素直にLOVE! 感謝の気持ちを込めて… Family Song特集

 

 

Rabbit Rabbit White Rabbit! いよいよ五月に入りましたね。GWの真っただ中、皆さん、いかがお過ごしでしょうか? なかなか、暖かくならない春。お風邪などひいていませんか? GWが過ぎれば、待っているのは、そう、母の日。年に一度、日ごろの感謝を込めて過ごす日がもうすぐ近づいて来ています。

そこで! 今回は、「ありがとう」の気持ちを中心に、家族をテーマにした曲、個人的に家族と聞きたい曲などをセレクトした、Family Song特集をお届けしていきたいと思います。

 

さっそく、曲探しの旅に出た私。まず、真っ先に耳に飛び込んできた曲はこちら…

 

Taylor Swiftで「The Best Day」。

youtu.be

正直、この曲を聞いたときには、涙が込み上げてきました。いつでも、どんな時でも自分の味方でいてくれるお母さんのことを歌にした曲。いじめられた時も、ドライブにつれていってくれたお母さん。自然で、ソフトで、でも、深く愛情の込められた優しい曲は、誰にとっても、心にくるのではないでしょうか。

 私自身、思春期には、人間関係でかなり悩んできました。いじめられて帰ってきても、さりげなく気を使って、私が言葉にするのを待っていてくれた母。学校に行きたくなかった高校時代、「今日は学校を休んで、映画を見に行こうか!」と言って、街まで連れ出してくれて見た映画は、「A River Runs Through It」でした。なんとなく、母の優しさと距離感をありがたく思いながら、次の日は頑張って学校に行ったのを思い出しましたね。

見守っていてくれた母への想いが、この曲によって思い出されてきました。

 

そして、家族という存在がかけがえのないものであることを強く歌にしているのは、The Chainsmokers, Kygo の名曲。「Family」

 

youtu.be

 

自分のためにどんな犠牲もいとわない存在。それが自分にとっての大切な「Family」。人生に悩んだ時に、家族は、自分のために様々な苦労を共にしてくれたりします。苦しい時こそ、一緒に歩んでくれる家族の存在は、誰にとっても、大切な心の拠り所ですよね。

この場合の家族は、実際の家族の場合もあるし、人生で出会った「仲間たち」のことをさす場合もあるな、と、曲を聴いて感じさせられました。いずれにせよ、そんな強いきずなで人と繋がれることは、自分を成長させてくれると思います。

困難な状況に陥った時に、思い出して聴きたい曲です。

 

ここで、家族のことを歌にはしていないけれども、家族と一緒に聴きたくなる曲をご紹介しておきたいと思います。

藤井風さんで、「ガーデン」。

 

youtu.be

人生を楽園に例えた、美しい歌詞。人生という楽園に様々な花が人との出会いという形で咲き誇ります。そして、季節は少しずつ移ろい、出会いと別れを繰り返し、様々な感情が降り注いでくる。人生という楽園が果てるまで、多くのドラマが続いていく。こんなに深い人生観がこめられた歌詞を弱冠24歳の若者が作れるなんて、本当に天才と言っていいでしょう。人生で繰り広げられる出会いと別れの中には、家族も存在していることでしょう。一人ひとりへの存在や思いを美しい景色と共に振り返って淡々と受け止めているこの歌からは「達観」した思いも窺えます。大切な人と、この曲を聴いて過ごしてみると、お互いに対する愛情や感謝の気持ちが深まるかもしれません。

 

そして、曲探しの旅の過程で、ありがとうの気持ちをこめた直球のFamily Songと出会うことが出来ました。

Diana Rossで「Thank you」。

youtu.be

シュープリムス時代から、ダイアナは様々な愛の歌を歌い続けてきてくれました。そんなダイアナの最近の曲は、こんなにも愛と感謝の気持ちを綴ったナンバーでした。おそらく、これまでの人生を踏まえて、自分の側にいてくれた人々や、神様に対しての想いが「Thank you」に込められているのでしょうね。日本版のMVでは、様々な人々が、「ありがとう」の想いをフリップに綴っていて、見ていて、幸せな気持ちになれました。愛することって、ありがとうと言えることって、こんなにも暖かいものなのだと、改めて感じることのできる曲です。

 

様々な形のFamily Songをお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか。日本人にとって、「ありがとう」って「I love you」に匹敵する言葉なのではないかなって、個人的に思っています。そんな、愛に溢れた言葉を素直に言えるように、折に触れて、家族と、Family Songを聞いて気持ちを届けることができたら素敵ではありませんか?

