮原知子選手の「トスカ」。イタリアのお客様にも、彼女のエモーショナルな表現力が届いたのではないでしょうか。曲の序盤から盛り上がり、そしてエンディングまで、一人の女性の人生、物語が凝縮されて伝わってきました。喜びだったり、悲しみだったり、スケーティングやジャンプを駆使して「女性の一生」を表現できるのは、今の宮原知子選手だからなのかな、って思ったりしました。一人の女性スケーターとしての円熟味を、今季感じています。

 

三原舞選手。森の妖精がトリノに降り立ちました。けれども、不思議です。今までのようなはかなげな妖精のイメージではないのです。ジャンプを飛ぶたびに、指先一つ伸ばすたびに、舞依ちゃん扮する妖精に、魔法をかけられているような気がしたのです。なんだか、心が浄化されて、マイナスな気持ちが消えていくような。見終わった後に前向きな気持ちになれていたような。一試合、一試合、彼女の滑りに力強さが宿っていったと感じています。その分、彼女の「強さ」と「清らかさ」がより明確に見ている人に伝わっていったのだなあと思いました。得点も前の試合より伸ばすことができて、彼女にとって収穫の多い試合だったとおもいます。

 

ロシアの女子たち、シェルバコワちゃんもフロミフちゃんも、4回転失敗する気がしないくらいの完成度で、早くも私はオリンピックを目撃しているような気になりました。ロシアの国内戦ものすごいことになりそうですよね。誰が選ばれてもおかしくないほどの技術力。ロシア勢の層の厚さをまざまざと見せつけられた気がしました。

 

3位に入ったレオナ・ヘンドリックス、シャンパンゴールドの衣装が上品で大人の女性の体形にとても映えるすてきなものでした。女優さんみたいなレオナさんが、豪快なトリプルルッツのコンビネーションジャンプを決めるのは爽快さがありました。大人の女性の演技が表彰台に乗れることは、とても素晴らしいことだと思います。様々な努力を経て、最高の演技を届けてくれるベテラン選手には、ただただ、頭が下がります。

 

そして、話題は男子シングルス フリースケーティングへ。

6位の友野一希選手。今までで、一番柔らかさのあるラ・ラ・ランドだったように思えました。前半、難しいジャンプが次々に決まったことによって、コリオシークエンスや、ステップシークエンスの快活さがより華やかに伝わってきました。動と静を兼ね備えているこのプログラム、体に入るまでに苦労もあったと思いますが、友野くんの表現したい世界観が表現できた試合だったのではないかなって思います。エキシビションにも選ばれた友野くん。

トリノのお客様のハートを、ぜひ、ぜひ、盗んじゃってください!

 

鍵山優真選手。やってくれました。まさかの7位からごぼう抜きの優勝。なんということでしょう! 昨日、ちょっと元気がないかな~って思っていたのですよね。そんな中、昨日とはまるで別人のように躍動感に満ちたグラディエーターを見せてくれました。滑っている内に鍵山くんがいろいろ、表情を変え、強さだったり、儚さだったり、少年から、急に大人に変貌を遂げるような驚きに満ちたフリースケーティングだったとおもいます。このプログラム滑っているときの鍵山くん、凛々しくてカッコよくてドキッとしました。

 

2位のミハイルコリヤダ選手。ジャンプがちょっとステップアウト多かったかな…このプログラム好きなんですけどね。演目、シンドラーのリスト。冒頭に入る、ちょっとしたジェスチャー、書類に目を通して作る指の動きに、なんだか、深い意味があるような気がしてしまうんですよね。彼の悲しみの解釈が私は個人的にとても素敵だと思います。感動を呼ぶプログラムで表現される悲しみは難しい、と個人的には思ってしまいます。過剰にしすぎると、それは、心に刺さるものにならないことも多くて…彼の抑制された淡々としたアプローチと、ジャンプがうまくはまったら、きっともっと高得点になるでしょう。難易度の高いプログラムですが、期待してしまいます。

 

