~King and Queen達の宴~ 88rising・Head in the clouds 2021フェスについて

 

 

8月くらいからそわそわしていた。アメリカのレーベル、88rising所属のメンバーたちが集結するHead in the clouds 2021のフェスが11月に迫っていたからだ。昨今の状況の中で、本当にライブができるの?という不安。ずっと、活動休止状態のJojiがライブに出るって本当? フェスに関する情報は、チケットのことと、参加者はワクチン接種証明書を提出すること。うん、そうね。アメリカのロサンジェルスで行われるフェスは、日本人の私には遠すぎた。貧乏なおばさんには国境を越える財力も勇気もない。そんな中、朗報が舞い込むことになる。なんと、88risingさん、ライブストリームを配信するというではありませんか。Amazon primeのリンクが貼られたTwitterの告知は、フェスの直前。これは、見ろってことだよね… 迷うことなく、ライブストリームにアクセスした当日。結果、最高だった!

ほんの少しだけ、熱狂を思い出し、印象に残ったライブの模様をご紹介することにしよう。

 

まず、印象的だったのは、インドネシアのラッパー、Rich Brian。今夏は「edamame」もヒットを飛ばし、注目度が更に上がったシーズン。現れた瞬間、Brianから、オーラが漂っていた。生で彼のラップを聴くのはこれが初めて。言葉がクリアーに聞こえるし、息継ぎが大変そうなのに、自然にサウンドに声が溶ける。ラップスキルが高い人なのだということは、ラップに詳しくない私でも感じることが出来た。「edamame」では枝豆の着ぐるみを着たダンサーを従えて、お客さんを煽る、煽る。新曲「New tooth」ではMVの不穏な世界観をちらつかせ、表現力の高さを見せつけた。個人的にうれしかったのは、名曲「History」と「Drive Safe」が聞けたこと。そう。私がリッチブライアンの中で一番好きなのは「Drive Safe」だったのだ。最近、表現したいことがより尖った方向に行っている気がしていたBrian。もう、ライブで「Drive Safe」を聴くことはないのかな?と、思っていたところだった。嬉しい!やっぱりこの曲、いいな~。生で聴くとRich Brianのピュアな感じが更に伝わってきて、ジーンとしてしまった。

 

更に、88risingファンの間ではおなじみのアーティスト。Keshi。ベトナム人の両親の元で育ったテキサス州ヒューストン出身のシンガーソングライター。甘い声のラブソングが持ち味だ。歌っているところを初めて見たが、手足が長く、ステージで見栄えがするルックス。そんな、Keshiが憂いのあるボーカルを披露してくれるのだ。これは酔わない訳がない。

歌の途中で「えいえいお~」って聞こえたのでちょっとびっくり。なぜ、日本語?

ギターの演奏等、多彩なところも随所に見られ、これから、もっと、世界に認められるアーティストになるだろうと確信をもった。

 

今回、このフェスに並々ならぬ、意気込みで臨んでいたのでは、と思わせたのはNiki。言わずと知れたインドネシアの歌姫。まだ若いのに、もはやベテランと言ってもいいほどの貫録が感じられた。バックダンサーを従えて、魅惑的なダンスを披露した彼女。クールな歌が更に、凛とした存在感を放つ。かと思えば、フリルたっぷりのドレスで現れ、急にキュートなアイドルのイメージ。歌声も、衣装によって、少しずつ、色を変える彼女。視覚的にも、聴覚的にも、お客さんを楽しませることを知っている、エンターテイナーの面を随所に発揮した。ゴールドの衣装に身を包み、「Every summer time」を熱唱するNikiは、まるでシュープリムス時代のダイアナロスのようだった。しばらく、Niki旋風はとどまることを知らないだろう。

 

そして、そして、いよいよ大御所の登場! Jojiのステージが始まった時に、「本物のJojiだ!まさか、本当に出演するなんて…!」と大感動。だって、そりゃそうでしょ。ほぼ、1年、新曲出すでもなく、SNSも休止状態。沈黙を続けていたKingがどんなステージになるのか、期待半分、不安半分で、登場を待っていたら… あれ? Joji、元気そうだぞ! 歌声も前に見たライブの時より、パワーアップしている気がする。もともと、Jojiは歌声を聴かせるライブのイメージはなかった。彼はどちらかというと、ライブで、お客さんと、コネクトすること、パフォーマンスを楽しんでもらうことにフォーカスしているイメージがあった。そのパフォーマンスの世界は、ダークで、コミカルで、そしてあまりにもエロティック。正直、おばさんの私には刺激が強すぎるかな~などと思っていたことを謝りたくなった。J久しぶりにみんなの前に表れたJojiの歌声には張りがあり、歌声が更に深くなっていた。パフォーマンスもお客さんにプレゼントを投げるファンサービス。相変わらずのサービス精神旺盛なところを感じつつ、抑えるところは抑える匙加減のうまさ。Joji、パフォーマーとしても、シンガーとしても、また一段階ギアを上げた! そう思わせてくれるほど、その日のステージのJojiは神がかっていた。定番の「Slow dancing in the dark」。マイクを客席に向けて、「Daaaaark!」一緒に画面越しで歌ってしまったよね! いつか、ライブで生「daaaaark」したい、と思っていた私。配信ライブとは言え、夢がかなったことに感激もひとしおだった。きっと、一生、忘れない。ありがとう。Joji。

 

今回の88risingのフェス。開催は大成功に終わった。会場に行けたお客さんは、満足のステージだっただろう。世界中で、このフェスに参加できなかったファンの私たち。ライブに行きたくても行けない事情を抱えたそれぞれの地で、ライブストリームを鑑賞することが出来た。本来なら、このストリーム配信、料金がもっと発生してもおかしくないほどのクオリティーだった。なのに、88risingはこの配信をAmazonプライムで行った。多少の手数料がかかる場合もあるが、最低限の出費で、世界中の私たちはこのライブを楽しむことが出来た。そう感じたとき、88risingの心意気に私はとても感銘を受けた。彼らは知っている。彼らを支えているファンの私たちの経済事情を。そして、そんな私たちに寄り添った料金設定で、配信を敢行してくれた。そのことは、88risingが真のアーティスト集団なのだということを感じさせてくれた。これからも、厳しい時代は続く。けれども、こういった状況で工夫と配慮を駆使し、フェスを届けてくれるレーベルがあることは、未来に希望が持てることだと思う。どうか、また、フェスが開催されますように。その時、どこにいても、私たちはまた繋がれる。改めて、ありがとう、88rising。忘れないよ。この宴を。