カーネーションのお花と共に、とっておきのFamily Songのプレゼント。いつもと違った愛情表現で、素敵な日をお過ごしください。

終わり良ければ総て良し Joji in Coachella2022 思い出日記

 

 

ついにその日が来てしまいました。世界最大級のライブイベント。その名もCoachella(コーチェラ)。日本からは、きゃりーぱみゅぱみゅが出演することで、話題になっていましたよね。実はこのイベント。2020年に開催される予定でした。コロナの問題が起こり、延期に次ぐ延期。2年越しでようやく開催の運びとなったのです。

なぜ、私がそのイベントを知っていたかというと、答えは簡単。推しが出演予定だったからです。 その名は、私が、このブログで何度となく紹介してきたミュージシャン、Joji。

所属する88risingのフェスでは、元気そうな姿を見せてくれていましたし、自身のツアーも成功を収めていた彼の2年越しのステージ。当日まで、心躍る気持ちを抑えることが出来ませんでした。

迎えた当日、事件は起きました。事前にフォロワーさんから連絡が入って知ったのですが、Jojiは急な体調不良で、一旦、ステージを折り、ライブが中断してしまったようなのです。その後、主催者側からの説得により、ステージは続行された模様ですが、本人はかなり体調が悪かったらしく、歌うことがしんどそうだったと、居合わせたファンが口にしていました。

ライブは、YouTubeで配信される予定だったのがそれも、キャンセル。もう、言葉がありませんでした。現地にいない以上、何が起きたのか、私には分かりません。ただ、インスタでコーチェラへ出演することを喜んでいたJojiの気持ちを考えると、とても気の毒におもいました。同時に、2週続けてのこのイベント。もし、体調が思わしくないのであれば、無理をしてほしくない。そのような気持ちが心から湧き上がりました。

そんな、我々ファンの心配をよそにJojiは、インスタストーリーに「2週目、頑張るよ」と気合のこもったメッセージを投稿。「え、大丈夫なの? 無理しないでほしいけど…」心配は尽きませんでしたが、祈るような気持ちで、2週目のライブ当日はやってきました。

もちろん、他のミュージシャンのパフォーマンスも、それまでに堪能はしていました。Rina Sawayamaのアグレッシブなステージ。カーリーレイジェプセンの往年のヒット曲は視聴しながら、口ずさみましたし、同じ88risingのNikiの成熟したステージも、興奮がヒートアップし、「ただでこんなに楽しめていいのかな?」と思ったのを覚えています。

日本でのJojiの放送時間は、4/25 の午後2時。ツイッターを頻繁にチェックしていると、

特に、アクシデントのようなものはなさそう。大丈夫…だよね。直前までなぜか、私まで緊張しながら、チャンネルを開いて時を待ちます。

時間ぴったり、ステージに楽器演奏者が移り、前奏と共に現れたのは、風船ボールを大量に抱え、スキップ姿でさっそうとステージに表れたJoji。「あれ?なんか、楽しそう。今日は調子がいいのかな?」そう思った瞬間、Jojiは語りかけるように「Coachella!」と叫びました。会場は早くもヒートアップ。日が落ちかけたライブ会場に、鳴り響くは、「Sanctuary」のメロディ。思わず、うるっとしましたよね。先週の悲報の後だから、余計に「ああ、私、この瞬間を待っていたんだ…」っておもったのです。

繰り広げられるJojiのステージは、強い刺激を前面に出したものではありませんでした。ステージ上の彼は、淡々と、深い声で、語りかけるように歌をMC挟むことなく、披露していきます。時折何度も「Coachella!」と語りかけると、会場も熱のこもった声援が飛ぶ。Jojiのステージには、刺激的なダンサーも、華やかな衣装も、突き刺さる照明も必要ない。ただ、ゆったりと流れるように心に届く、Jojiの歌声と、珠玉のテクニックを聴かせる楽器の演奏者がいれば、それだけで十分。曲が進むたびに私の心は、温かいもので満たされていきました。「Mr Hollywood」では「Come back ○itch!」とご機嫌なジョークで切ないバラードに彩りを加えるかと思えば、「Gimme Love」では「I Can’t let you go Coachella!」ともしかしたら、自身の境遇に対するジョーク?それとも、来年も参加したいのサイン?などと、期待を抱かせるコメント。曲と、同時に過去、現在、未来がリンクして、ストーリーまで昇華させているみたい。こういうところが、特別なセンスを感じるよなあって改めて、感動させられました。何より、Jojiがステージを思いっきり楽しんでいるのが伝わってきて、そのことが私も嬉しかったです。

ラストの「Slow dancing in the dark」ピアノソロとJojiの第一パートを華麗に歌い上げた後、「See you later」と行って、ステージを去りかけるJoji、「え?、まさか!」と思いかけたのもつかの間「Just kidding! Ahahaha! まだここにいるよ!」とこれまた、ジョークで、本編のボーカルへ突入。も~Jojiったら、最後までごきげんなんだから。