SPで1位だった中国のボーヤン・ジン選手がまさかの失速。残念ではありますが、彼はつい最近、病気で手術をしたばかり、まだ長いプログラムを体になじませるのに時間がかかっているのかもしれません。確かにミスが多かったのですが、このボレロのプログラム、ボーヤンの動きにすごく合うような気がしました。繊細だけど強さを感じさせる旋律がボーヤンの正しいフォームから繰り出されるジャンプとカチッと合ったら、きっとカッコいいプログラムになると思います。まだまだ、戦いは長い。ぜひ、より大事な試合までに仕上げていってほしいと思います。

 

成功したチャレンジも、うまくいかなかったチャレンジも、いろいろあった今大会。けれども、チャレンジを経て変化していく選手たちの姿が、この不安な時代、フィギュアスケートを見ている私たちの心を照らしてくれていたのは確かなことだと思います。人生はチャレンジだ! この大切な季節をもう少し見届けていきたいと思っています。

祭りだ!祭りだ!トリノ祭りだ! グランプリシリーズトリノ大会観戦記

 

 

フィギュアスケートグランプリシリーズ第3弾、トリノ大会の戦い、火ぶたが切って落とされました。いやはや、今回もレベルの高い演技が続きましたね。

 

まずは、女子で個人的に心に触れた選手をご紹介。

 

三原舞依選手。前回のカナダ大会でも感じましたが、彼女の演技からは、真心のような温かいものを感じていました。今回は、その真摯な祈りの姿勢の他に、「もっと上げていける」という、強い意志と向上心を演技から感じることができました。ジャンプ、ステップ、スピン、更に研ぎ澄まされていて、終わるころには涙腺は緩みっぱなし。舞依ちゃん、あなたのスケートは、私がフィギュアスケートを応援する理由です。今までのシーズンベストを更新。まだまだ、これから、舞依ちゃん劇場が幕を開けるはず。フリーも目が離せません。

 

宮原知子選手。「小雀に捧げる歌」いつも、ソフトな印象を受けるプログラムですが、今回は、なんというスピード感でしょう!スケートのエッジ(刃)も傾けて滑っているところが多くて、絶対、バランスがとりにくいと思うんですよね。空高く羽ばたく鳥のような疾走感。このプログラムは宮原選手のファンの中でも人気の高いプログラム。彼女の代表作品と言っても過言ではありません。

 

今回、「お?」って思った選手はロシアのマイア・フロミフ選手。まだ若いロシアの娘さんは、大人っぽい曲でSPを滑り切りました。若い選手にありがちな、音楽がただのBGMになっている感じが全然しなくて、エレメンツを行いながら、曲の起承転結を演じ分け、曲を支配している感じがしました。プログラムで、どんな風に雰囲気を変えていくのか、これからが楽しみです。

 

1位につけたのはベルギーのルーナ・ヘンドリックス。もともと、美しいスケーティングに定評のある選手です。美しいトリプルルッツ・トリプルトーループのコンビネーションに惹きつけられ、美しいラブバラードに酔いしれて、キスアンドクライを見てみたら、お兄さんのヨリック・ヘンドリックスさんがいるではありませんか!美しい兄妹の絆をキスクラで見られて、長年のスケオタ、早朝にもかかわらず、変な声が出ました。

 

男子もなかなかの高レベルな戦い。なんと、上位4人まで90点台が出ているではありませんか。オリンピックシーズン、各国レベルが大幅にアップしているのを感じます。

 

7位の鍵山優真選手。要素抜けは痛いですが、なんというか、プログラムの雰囲気や、小粋な感じはうまくステップで伝わってくる気がしましたね。なかなか、うまくいかない中でも、個性を伝えられるところが、やはり、特別なセンスのあるスケーターです。ラスト、緊張する中、トリプルアクセルを決めたのはナイスファイト。フリープログラムは挑戦者のつもりで、思いっきり行ってもらいたいです。

 

