瞬き厳禁!楽しさいっぱい、夢いっぱい。 北京オリンピックフィギュアスケートアイスダンスRD観戦記

 

 

伝説となるであろう、北京オリンピックフィギュアスケート・男子シングルが終わって早数日、数々の名演技を生み出すドラマの舞台は、アイスダンスへと移りました。

シングル競技とは違い、ジャンプなどはないアイスダンスですが、その分、正確なステップワークと、ダイナミックなリフトが最大の見せ場となります。果たして、アイスダンスを制するKing&Queenはどのカップルになるのでしょうか。怒涛の興奮に包まれたRD(リズムダンス)の模様をお伝えしていきたいと思います。

 

日本代表の小松原美里/小松原尊組。団体で、息の合ったダンスを披露して、チームを銅メダルへと導いた功労者です。今回のRD、テーマはストリートダンスリズム(ヒップホップ、ディスコ、スイング、クランプ、ポッピン、ファンクなど)。冒頭から、はじけるようなディスコナンバーで会場を湧かせます。少し、緊張していて、硬さがあったのかな?とは思いましたが、凝ったリフトが本番でも光っていて、全体的にクールなムード。二人の同調性も感じられて、日本のエースとしての実力を遺憾なく発揮していました。残念ながら、フリーダンスに進むことはできませんが、予選通過のボーダーラインまではほとんど、僅差。この経験をばねにして、必ずや、二人の気迫のこもったダンスに磨きをかけて、次の試合に臨まれるのではないかと思います。

 

 

グループが包むにつれて、バラエティに富んだ、ノリノリダンスが見えて、楽しさも興奮もヒートアップ。

個人的に気に入ったのは、7位に入ったイタリアのカップル、シャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ組。今年流行のマイケルジャクソンメドレーで挑みます。RDのテーマに関係してか、マイケルの中でもディスコナンバーを多めにチョイス。

身長差の少ない、このカップル。しかし、男性の巧みなリードがさえわたります。ディープなエッジ捌き、重心の安定感は、演技に洒脱さを運びました。注目は、女性がリフトされながら見せる、帽子に手をかけるしぐさのマイケルポーズ。プログラムに独創性がありました。

 

6位カナダのパイパー・ギレス/ポール・ポワリエもこれまた、独創的なプログラム。こちらも今年大流行の「エルトン・ジョンメドレー」。蛍光オレンジのパンツスーツ衣装が、エルトンの特徴をすでに表現しています。演技に入る前から、お客さんを煽って、まるで競技会場がライブ会場へ早変わりした様。カナダのスケーターは、スケーティングスキルの高い方が多いのですが、このカップルも、例にもれず。スピードの中で快活な動きを混ぜながら進むステップワークは、とても疾走感があって、ぐいぐい心に入ってくるようでした。

こちらのカップル、昔から、しっとりした曲調の時も、優れた音楽表現が印象深かったのですが、ノリノリのプログラムでも、明るさや力強さを前面に出した表現力で、振れ幅の広さを感じました。

 

5位に入った、ロシアのアレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組。怖いもの知らずのパワーを炸裂。少し、選曲に起承転結が欲しかったところですが、そのことを差し引いても、キレキレのムーブメントと、勢いのあるスケーティングで圧倒。フリーダンスに向けて弾みをつけました。

 

4位は、団体戦でも、存在感を発揮した、アメリカのマディソン/エヴァン・ベイツ組。演目は、「ビリーアイリッシュメドレー」で、こちらも個性満点。途中、スケーティングで躓くような場面はありましたが、見せ場の力強いリフトと、音にぴったり合ったツイズルでカバー。どこか、暗さと妖艶さを感じるナンバーを体で感じ取り、技に雰囲気を感じさせる表現力はさすが、ベテラン。フリーの宇宙人プロで、どこまで、巻き返してくるのか、目が離せません。

 

3位、アメリカのマディソン・ハベル/ザカリー・ダナヒューの演目は、「ジャネットジャクソンメドレー」今年、本当にジャクソンファミリーのナンバーに挑む人多いな~。

ノリのいいジャネットの曲を途切れを感じさせない、流れのあるスケーティングで魅せてくれました。キレがあって、ダイナミックな動きやステップが随所に入っていて、ジャネットのゴージャスなMVの世界をそのまま、リンクで表現できていたと思います。

 

僅差の2位は、ロシアのヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ。ロシアの第一人者の二人。ノリのいいストリートダンスのリズムをクールに決めていても、ステップやツイズルは基本に忠実。優等生の滑りを見せてくれました。特に、二人の同調性は、目を見張るものがありました。おそらく、団体戦の時よりも、更にパワーアップしたように思えます。

 

そして、そして、お待たせいたしました。オリンピック大本命、フランスのガブリエラ・パパダキス/ギョーム・シゼロン組。

世界のトップレベルはさすがに、一味も二味も違いました。注目のツイズル、二人の距離の近さと言ったら! ツイズルをしながら、細かい手の動き、相当コントロール力が必要とされるはずです。同調性もぴったり。お互いがお互いの影のようです。そして、注目のリフトはもう、本当に彫刻が滑っているのかと思うくらいの難しい体勢と体勢をキープする筋力。

もう、最初から最後まで、音楽を演じつくす、極上のアイスダンスの世界がそこに展開されていきました。

 

鬼気迫る男子シングルの後のアイスダンス。こちらも、火花が散りながら、競技の特性からか、エンターテインメント性の高い、どこか、アイスショーを見ているかのような興奮がありましたね。昔、フィギュアがまだ、日本でブームになるはるか前、アメリカで行われていたクリスマスオンアイスのアイスショーを思い出していました。それはとても、夢いっぱいで幸せになるエンターテインメントだったのです。今大会、こんなに高レベルな技巧の数々、もっと、多くの人に見て、知ってもらいたいなあと、いう気持ちが強まりました。

注目のフリーダンスはまた、後日。各スケーターが織りなすドラマの続きを、ぜひ、堪能しましょう。