この日のステージは、とても余裕があり、観客も、自然に盛り上がっていくのが分かりました。最後の「daaaaaaaark!」も、ステージと客席、息がぴったり。「Thank you Coachella! I love you!」と叫んだ時に、一瞬、Jojiが浮かべた、感極まったような表情。サングラス越しでも、確かに、Joji自身が、この日のライブに手ごたえを感じて、幸せを感じていたことが伝わってきました。

様々なハプニング続きだったCoachella。けれども、終わり良ければ総て良し。今回のライブイベントを通して、音楽って、ライブっていいなって、久しぶりに思い出すことが出来ました。願わくば、来年までに、世界がもっと、ライブを心から楽しめるような状況になっているように、そう願わずにはいられません。 ありがとう、Joji。 そしてありがとう、Coachella。 また、いつか。

ドラマのクライマックスは… 世界フィギュア2022思い出話4

 

 

世界フィギュア思い出話も、4シリーズ目。今回は最終日に行われた、エキシビションの模様について、触れたいと思います。滑走順は、プログラム親交のまま、順不同となります。

 

アイスダンス銅メダル アメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。試合では、奇抜な衣装に超個性的な振付が際立った二人でしたが、EXでは、しっとりとしたバラードナンバーを披露。エレガントなリフトやスケーティングで客席を魅了しました。お互い、力の強弱や、ペース配分を十分に熟知しているだろうことが、演技中のほどよいゆとりから感じることが出来ました。二人を映すスポットライトが白いハートマークに見えて、演技の余韻も味わえるのがEXならでは。

 

女子シングル4位 アメリカのマライア・ベル選手が披露したのは、「レディ・ガガメドレー」。彼女には、ノリノリの洋楽ポップスが良く似合います。シャンパンゴールドの衣装に身を包み、首筋から、肩の使い方で、軽快なリズムをさりげなく表現。特に「Rain on

Me」がかかった時は、動きがのって、躍動感が感じられました。とても、キュートなマライアのショーナンバー、試合同様に魅せ方を知っている選手です。

 

男子シングル銅メダル アメリカのヴィンセント・ジョウ選手。フェニックスを思わせる衣装で滑るのはIllenium の「Lonely」という曲。切なく焦がれる恋心がテーマのこの曲。最初は控えめな動きから始まり、中盤では激しくもがきながら、飛び立つ火の鳥を連想させます。オリンピックからワールドまで、彼はどれだけ悩み、苦しみ、それらに耐えて来たでしょう。ファンミーティングに参加したり、インタビューを読ませて頂いたりした際に、ヴィンスは普段、感情を抑え目にしている人なのかな?と感じることがありました。きっと、周囲を気遣い、わがままが言いたいと思っても、胸の内に秘めてしまいそう。そう感じさせるヴィンスは、スケートの表現の中で、自らの激しさや情熱を外側に放出させているように見えました。どことなく、妖しく、切なく感じるこのプログラムはセルフ・コレオとの噂。彼の代表作に加わる予感がします。

 

 

ペアシングル銅メダル カナダのヴァネッサ・ジェームズ、エリック・ラドフォード組。難しいスローイントリプルルッツを中盤で決める、試合さながらのレベルの高い構成。動きのシンクロもゆったりとした曲に合わせて加速。試合ごとに演技ごとに、ペアを組んで間もないとは、思えない技術力のレベルアップが感じられます。アーティスティックな魅力に富んだ二人。大人の情感を感じさせてくれました。

 

 

男子シングル6位 日本の友野一希選手。演目はサラリーマンの日常を演じる軽快なナンバー、「Bills」。今回、急な世界選手権出場の連絡を、前試合開催地の空港で聞かされた友野選手。EXの衣装を持参していなかった彼は、フジテレビのスタッフさんに頼んで、フランスの地で、衣装を調達。小道具のかばんもなく、フランス出張ということで、スーツケースを代用して、ぶっつけ本番で臨んだとのこと。しかし、不思議なことに急場とは思えぬほど、その場の雰囲気に馴染んでいたのです。今季は、「海外出張」がとにかく多い年でした。イタリア、ロシア、エストニア、そして最終出張はフランス。出張の締めくくりはリクルートカバンから、スーツケース。まるで、新卒の社会人が、キャリアを重ね、大きなプロジェクトを次々と任され、孤軍奮闘、海外出張を成功させる、というストーリーに、小道具もばっちり合っていましたね。今シーズンの友野くんの物語がリアルに伝わってきました。会場からは、割れんばかりの拍手と歓声。終わってみれば、世界を振り向かせた友野くんがそこにいました。