6位の友野一希選手。イタリアで披露する「ニューシネマパラダイス」。のっけから、友野くんが「いい波」に乗れているのを感じました。力みとか迷いが消えていて、プログラムの中に、気持ちが入り込んでいたように思えました。どこか、優しさや切なさ、そして哀愁を感じさせてくれたのは、友野くん、いえ、友野選手がスケーターとして、成熟してきつつある証なのだと思います。

 

そして、4位のミハイル・コリヤダ選手。惜しくもジャンプのミスはありましたが、それすら、演技の一部と思わせてくれるくらい、SPの「くるみ割り人形」はドラマティック。途中、人形から、王子様へ姿を変えて、愛の表現を行うステップ、そして最後にはまた人形へと戻る硬さのあるムーブメント。見るたびに恋をしてしまうプログラムです。

 

2位のダニエル・グラスル選手。身軽にジャンプを飛ぶ選手ですね。長身でイケメン。そのうえ4回転ジャンプまで難なく決めてしまうとはなんとずるい。そりゃ、高得点出るよね~と感動することしきり。フリーもどこまで点数を伸ばしてくれるか楽しみです。

 

1位のボーヤン・ジン選手。帰ってきました! 私たちのボーヤン・ジン選手が帰ってきてくれました。美しい4ルッツ3トーループは健在。彼に限って言えば、壁がよけるべきというくらい、素晴らしいこのジャンプ。近年、なかなか思うように決まらず、悩んでいたのではないかと思うこともありました。けれども、高難度のジャンプを次々決めて、キレのある、スケーティングで、存在感を発揮してくれた、もう、それだけで、心が熱くなりました。やっぱり、かわいくて、かっこよくて、大胆なボーヤンが、みんな大好きなのです。

 

今回、4時にアラームをセットして、家族を起こさないようにこっそり観戦していましたが、何回か、「よっしゃああああ」と声を上げそうになるのをこらえるのが大変でした。そのくらい、今回の大会もドラマティックでお祭り状態。一人一人の選手のレベルアップを一つ一つの試合で見せてもらえることには、感謝しかありません。

また、フリーでも大きな祭りが待っていることでしょう。声を潜めて、興じたいと思います。

諦めないって大切 スケートカナダ観戦記2日目

 

 

今回もまた、先の読めない展開が待っておりました。フィギュアスケートグランプリシリーズカナダ大会。なかなか、全員を追うのは難しく、私の心に触れた演技をピックアップして綴っていきたいと思います。

 

まず、女子シングルフリースケーティング。最初に現れたのは河辺愛菜選手。ショートプログラム12位からの滑り出しでしたが、ほぼノーミスの演技で、フリープログラムを終えることが出来ました。とくに冒頭のトリプルアクセルは美!勢いに乗って、高さも幅も素晴らしいジャンプでした。彼女の演技は、どこか、シャープでエネルギッシュ。前半も後半も、難しいジャンプが待ち構えていましたが、彼女は果敢に挑んで、成功させていました。国際試合のデビュー戦、ショートプログラムの失敗の後、緊張と重圧はとても大きなものだったでしょう。しかし、大事な試合で自分のベストの演技が披露できたことは、自信につながったのではないでしょうか。フリーを終えて、総合9位に浮上。のびのび笑顔で滑る河辺選手が見られて、幸せでした。

 

総合5位に入った樋口新葉選手も、果敢にトリプルアクセルにチャレンジ。こちらも美!彼女の回転の速いジャンプとスピンは見ていて、溌溂とした、気持ちよさを感じさせてくれます。SPの柔らかい表現と違って、壮大な自然を描いたフリープログラムはステップもダイナミックで、SPとFPのイメージの違いを明確に魅せてくれました。時にかっこよく、時に穏やかに、時に激しく、新葉選手はいろいろな音を表現できるスケーターです。スピードの中で、そのように演じ分けができるなんて、すごいなあといつも思います。

 

