君たちのストーリー フィギュアスケートNHK杯観戦記

 

 

フィギュアスケートグランプリシリーズも中盤戦。今回は、残念ながら羽生結弦選手、紀平梨花選手、アレクサンドラ・トゥルソワ選手と、棄権が続出。どうなることかと、思いました。私自身、ホルモンバランスの関係か、少し体調を崩し、うまく観戦がままならない状態でした。

そんなわけで、心にヒットした演技をいつもより少なめではありますが、綴っていきたいと思います。

 

まず、今回、SP、FP共に印象に残った選手は、河辺愛菜選手。ショートプログラムで綺麗なトリプルアクセルを披露したほか、大胆で果敢に攻めていく強気な気持ちを演技から感じることが出来ました。昨年までと比べると、ぐっと大人っぽさが増して、演技力の面でも惹きこまれるものがありました。

 

松生理乃選手も新人らしい、初々しさで、リンクに爽やかな風を運んできていました。NHK杯、緊張もしたと思うけど、お客さんの前で思いっきり、自分の演技を披露できたことは、彼女の競技生活につながっていくと思います。

 

そして、坂本花織選手。SP、FP共に圧巻。もはや坂本選手は、自分の今季のストーリーを仕上げにかかっているのではないかくらいの完成度です。彼女から感じられるパワフルな中にある、女性らしさ。曲の盛り上がりと共に、大人の女性、「坂本花織」の人生を共に目撃しているかのように感じます。このまま、シーズン中、安定した演技が見られることを期待しています。

 

ペアでは、りくりゅうがまた素晴らしい成功を見せてくれました。。ロシア勢に続いて、3位に入りました。解説の元パートナー、高橋成美さんもおっしゃっていましたが、二人の絆が形になり、どんなに難しいエレメンツも安定していましたね。やはりお互い信頼関係があると、近づいたり、離れたり、ムーブメントに一体感が生まれます。日本人同士のペアとして、久しぶりの快挙を成し遂げた二人はこれから、もっともっと、世界で活躍していくことでしょう。

 

アイスダンス、小松原夫妻の「SAYURI」は、とても美しかった。彼女たちが、様々な葛藤の中でお互いよりそい形作った「和」の世界。リフトの時に祈りをささげるようなポーズの小松原美里さん。そこには動と静、相反するものがまじりあった世界観がありました。彼女たちの今季の戦いは、大変ハードなものになると思います。けれども、私は、彼女たちにしかできない唯一無二の「和」の世界を、これからもずっと応援していきたいなっておもいました。

男子はもう、SPもFPも、大混戦。誰が勝ってもおかしくないほどのレベルの高さでした。

三浦佳生選手も、山本草太選手も、ジャンプを決めるごとに自分の色を会場に放出していて、新鮮な感動を会場に届けてくれました。

頭一つ抜き出たのは、韓国のチャ・ジュンファン選手。FP、冒頭ミスがありながらも、演技が進むにつれて、ジャンプが安定し、ジャンプとジャンプの間がとてもなめらかなつなぎで、最初のミスを忘れてしまうくらいの熱演でした。何か、ミスをしても、次で立て直そう、というイメージトレーニングが日ごろからできているのでしょうか。リカバリー能力に秀でているのは非常に強みです。

 

2位に踏みとどまったのは、我らがヴィンス。アメリカのヴィンセント・ジョウ選手。いくつかジャンプにミスはありましたが、今季、ここまで、猛練習を積んできました。そのことは、ミスをしても引きずらないでジャンプをまとめられることにつながったのかもしれません。本当に緊張していたと思います。アメリカ大会での演技の後、「こんなに仕上がっていたら、この先持つのかな?」と心配になっていました。今回、少し、ミスがあったことによって、また更にファイナルやナショナルに向けて、課題がみつかって、仕切り直しができるチャンスにつながったかもしれない、という気がします。グランプルファイナル出場も決め、まずは一安心。また更にレベルアップしたヴィンスのストーリーを心待ちにしています。

 

1位の宇野昌磨選手。プレッシャーのかかる試合でも、良い練習を積めていたのでしょうか。余裕を感じましたね。ジャンプの踏切りなど、技術的にもしかしたら、指摘されちゃう部分もあるかもしれませんが、羽生選手から「所作が美しい」とコメントがあった部分は、更に研ぎ澄まされていたと思います。今季は、今まで以上に音楽を感じて、自然に解釈できて、演じているように思えます。それにしても、エキシビションナンバーがマイケル・ジャクソンプロって意外でしたね~。でも、本人ノリノリで滑っているから、気に入っているのかもしれませんよね。ステファンのプレゼン力の高さに改めて感心してしまいます。

 

グランプリシリーズの中盤戦、選手一人ひとりから、ストーリーを感じられる時期に入ってきました。物語は、オリンピック、そして世界選手権で佳境を迎えるでしょう。冬から春までの長いようであっという間の時間、私たち一人一人が目撃者であり傍観者。存分に冬の祭典を盛り上げていきたいと思います。