 

アイスダンス 5位 カナダのパイパー・ギルス、ポール・ポワリエ。生演奏による演目は「Starry Starry night」。美しいメロディーに乗せて、抑制された情熱がほとばしるプログラム。随所に凝ったリフトやスピンを織り交ぜ、オリジナリティーを感じさせてくれました。個性と優雅さ両方兼ね備えているのがこのカップルの魅力です。

 

EX後半はメダリストたちの更に激しさを増した演技の数々。

 

男子シングル銀メダル 日本の鍵山優真選手。演目はMisiaで「明日へ」。今どきのJpopをエキシに選ぶ辺り、彼の若さを感じますね。ところどころ、足首の柔らかさや、流れるようなスケーティング等、見せ場を作ります。見ていて、少し思ったことは、このプログラム、Tシャツとデニムで滑ったら、どんな風に見えるだろうということ。彼の若さがもしかしたら、もっと、引き立つかもしれないなどと、個人的に思ってしまいました。10代で、オリンピックに次ぐメダルを獲得。これから、更に個性に磨きをかけていく彼に期待しております。

 

女子シングル銀メダル ベルギーのレオナ・ヘンドリクス選手。なぜか、滑っているときに、しきりにイタリアのカロリーナ・コストナー選手を思い出しました。スケーティングの伸びやスピードがどこか似ていたのかもしれません。勢いよく、ドリルのように滑りぬけるツイズルは非常に見応えがありました。

 

ペア銀メダル りくりゅうこと。日本の三浦璃来・木原龍一組。最初のツイストリフト高い! 流れの中で飛ぶスローイングジャンプも軽々。試合と同じクオリティで技が次々と決まっていきます。プログラムの後半では、非常に危険な力技も2か所ほど披露。メダルが決まってのエキシで滑ることがとてもうれしい、という思いが、演技を通して伝わってきました。爽やかな二人の風がリンクを吹き抜けます。最初から最後まで、笑顔で溌溂としたEXでした。

 

アイスダンス 銀メダル アメリカ マディソン・ハベル、ザッカリー・ドノヒュー組。マディソン選手の花柄のコスチュームが甘い雰囲気を醸し出します。ローテーショナルリフトはとても早く、一歩間違えば危険な技。それをまるで難しいことなどしていないかの如く、魅せてしまうのはさすがです。リフトをされているときの女性の美しい姿勢をキープする力なども、上位に入るのに、必須なスキルなのだということを感じました。

 

 

女子シングル 金メダル 日本の坂本花織選手。演目はセレーナゴメスのセンチメンタルなバラードナンバー、「Lose to love me」。 このように静かなバラードナンバーの中でも、溜めたり放出させたり、エネルギーのコントロールが巧みなかおちゃん。ジャンプも後半にトリプルフリップを入れたり、ジャンプを連続でこれでもかと入れたり、EXだからと言って手を抜かないところが、さすが、金メダリスト。どんなタイプの曲も陰と陽の演じ分けがはっきりとされており、いつまでも見ていたい気持ちにさせてくれるスケーターです。

 

ペア金メダル アメリカのアレクサ・クニエリム、ブランドン・フレイジャー組。再三申し上げますが、この二人のリフト、女性の上空におけるポジションの美しさは類を見ないものがあります。良い意味で、昔ながらのオーソドックスなペアスケーターの存在感を感じるのです。リズムの捉え方も非常にエレガント。全ての技が綺麗でまとまっているってこんなにすごいことなのだと感じさせてくれました。

 

男子金メダル 日本の宇野昌磨選手。演目は「マイケルジャクソンメドレー」。今回のEX、ワールド金メダリストになったことが、やはり嬉しかったのか、いつもよりも楽しそうに滑っているように見えました。マイケルジャクソンの音楽が気に入っているのか、リズムの乗せ方、体全体で音楽を感じている表現が印象に残りました。

 

アイスダンス 金メダル フランスのガブリエラ・パパダキス、ギョーム・シゼロン組。

冒頭、飛び上がった女性のパパダキスを男性シゼロンがぶれずに受け止めて、リフトからスピンをする、という、簡単そうに見えて難しいことから演技が始まりました。重心の低いリフトでも、二人の体勢は崩れることがありません。お互いの体幹がしっかりしているからこそ、エッジを傾けたステップや、軸の取りにくいリフトも軽々とやってのけられるのでしょう。全てのエレメンツが金メダル級であっというまの数分間。競技者としてはこの演技が最後になるとのこと。今後はアイスショーでその確かな技術を再び見せてほしいと思います。

 