そして、メダルまで、あと1歩だった三原舞依選手。全て水が流れるようなスムーズさを感じました。ジャンプを失敗する気がしないほど、落ち着いて見えていたし、表情に妖精が舞い降りているかのような神々しさを感じました。演技後半に難しいジャンプがたくさんあったのに、余分な力が入らないエアリーなジャンプはまさしく、あちこちの湖に花を咲かせる妖精そのもの。終わってみれば高得点。舞依ちゃん。あなたは戻ってきた。シーズンが進むにつれ、舞依ちゃんのいいところが随所で見られて、活躍のステージが上がっていくことを私は期待せずにはいられません。

 

3位のコス美こと、コストルナヤ選手。少し、元気がなかったかな?でも、私は、このフリープログラムの「Lovely」という歌が大好きなのです。美しいけど、どこかかなしい、ビリーアイリッシュとカリードの切ないハーモニーが最高にエモい曲。エモーショナルな曲にチャレンジするのは、本当にスケートの技術力が問われることかと思います。コス美のようにジャンプ・ステップ・スピンすべて「美」と表現されるような選手こそ、ふさわしい選曲のようにおもいます。なので、シーズンが進んだ時に、この「Lovely」の完成形が必ずやみられるものと、今から、期待しております。

 

2位に食い込んだリーザ様こと、エリザベータ・トゥクタミシェワ。おお!なんとすごい! のっけからトリプルアクセルのコンビネーションジャンプ、さらに単独のトリプルアクセルと、私たちの度肝を抜いてしまいました。「シェヘラザード」の妖しい調べに乗って、彼女の繰り出す技術は年々、更に進化していく一方です。彼女の妖艶さは、圧倒的な技術力と、これまで積み重ねてきた貫録が引き出しているのではないかと感じます。正しい技術力で息の長い活躍を見せてくれる選手の一人として、とても尊敬しています。

 

1位のカミラ・ワリエワ。もう言葉はいりません。これぞ、フィギュアスケートボレロという曲は、フィギュアスケートの歴史において、非常に意味のある楽曲です。まだ若い彼女がその曲を選んでも、誰も異を唱える人は出てこないでしょう。それほどに、全ての要素の完成度が高いのです。これは今シーズン中にフリースケーティングだけで、200点越えちゃうんじゃないの?と、今からどこまで彼女のレベルアップがあるのかを期待せずにはいられません。

 

男子シングルス。山本草太選手は、残念ながら、4回転ジャンプで失敗をしてしまいました。しかし、そのほかのエレメンツは丁寧に行っていて、曲の切なさとその丁寧な所作がとてもリンクしていたと思います。大事なジャンプで失敗してしまうと、気持ち的に諦めてしまいそうになる気がします。でも、山本選手は最後まであきらめないぞ、というガッツが溢れていて、見ている私たちにプログラムを途切れさせなかったような気がしました。終わった後に勇気を貰えたFPでした。

 

3位に入ったエフゲニー・セメネンコ選手。ややジャンプはシェイキーに思えるものも多々ありましたが、大きく崩れることなく、重厚なイメージの演技を演じ切りました。やっぱりここでも、諦めない気持ちが演技をつなげたように思います。彼もまだ若く、グランプリシリーズのような国際試合で、メダルをかけて戦うのは非常にプレッシャーがあったことでしょう。しかし、一つでも上の順位へ。一つでも多くのジャンプを飛ぼう。そういう熱意が結果を手繰り寄せて行ったのでしょうか。見ている私たちも、若いのに粘り強い演技を見せてくれたセメネンコ選手が印象に残りました。

 

2位のジェイソン・ブラウン。4回転サルコウの失敗は残念。しかし、演目の「シンドラーのリスト」とてもシリアスなこのテーマを様々な技と技の間のつなぎを駆使して、演じ切るのは大変そうに思います。ひとつ崩れてしまったら、あらゆるところに綻びが生まれていってしまう危険さえあるように感じました。非常に見た目以上に体力を必要とするプログラム。後半戦までに、どこまで仕上げてくるか鍵になるようなきがします。

 

