噓をついているのは誰? 深みにはまるギルティ・ソングについて

 

 

その日、何気なく、Spotifyを聴いていたら、心をぎゅっとつかまれるような曲に出会いました。その曲は、嘘の気持ちと本当の気持ちを交互に織り交ぜ、人生の深い悩みの部分に触れた気がして、すごく共感させられました。

曲名は、サカナクション「enough」。

open.spotify.com

詩のフレーズで一番心に残ったのは、「庭で死んでいた蝉を見て いつか一人になると知った 本当です 本当です」という部分です。すごく心情がリアルに感じられますね。

私は、嘘をつくのが苦手な人間だと、常日頃から思って生きてきました。でも、そんな私でも、本当の事が言えずにいた瞬間は人生で何度も訪れています。「これって嘘をついていることになるのかな? 誰かに? 自分に?」そう思って、自問自答していた日々。この曲を聴くと、そういう自分を少し解放できるような気分になりました。

この曲をきっかけに、嘘とは何か、真実とは何かをテーマに曲を探す日々が始まりました。そう、今回は、どこか、罪深さを感じさせる「ギルティ・ソング」と私が勝手に解釈した曲の数々についてご紹介したいと思います。

 

嘘が詩のフレーズに出てくる曲はいろいろありますが、その中でも、特に一押しなのはこちら。Jojiの「Ew」という曲。

youtu.be

穏やかなトーンのボーカルが心にすっと入ってくる曲。実はとても悲しい失恋の歌です。

相手は自分から離れて行ってしまう。だけど、君が存在していけるのは「こちら側の世界」だよ。と呼びかけている主人公。でも、結局、無理に引き止めたりは出来ずに恋は終わりを迎えていく。すごく考えさせられる歌詞ですね。一部のフレーズで去っていく相手に伝えようとしている言葉が印象的でした。

 

Quietly still

In a lie

Oh good night

I don’t mind.

 

(嘘の中で静かにそのままで 

ああ おやすみ 

いいんだ 気にしないよ)

 

相手が離れていく先は嘘の世界? それでもそのことを許しているのでしょうか。こんな風に誰かを手放していく感覚は、優しくてとても悲しいですね。アルバムの冒頭から、惹きつけられる、珠玉のバラードです。

次にご紹介するのは、デンマーク出身のバンド、Lukas Grahamの「Lie」

youtu.be

 

離れて行ってしまった恋人。まだ自分に未練があるはずなのに。新しい彼と「触れ合っても」何も感じないはずなのに。それでも「これで満足」と自分に言うなんて。どうしてそんな嘘がつけるの? う~ん、もしかしたら、別れた後も、やり取りをしていて、元カノは自分に未練があると確信があるのでしょうかね。今の恋人との「触れ合い」に不満があって、昔の恋人のことを思い出してしまうとしたら、それはある種の「悲劇」のような気がしてしまいますね。でも、様々な理由があって「現状に不満はない」ことにしてしまうのでしょうか。そういえば、そんな風に過ごしていたように見える人、昔、周りにいたような… この種類の嘘の善し悪しジャッジするのは、相当難しいような気がしてしまいます。

 

Rich Brianとのコラボが記憶に新しいカナダのHIPHOPミュージシャン bbno$の「Help herself」もかなり、込み入ったギルティ・ソングのように感じてしまいました。

 

youtu.be

「彼女」と「君」が別人同士なのか、同一人物なのかで、解釈が変わってくる歌だな、と思いました。分かっているのは、「君」が頭から離れないということ。いくつもの「嘘」が問題を難しくしている、ということですね。 「edamame」の時の尖ったラップとは大分違う、繊細なカラーが見えて、bbno$さんに対する印象がかなり変わりました。

 

嘘をつくということは、人生において、どういう場面でも、避けられないときもあるでしょう。しかし、一旦嘘をついてしまったら、嘘に嘘を重ねる人生が自分に近づいてくる気がします。そのことは果たして幸せなのかな? そう思った時に、私の心の中で一人のアーティストの歌が沸き上がってきました。

 

Charaの「うそつくのに慣れないで」。

open.spotify.com

嘘はつく方もつかれる方も辛いです。一旦離れてしまった心は、もう戻らないのです。

それぞれの人生の中で、どうかこういう気持ちを忘れないでいられたら。そう願わずにいられません。

 

色々と、考えさせられる、ギルティ・ソングは思ったよりも、至る所にありました。人生に迷った時に耳を傾けて、人生観を見つめなおすのも、いいかもしれません。