世界フィギュア2022のエキシビション、忘れられないドラマのクライマックスが私たちを感動へといざなってくれました。それぞれが培ってきた技術と経験が、名演技へと昇華されていくのを見ているのは、本当に夢のようにうれしいことです。

そして、祈らずにはいられません。また、平和な世の中で、このような素晴らしい試合が開催されることを。

スポットライトのその先 世界フィギュア2022 思い出話3

 

 

いよいよ、新年度の始まり。新しい季節に向けて、新たに一歩踏み出す方も、多い今日この頃ではないでしょうか? フィギュアシーズンを振り返れば、オリンピックイヤー、そして今回の世界フィギュアとハイレベルな戦いが続き、非常にエキサイティングなシーズンだったと思います。

 

世界フィギュア思い出話もいよいよシングル競技に差し掛かりました。ヒーローとヒロインたちの熱戦を思い起こしていきたいと思います。

 

まずは、女子シングル。

 

日本の若手、河辺愛菜選手。SPでは回避したトリプルアクセルに果敢に挑んでいきました。惜しくもオーバーターンになってはしまいましたが、スピードにのった高いジャンプに見えました。流れをコントロールできれば、また、全日本の時のような素晴らしいジャンプを決めることが出来る、そのような伸びしろを感じられた演技だったように思います。伸びやかなイーグル、エッジが氷にのっていたスケーティング、随所に魅力を発揮することが出来たので、これから、場数を踏んで、更に成長を期待したいと思います。総合で15位に入りました。

 

トリプルアクセルが持ち味の樋口新葉選手。怪我の影響だったのでしょうか、少し、いつもの勢いが感じられず、冒頭のトリプルアクセルで転倒。その後も、いくつかジャンプミスがあり、総合で11位。ただ、きまったジャンプはスピードに乗って、回転もきれいでしたし、音に合わせる動きのアクセントに独創性を感じました。躍動感のあるステップシークエンスでも、客席を魅了していくのが伝わってくるスケーターです。非常にエネルギーを使った、ワールドであったと思いますが、また、次の試合に向けて、ゆっくり休んで、万全のコンディションで臨めることを祈ります。

 

総合4位に入ったのは、日本でも大人気、アメリカのマライア・ベル選手。ところどころ、回転不足が響き、一つ順位を落としましたが、美しいスピン、音楽と一体となったスムーズなムーブメントなど、魅力も光りました。全体的に、あっという間に終わってしまうのは、総合的に魅せる力が高いということかもしれません。ベテランならではの雰囲気づくりも巧みな選手です。

 

銅メダルは、アメリカのアリッサ・リュウ選手。SPからの逆転劇でした。冒頭のトリプルアクセルを見事に決めた後、ジャンプが次々に決まり、安定の技術力を見せつけます。今シーズンは、コーチの変更、自身のコロナ感染等、厳しい戦いのシーズンだったと思います。枠取りがかかった大事な一番で、実力を発揮できるそのメンタルの強さ。非常に今後がたのしみな選手です。はちきれんばかりの笑顔で滑りぬいた後、我に返って、泣き崩れる彼女から、まだ、10代のあどけない少女を垣間見たような気がします。この結果は、彼女にとって、非常に意味のあるものだったと思います。

 

銀メダルは、ベルギーのルナ・ヘンドリクス選手。大人の雰囲気が持ち味の選手です。全てのジャンプで、両手を上げて飛び上がるタノスタイル(アメリカのブライアン・ボイタノ選手が始めたことでこのボイタノジャンプと呼ばれています)を多用し、ポイントを積み上げていきました。ステップで、氷の上を進む際には、片足滑走が多く、漕ぐところの少ないスケーティング力を発揮。ベルギー初のメダルを獲得。本人もかなり感極まっていたキスアンドクライが印象的でした。

 

そして、金メダルは、オリンピックに次ぐ、快進撃を見せた、坂本花織選手。このFP、大人の女性の力強さ、自由さを余すところなく発揮するプログラムなのですが、何しろ体重移動が多く、普通に滑るだけでも、ぐらぐらしそうなのに、かおちゃん、すごいスピードで、簡単そうにステップやコレオシークエンスをやってのけます。ジャンプもトップスピードで、入り方の難しいジャンプを決め、SP同様、そこに舞姫がいるかのような優美さ。終わってみれば、155点台の高得点。今シーズン、主要な大会で、ほぼノーミスを続け、シーズンの締めくくりでも自己ベスト更新。彼女の取り組んできたことが、全て花となり実となる結果になりました。

 

続いて、男子シングル。

 