そして、大本命登場。ネイサン・チェン。スケートアメリカの演技は微塵も感じさせぬほど、ジャンプを難なく降りて、終わってみれば、一人別次元。さすが、世界王者。短期間で仕上げてきましたね。ただひとつ、フリーのステップシークエンスの所作ですが、モーツァルトのクラシックな旋律にこのシークエンスの動作は合っていたのでしょうか?敢えて、モダンな動きを取り入れているのだとは思いますが、少し違和感を覚えました。演技構成点、プログラムコンポーネンツに関しては、ある程度高く出るのは分かるのですが、ジェイソンの繋ぎもりもりのコンポーネンツよりも、高く評価されるというのは少し私にはわかりませんでした。ネイサンのショートプログラムが良かっただけに、少し、辛口評価になってしまいました。ファンの方々、すみません。

 

ともかく、グランプリシリーズの2戦目が終わり、次はトリノ大会ですね。そこでも、さまざまなドラマが待っていることでしょう。推し達の新たな活躍を期待して、楽しみにまっていることにします!

Wake up Ladies! スケートカナダ観戦記(女子編)

なにしろ、スケートカナダにも、レベルの高い選手が目白押しなので、男子偏と、女子編を分けて綴らせていただくことになりました。それでは、行ってみよう!

 

まずは、三原舞依選手。紀平梨花選手の怪我から、代打出場となった今大会。急なことで、準備も大変だったと思います。けれども、最初のジャンプが決まった瞬間から、舞依ちゃんの動きがしなやかで、会場の空気を慈しんでいるのが伝わってきました。演目の「夢破れて」に合わせて、彼女は情熱的に舞いました。終わった後、感極まったのか、涙ぐんでいた時に、「ああ、舞依ちゃん、グランプリシリーズに戻ってこれた」と私も感極まってしまいました。一時期、大病を経験して、去年、シリーズに参戦した時、とても痩せていて、闘病生活が大変だったのだな、と感じて一試合一試合、祈る気持ちで見守っていました。2年ぶりの国際試合。カナダのお客さんも、舞依ちゃんを待っていてくれたのです。演技が終わった後の拍手や喝采、「Welcome back Mai」の横断幕。本当に、フィギュアスケートって素晴らしい競技だなって、舞依ちゃんの演技から、改めて感じることが出来ました。

 

期待の新人、河辺愛菜選手。ジャンプのミスはありましたが、大胆でシャープな演技はとても見ていて気持ちがいいですね。彼女はまだ若いけれど、かわいらしさも、大人っぽさも兼ね備えた選手のように感じます。これから、いろいろな試合を通して、彼女の色を見つけていってほしいとおもいました。

樋口新葉選手の「Your song」。初めてこのSPを拝見しましたが、今までのわかばちゃんの強いイメージとは少し違って、なんというか、優しさやたおやかさ、穏やかさがにじみ出ているプログラムだな~と思いました。ジャンプが決まるたびに新葉ちゃんの背後から、華が咲き誇っていくような。白のコスチュームのように清らかな水が流れていくような、そんな演技だったと思います。そういえば、女子選手で「Your song」で滑る選手って少なかったような気がします。すこし濁りのあるこの曲で、爽やかな印象で綺麗に滑る新しい解釈を新鮮に思いました。

 

ロシアのエース、カミラ・ワリエワ。いや~すごい貫録でしたね~。いつも思うのですが、彼女にできないことはないのではないのか、というくらいすべてが異次元レベル。冒頭のトリプルアクセルに始まり、技と技のつなぎがえぐいくらいに高難度。まだまだ、年齢の若い彼女がこの完成度ですから、年齢を重ねて、彼女の色がはっきりくっきり見えて来たときに、どんなドラマが待っているのか、楽しみで仕方がありません。

 

アメリカのアリサ・リウ。あんなに完璧なワリエワの後でも、自分を失うことがありませんでした。彼女を見ていると、スケートをするのが楽しくて仕方がないという、滑る喜びを感じます。怖いもの知らずのスタンスで試合に臨んでいけるのは、強みだと思います。ステップやスピンなど、曲を効果的に表現しているところも、少女から大人の女性へ変化していく途中なのかな~と感じました。このまま、大人の女性になっても、天真爛漫なアリサでいてほしいなどと、つい、よけいなおばちゃん心が頭をかすめました。

