光と影、そして、「星の瞬き」Stars On Iceを終えて

ゴールデンウイークが終わり、完璧にフィギュアスケートシーズンが終わってしまった中、皆さま、お元気にお過ごしでしょうか。去年はコロナの影響で中止となってしまったアイスショーStars On Iceが、今年はなんとか、開催されましたね。我らスケオタ、辛い現実を一瞬忘れることができたのではないでしょうか。今回は、例年と違い、日本人スケーターだけで開催されたStars on Iceのことを想い出に残しておきたいと思います。

 

冒頭のグループナンバーは、The weekendの「Blinding Lights」。

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この曲は、2020年のシーズン、洋楽シーンにおいて非常に象徴的なナンバー。誰もが一度は耳にしたことがあるのではないかぐらい、大ヒットした曲。冒頭、みんなの前に現れたのは、羽生結弦選手。マイケルジャクソンを思わせる大胆な振付、実は、オープニングのソロパートは本人振付とのこと。正直、びっくりさせられました。もともと、クールなマインドは彼に備わっていたのです。クールかつワイルドなプログラムに挑んで、清潔感のある色気が彼の持ち味でした。今回も、清潔感を感じさせながら、今までの羽生くんとどこか、違う。そう思いましたね。なんというか、今までまとっていたベールを脱ぎ棄てて、26歳の大人の羽生くんのリアルさみたいなものが、感じられました。どこか、退廃的だったり、光の中に見え隠れする「闇」みたいなものも表現しながら、羽生くんを中心に、クールな光が渦を巻き始めました。

And I said ooh I’m blinded by the lights.

No, I can’t sleep until I feel your touch.

このフレーズは、本当に「ニクイ」と思います。今シーズン、「触れる」ことを極端に避けてきた世界。どこか、距離を隔てた閉塞感の中で過ごしてきた私たち。会場の空気を通して、画面を通して、演技を通して、光に「触れる」ことができるようなそんな歌詞で締めくくられるオープニングには、格別の感動がありました。

オープニング以外でも、今回出演した「Starたち」は一瞬の瞬きをたくさん、私たちに披露してくれました。

連続ジャンプがまるで連続花火みたいで、みんなを沸かせた三原舞依選手の「Fireworks

スーツとネクタイ姿に身を包み、小粋なナンバーをお洒落な表現力で魅せた友野一希選手。

技術と技術のぶつかり合いで、コケティッシュなナンバーをアスレティックな魅力に変えて楽しませてくれた、宇野昌磨選手を中心としたグループナンバー。

カップル競技ならではのダイナミックさを存分に発揮してくれた、りくりゅうやチームココ。

黒のシンプルなレオタードを思わせる衣装で、バレエダンサーのバーレッスンの一こまを演じているかのようなストーリー性のあるプログラムを見せてくれた坂本花織選手。

ストールを、パートナーに見立てて、ジャンプなしのスケーティングで見事な存在感を発揮してくれたショーディレクターの佐藤有香さん。

しっとりとした雨音とカノンの心地よいバラードナンバーで、澄んだ色をリンクに残してくれた、紀平梨花選手。ショーが進むにつれ、心に星の瞬きが溜まっていくようで、ただただ、幸せで、時を忘れました。

そして、主役はやはりこの人。羽生結弦選手。披露してくれたナンバーは2016-2017シーズンのSP、プリンスの「Let’s go crazy」。アイスショーでみんなと一体になれるようにと選んでくれたこのナンバー。久しぶりに白のコスチュームで披露してくれたこのプログラムは、試合とはまた違った盛り上がりと熱狂を会場にもたらしてくれました。ショーといえど、手を抜かない羽生選手。見事な4回転と、難しい入りのトリプルアクセル。「稲妻のようだな」心に突き刺さるくらいシャープな光を帯びたスケーティング。きっと、一生忘れないと思います。

エンディングの曲はEmeli Sandé (エミリー・サンデー)さんの「Shine」。あれ?オープニングは「Blinding Lights」でエンディングは「Shine」…このショーのテーマ、もしかして光…? 国別対抗戦が始まる前に羽生選手が宣言した「誰かの光になれるように」そして、このアイスショーは「Stars on Ice」。

そう。すごく深いテーマがこのアイスショーに込められていたのではないかと感じた私は、本当にこのアイスショーを見られて良かった、って感じました。

世界を覆う「不安の闇」、フィギュアスケートのスポットライトの背後にある「闇」。私たちの住む世界には、様々な闇が存在しています。闇の存在に、くじけてしまうことも、きっと誰しもあるでしょう。けれども、太陽も星も、たとえ雲に隠れていても、空に「いつだってある」のです。生きている以上、光を心に照らしていかなければ、と私はこのアイスショーを見て、決意を新たにしました。そう、だからお願い、フィギュアスケートも一人ひとりの「スター」が、これからも明るく照らし続けて…

来年も、新たな光あふれるアイスショーが開催されることを、本当に心から願っています。