今回、急遽代打出場が決まった友野一希選手は、穏やかな表情でスタート地点に立ちました。

SP、会心の出来で、初の100点台を出し、総合3位につけた友野くん。FP、ラ・ラ・ランドでは、練習の時間が十分ではなかったのでしょう。ところどころミスが響き、総合6位に。しかし、終始、キレとスピードを感じさせるスケーティング。なによりも、ラ・ラ・ランドの楽しい音楽を体中から奏でているかのようなコレオシークエンスでは、会場の声援が自然に沸き起こりました。試合を忘れさせるかのような友野くんにしかできない華のあるスケーティング。世界中が友野くんに「気が付いた」瞬間を見たような気がします。この結果は必ず、次に生きてくると思いました。

 

総合5位に入ったのは、今回、上位では唯一ノーミスのFPを披露した、アメリカのカムデン・プルキネン選手。高くて幅のある、ダイナミックなジャンプと、のびのびとしたスケーティングが持ち味のカムデン選手。今回は、男らしさとワイルドさが持ち味のカッコいいプログラムで、会場をカムデンの色に染め上げていきました。ずっと、ポテンシャルの高かったカムデンが、ここワールドにきて、覚醒したのを見た気がしました。来季、末恐ろしい存在になりそうです。

 

銅メダルはオリンピック、コロナ感染により棄権したアメリカのヴィンセント・ジョウ選手。

オリンピック後、かなり精神的に落ち込んで、難しい調整の中、挑んだ世界フィギュアでした。とにかく、後悔を背負って生きていきたくはない、その一心で臨んだ今大会。このプログラムは以前の世界選手権で銅メダルを獲ったいい思い出のあるプログラム。全体的に動きが体に馴染んでいたと思います。後半に行くにしたがって、ジャンプも動きも研ぎ澄まされていきました。このプログラムを通して、ヴィンス自身のこれまでと、「今」を精いっぱい生きるヴィンスが伝わって、強い感動を与えてくれました。今回、おそらく無欲で臨んだ、FP、うれし涙を流せる結果になったことは本当に良かったと思います。

 

銀メダルは、日本の鍵山優真選手。大事な大一番の瞬間、彼は、大きく息を吐きました。こんなに、緊張していた鍵山くんを見たのは、おそらく、初めてだと思います。しかし、はじまってしまえば、スピードに乗った流れのあるジャンプを次々に決めていきます。挑んでいった4回転ループは回転がほどけてしまい、ダウングレード。最後のトリプルアクセルも、回転が抜けてしまうミス。ところどころ、惜しいところはありましたが、ミスを最小限に抑えて、オリンピックに次ぐメダル確定。今季は収穫の多い年になったのではないでしょうか。

 

金メダルは日本の宇野昌磨選手。最初から、落ち着いた雰囲気で演技が始まりました。中盤で決めた4回転フリップが、順位を確定したような気がします。ボレロはとても運動量の多いプログラム。優勝を決めたインタビューで、「こんなに大変なプログラムを滑り切れたのだから、今後、どんなプログラムがきてもこのプログラムよりは楽だと思う」とコメントし、コーチのステファン・ランビエールさんから「昌磨、今後さらにステップアップしていくから、楽になることはないよ」と間髪入れずにツッコミがはいっていたのもまた、興味深い一こまでした。

 

様々な感動とドラマがつまった、世界フィギュアも終了し、また選手たちは新しいシーズンに向けて、アイスショーに、練習にと、大忙しの日々が待っています。今回は、今まで、なかなか注目されずに来た選手たちに、スポットライトが当たったと感じる瞬間が数多くありました。一旦、スポットライトが当たった選手たちは、その後、大きく飛躍を遂げることが増えていく。それがこのフィギュアスケート。悲喜こもごもの結果の中、どうかこれからも、頑張っている選手が一人でも多く、スポットライトが当たるようにと、願ってやみません。

美しさが磨かれるとき 世界フィギュア2022 思い出話2

 

 

暖かい春風が吹き始める中、世界フィギュアが幕を下ろしました。思い出を綴ろうとしていたのですが、日々の雑事に追われる中、観戦だけが精いっぱいでブログの更新が途絶えてしまいました。

フィギュアスケート世界選手権、忘れてはならないのは、フィギュアはシングル競技だけではない、ということ。先に行われた世界フィギュアでも、美しい演技の数々に、私たちは魅了されていました。

今回は、カップル競技を中心に、振り返っていきたいと思います。

 

まずは、ペア。 

 

波乱があったのは、アメリカ代表 アシュリー・ケイングリブル、ティモシー・レデューク組のFP演技の時でした。

 

SP、二人の演技は、静かな音楽の中に、スピードが加速していく、メリハリの効いた印象を与えてくれるものでした。リフトで、女性のポジションが美しく、彫刻を思わせるようで、どのようなポジションでも、女性を美しく魅せる、アメリカの伝統的なペア、という雰囲気の二人。SP2位で折り返していたのです。