 

3位に入ったアリョーナ・コストルナヤ。ニックネームは「コス美」。コス美も負けてはいませんでしたね。トリプルアクセルを決めてからの演技の入り込み方は半端ありません。音楽の選び方が、若い選手の割にはどこか、影があるのはいつも気になっていましたが、彼女は美しさの中に影がある表現が気に入っているのかな?と感じたりします。「難しいジャンプ飛びました。ハイ終りました」という演技ではなく、最初から最後まで、彼女なりの起承転結が見えるところなど、若いのに成熟しているのだな~といつも感心してしまいます。

 

最終滑走、私のヴィーナス、エリザベータ・トゥクタミシェワ選手。タンゴの湿度を感じる音楽で、終始、大人の舞をきめてくれました。ついつい、リーザの劇場に心が動かされて見入ってしまいますが、冒頭のトリプルアクセルの完成度すごい。ここまで、演技が音楽と一体になっていても、大技のジャンプに迷いがないというところは尊敬に値します。気迫と貫録を兼ね備えた演技で2位に入りました。

 

と、終わってみると、女子も大混戦。グランプリシリーズは序盤から、高レベルの戦いが繰り広げられています。さすが、オリンピックシーズンですね。各選手の持ち味が、ここに来て覚醒している、という印象がありました。

「あの試合にエントリーしてれば、●●はメダルとれるのに?」ってそんな甘いものじゃないですよ!どの試合だって、それぞれの選手が真剣勝負で取り組んでいるのですから、その試合ごとに難しさは違うのだと思います。たらればはNO!NO! とにかく、目の前で繰り広げられてるすばらしいドラマと素晴らしい現地のお客さんに惜しみない拍手を送りたいですね。大会の後半に向けて、すばらしい感動にまた巡り合えますように。

 

 

 

プログラムが脈打つとき~スケートカナダ観戦記~

 

スケートアメリカの興奮冷めやらぬ中、早くもグランプリシリーズスケートカナダ大会が開幕しました。全く違う出場選手、全く違う緊張が現場を覆っていましたね。

時差の関係上、全てを追いきることは難しかったのですが、今日、心に触れた感動を綴っていきたいと思います。

 

まずは、男子シングルス。山本草太選手のSP「イエスタデイ」に心惹かれました。山本選手というと、「戦う男」というイメージの重厚なプログラムのイメージがあったのですが、今回のビートルズのバラードは、山本選手の繊細さや柔らかさが全面的に感じられて、試合の流れにいい風を運んできてくれそうなナンバーでした。冒頭の4回転ジャンプがきれいに決まった後も、流れるようなスケーティング、ポジションの美しいスピンで魅せてくれます。「羽生選手を尊敬している」と以前、コメントしていたからでしょうか? エモーショナルな曲調の中でも、正しいポジションを意識している姿は見ていて、気持ちがいいと思いました。

ベテランの田中刑事選手。田中選手の演技は、試合なのに、どこかアイスショーを見ているような気持ちになりました。目線の配り方、上体の動かし方、音の細かい拾い方が洗練されているからでしょうか。始めから終わりまで、ミステリアスな雰囲気が漂うプログラムでした。ジャンプが決まってくると、更にプログラムの世界観に惹きこまれていきそうにおもいます。

 

更には、ロシアの若手選手にも心を奪われます。ロシアの21歳。マカール・イグナトフ。冒頭の4回転ループをいともあっさりと決めた後は、自分の流れを作り出します。スピードと、力強さには目を見張るものがありました。スケートのエッジが氷をぐっとつかんで離さない、そのエネルギッシュさと速い独特のスピン。高難度のことを次々流れを途切れさせずに行う。そして華がある。圧倒されてしまいましたね。5位のエフゲニー・セメネンコ選手も、それほど点差がない得点。セメネンコ選手もポジションの綺麗さ、力強さとスピードにかなり圧倒されます。若手ながら洗練されたスケーティングを披露してきた、ロシア選手。オリンピックを前に熾烈な代表争いが待っているだろうな、と今から戦々恐々です。

 

地元カナダのキーガン・メッシング。ダイナミックさが持ち味の彼の演技には、いつの頃からか、優しさや穏やかさが加わったような気がします。もともと、キャラクターの強い演目が多かったキーガン。年々、落ち着きが出てきて、スケーティングを通して、人柄を感じる彼が、高難度のジャンプを決めると、つい「やったー!」と大喜びをしてしまいます。カナダのお客さんの声援もひときわ大きく、キーガンがいかにみんなに愛されているかを感じることができました。

 

2位のアメリカ・ジェイソン・ブラウン。彼はショートプログラムで4回転にはチャレンジしません。しかし、細部において隙のない、高難度のステップが組み込まれたプログラム。

 

 

特に今回は息をのんで、見入ってしまいました。これまでの彼よりも少し背徳的だったり、誘うようだったり、迫力を感じるムーブメントの中で、やはり彼の培ってきたきれいなエレメンツが際立ちます。彼もまた、近年大人の表現力を努力によって手にしたスケーターなのだと納得の点数でした。

 

そして、1位は、スケートアメリカでまさかの失速だったネイサン・チェン選手。しかし、あれれ? 今回のネイサンは、スケアメのネイサンと同じ人なのでしょうか? プログラム冒頭からの落ち着きの表情からもうすでに別人感がでていました。

今回のショートプログラム。ネメシスが彼の体に「入った」という印象です。全ての難しいジャンプは、失敗する気配は全くありませんでした。ムーブメントを見るに、ストーリーが彼の中で脈打ちだした、ここから、何かが始まりだした。という印象でした。スケートアメリカの結果から、ほんの数日しかないのに、一段階も二段階もギアを入れてこれるというのは、さすがはワイルドなネイサン・チェン。ストーリーの最終段階が早くも楽しみになりました。

 

 

と、ここまで観戦をまとめましたが、すみません。女子の文も書きたいことが溢れすぎてしまっているので、今回はひとまず、ここまでにします。

女子も女子でハイレベルでした。これだから、フィギュア観戦はやめられない!

Growing up is glory. スケートアメリカ観戦記3

スケートアメリカも、いよいよ最終日。戦いが進むにつれて、毎回様々な感動の場面が繰り広げられました。
やはり、オリンピックシーズンだからでしょうか。今年のグランプリシリーズは、しょっぱなから、ドラマティックでした。
3日目、まずはアイスダンス 小松原美里・小松原尊(ティムコレト)組。
RD(リズムダンス)では、少し、慎重にエレメンツを行っていたかな~と思い、硬さを感じて心配になっていました。
しかし、FD(フリーダンス)、彼らが演目に選んだのは映画「SAYURI」。控えめで、でも抑えた中に激しい情念を秘めたダンスでした。
リフトされる美里選手、とても神々しさをまとって、エレメンツのこと、正直すっかり忘れて見入ってしまったのです。
日本人カップルとして、この凛とした世界観を出せるのは、チームココ(二人の愛称)しかいない。
そう思わせてくれるほど、はまりプロに感じました。今後、このプログラムは、どこまで、私たちの心を魅了し続けてくれるでしょうか。
二人はFDで順位を二つ上げて6位入賞を果たしました。デビュー戦で、早くも彼女たちの存在感を世界に示すことができたと思います。