FPで、度重なるミスの後、リンクに倒れこみ、そのまま途中棄権。どうやら、女性の脳震盪によるものだったとのこと。二人の動きの同調性等、優れた技術が随所に見えるペアだったのですが、非常に残念な結果に終わってしまいました。途中で、女性がけいれんしているように見えて、息が止まりそうになりました。幸い、ケイングリブル選手は、後に回復したことを公表してくれたので、また、二人の元気な姿をリンクで見られるように祈っています。

 

銅メダルに輝いた、カナダのバネッサ・ジェームズ、エリックラドフォード組。お互い、違うパートナーで実績のあった二人。最初から最後まで流れが途切れないプログラムをSP、FP共に披露してくれました。ペアを組み始めてまだ、間がない二人。すでに十分な経験を積んでいる者同士、これから、ますます、活躍が期待されます。

 

なんといっても、日本のスケオタが待ち望んでいたのは、日本のエース、三浦璃来・木原龍一ペア。「りくりゅう」の愛称で親しまれている二人は、今回、どんな演技を見せてくれたのでしょうか。

 

SP、エモーショナルなバラードナンバーに乗せて、冒頭のツイストリフトは高々と上がりました。ソロジャンプもきちんとそろえて、二人は流れに乗ります。なんといっても、滑っている二人が終始楽しそうなことがとても印象的。二人の間に通う確かな信頼関係、そして、爽やかな笑顔が、リンクを笑顔で満たしていきました。ただただ、二人を見ていると、スポーツっていいな、楽しいなって思わせてくれる、そんな健康的な美しさを秘めている二人。SP3位と最高の滑り出しを見せてくれました。

 

FP、緊張があったのでしょうか、少し、ミスが重なりました。そんな中でも、シーズン初めから磨き抜かれた、難しいリフトは少しも色あせることなく、随所に、世界トップレベルの技を繰り出して、総合2位を果たします。演技が終わった後、緊張感がほどけたのでしょうか。木原選手はしばらく、リンクに座り込み、立つことが出来ませんでした。そんな、木原選手を、心配そうに見つめる三浦選手。やっとの思いで立ち上がり、お互い笑顔になった時、長い戦いを支え合いながら乗り越えた、二人のパートナーシップを見たような気がしました。総合2位で、世界選手権日本ペア初の銀メダルを獲得したのは収穫でしたね。

 

SP、FP共に一位はアメリカの選手。アレクサ・クニエリム、ブランドン・フレイジャー組。

SPでは、ミスのない、パーフェクトな演技で、観衆を魅力の渦へいざない続けます。リフトの女性のポジションの美しさに加えて、降り方にも複雑なターンを入れながらの工夫が見られ、トップレベルの技術を見せつけてくれました。

 

FPもまた、ノーミスのパーフェクトな演技。デススパイラルの前に、ちょっとしたリフトを入れるなど、技の前後に凝ったつなぎをいれているから、技の難易度や出来栄え点でも、点数が上がっていくのもうなずけます。正直、同国のペアのアクシデントによる、途中棄権があって、かなり動揺していたことでしょう。その中でも、きっちり、自分たちのベストのパフォーマンスを発揮した後、二人は歓喜の涙で泣き笑い。見ているこちらまで込み上げてくるものがある、フィニッシュでした。

 

そして、アイスダンス。オリンピック後の疲れが残る中とは思えない、ハイレベルな戦いがそこにありました。

 

総合3位は、アメリカのマディソン・チョック、エヴァン・ベイツ組。

RDはビリーアイリッシュメドレーで、すこしダークかつ魅惑的なナンバー。全てにおいて、女性が男性を誘っているような怪しげな香りが技の随所にちらつきます。リフトでは、女性が支配的なポーズで周回するところが象徴的でした。美しいだけではない、不思議なエネルギーに満ちた二人。

FDでは、エイリアンがテーマのプログラム。Daft Pank メドレーの中、エイリアンと遭遇した宇宙飛行士という設定を、リフトやスピンの中に、個性的に織り込んでいくのが見えました。こういう、個性を演出するプログラムは、確かな技術があるからこそ、見ごたえのするものなのだと思います。二人は、技術力と個性を両立する世界を見せてくれました。

2位もアメリカのマディソン・ハベル、ザッカリー・ドノヒュー組。

 

RD、ジャネットジャクソンメドレーのパワフルでノリノリのナンバー。 音にピタリと合ったツイズルとパワフルさの中に垣間見える深いエッジワーク。技術が正確で、一つ一つの音の拾い方も余念がありません。正直、オリンピックの時よりも更にパワーアップしていたと思います。