女子シングルフリー。横井ゆは菜選手が登場。「クイーンメドレー」を演じていた時に、私は今まで見た事のない彼女の姿を目にしたような気がしました。
冒頭から、クイーンメドレーということもあり、お客さんは大盛り上がり、彼女のジャンプが決まるたびに歓声が沸き上がります。
正直、このクイーンメドレーは、シーズン前のアイスショーで披露していた時は、なかなか、技が決まらずに苦戦していたように見えました。
本人も、シーズンが始まる前は弱気な発言をしていたこともあり、シーズン序盤の国際試合、かなりの緊張があったと思います。
けれども、お客さんは彼女の演技を気に入って、「いいよ!頑張れ!」と言っているかのような声援を彼女に送り続けました。
その温かい空気の中で、彼女の動きからは硬さが消えていきました。音楽に自然に体が動いていた横井選手から、なにか、開放感のようなものを感じました。
観客と、音楽と、彼女。全てに一体感が生まれ、途中から、彼女が滑ることに喜びを感じ、感極まっているのが伝わってきたのです。
その瞬間の印象は、言葉では言い表せません。無垢な喜びと、試合を通して、これまでの殻を破れた横井選手がそこにいて、思わず涙腺が緩みました。
順位とか、点数ももちろん試合では大事です。けれども、今まで頑張ってきたことを最大限大事な試合で出し切れた喜び。それを目撃できたことは、
結果とはまた別の感動でした。国際試合で、いい演技で締めくくれた経験は、彼女のこれからの財産になるような気がします。
今まで、見た、彼女の「クイーンメドレー」の中で、最高の演技でした。

更に、ハイライトは宮原知子選手。深紅の衣装に身を包み、ミュージカル「トスカ」を披露してくれました。
もともと、スケーティングに定評のあった、宮原選手。このプログラムは、彼女のそれまで、なかなか見せてこなかった熱い想いが
滑りを通して、伝わってきました。ジャンプとスケーティングが見事に溶け合って、プログラムに起承転結を運んできます。
彼女もまた、コロナの影響で、思うように氷上で練習できない日々を経験した選手です。
練習ができない中、室内でダンス練習に取り組んだり、ローラースケートでスケーティング練習を積んだり、
苦しい中で地道なトレーニングに励んでいた経験が、このシーズン初戦で花開いたのでしょう。
全ての動作に無駄がなく、プログラムの強弱も自由自在。大人の女性の情念をこんなにも自然にスケーティングで表現できるなんて、すごいと思いました。
高級品を見ているような感覚とはまさにこのこと。
演技が終わって一瞬の静寂の後の拍手喝さいが、彼女の演技のすばらしさを物語っていました。

そして、日本人最上位に輝いたのは、坂本花織選手。
ブノワ・リショー振付のこのプログラムは非常に難しい体重変化のステップが続く、なかなか難易度の高いプログラムでした。
テーマは終始、「強い女性」。体力的にも厳しい状態で、高難度のジャンプやスピンが待っている「鬼プロ」。
予選や、グランプリシリーズの前哨戦では、このプログラムを体になじませることに苦労していた場面も見受けられました。
しかし、演技が始まってみると、そんなこと、微塵も感じさせないかおちゃんの姿がそこにありました。
時に強気な表情で、時に女神のような優しい笑顔で。表情に気を配れる余裕があるほどに、全てのジャンプがタイミングよく、大きく決まり、
ショートプログラムの「グラディエーター」とのいい対比が生まれました。今回初めて、SP、FPのテーマが明確に伝わってくるような
演技内容だったのではないかと思います。短期間でよくこんな難しいプログラムをものにしたな~と、ただただ脱帽です。
これからもっと、細かい部分をブラッシュアップさせて、新しい坂本花織のはまりプロとして昇華させていってほしいと願わずにはいられません。

私が、この3日目で強く感じたのは、選手一人ひとりの「短期間での成長」でした。
オリンピックシーズン、特別な緊張が冒頭の試合から、会場を覆っていたと思います。
けれども、選手たちは、決してあきらめることなく、会場の空気や緊張感と向き合って、レベルアップした演技を披露してくれたのです。
うまくいかなかった時期などを乗り越えた最高のパフォーマンスの数々に、本当に感動しました。
まるで、拍手で生き返るティンカーベルと、拍手を送り続ける、子供たちのように、今大会は非常にドラマティックでした。
試合ごとに、きっと違う感動が待っていると思います。そして、様々な感動の中で、王者が決まっていくのです。
どうか、みんな、最後まで無事に滑り切れますように。次の栄光の瞬間を心待ちにしています。また、スケートカナダでお会いしましょう。