 

FDはRDとは対照的にゆったりとしたバラードナンバー。優雅に滑りながら、力がどこにも入っていないリフト。スピンから直ちに体勢を変化させる時も、弾みをつけているようには全く見えません。静かな曲の中でスピードを加速させて滑るというのも、技術力がいることだと思います。始めから、終わりまで、二人の愛の世界を堪能することが出来ました。

 

そして、お待ちかね、完全優勝はフランスのガブリエラ・パパダキス、ギョーム・シゼロン組。

 

RDではお互い、対の鏡であるかのようにぴったりそろったツイズル、リンクをエッジワークで進んでいくときのエッジは常に深く傾いていて、難しいことをしているのに、さも簡単なように終始見せてしまいます。ところどころ、ゆったりとしたリズムや、激しさのあるリズムに合わせて、自由自在にスピードを変えていく彼らは、本当にレベル違いの滑りを見せつけてくれました。

 

FD、男女の「愛」がテーマになっているかのような振付を二人はただただ、正確なテクニックで滑りぬけます。ツイズルを行ったときの進む速さと飛距離。重心の低いリフトも高々と持ち上げるリフトも女性は演じることに手を抜きません。もう、技術がずば抜け過ぎていて、ただただ、二人が紡ぐ、大人の「愛」の世界を堪能できた、という感じ。正直言って、リンク上の二人は「滑る宝石」だったと思います。

 

カップル競技を追いかけていくと、上位陣、どのカップルも、磨き抜かれた技術と得も言われぬ表現力で、私たちを魅了してくれました。美しさとは、やはり卓越した技術力と内面性の深さから導き出されるものなのだと改めて思います。表情の「華」も、努力なしでは咲かせられません。

 

来シーズンも、それぞれの美しさに磨きをかけて、私たちを惹きつけ続けてくれることを、楽しみにしています。

 

希望そして自由 世界フィギュア2022 思い出話1

 

 

時は春。ようやく暖かくなってきて、春になれば、花と共に、希望の季節が始まる。そう思っていました。オリンピックまでは。

昨今の世界情勢はあまりに厳しく、加えて、東北を中心に大きな地震が日本を襲いました。

春とは思えない寒い日々の中で、何が真実なのか、見極めるのも難しく、希望はなかなか、見えずにいました。

 

そんな中、フランスで世界フィギュア2022が始まりました。ロシア選手と中国選手が不参加の物々しい状況の中、恐る恐る演技を見てみると、そこには、オリンピックの時より、はるかにレベルアップした選手たちの珠玉のパフォーマンスの数々がありました。

 

まずは、SPから、振り返っていきたいと思います。

 

日本の新人、河辺愛菜選手。真っ白のコスチュームに身を包み、トリプルアクセルを回避したものの、コンビネーションジャンプや、スピン等、オリンピックより硬さの取れた、伸びやかさを披露してくれました。ビバルディの冬に合わせて削った氷を宙に蒔くフィニッシュ。明るい風を最後に感じさせるようなみずみずしい演技でした。点数は、まだ、知名度がないためか、少し抑えられ気味。しかし、ミスが許されないSPの重圧の中で、自分のやるべきことはしっかり出せていたと思います。

 

トリプルアクセルが代名詞、日本の樋口新葉選手。どこか、怪我をしているとの情報も入ってきていました。こういった不調に関しては、ご本人があまりおっしゃったりしないので、辛さが伝わりにくいですね。そんな中、最後まで力強さを保ち、感情を込めたバラードのナンバーを情感たっぷりに演じ切っていたと思います。少々辛口採点ではありましたが、会場のお客さんは彼女の「愛」をしっかり受け取っていたのでしょう。歓声がすごかったです。

 

アメリカのホープ、アリッサ・リウ選手。直前、同じアメリカのカレン・チェン選手が、ジャンプでパンクするなど、痛恨のミス。枠取りがかかったこの試合、重圧が彼女にものしかかっていたのでしょう。冒頭のトリプルアクセルを回避。しかし、最初から最後まで、スピード感がすごくて、流れが途切れないスケーティングでした。若さとエネルギーを感じさせる、勢いのあるムーブメントは、とても好印象。演技が終わった後に涙していたのをみると、緊張していたのでしょうね。最後まで、気持ちを保ち続けた姿はとても立派でした。

 

アメリカのマライア・ベル選手。とてもきれいな旋律の音楽にのって、ジャンプもしっかり飛んでいきました。彼女の肩の動かし方、エッジの運び方には、曲とマッチした、独特のエモーショナルな感動が溢れています。大人の女性の憂いを存分に魅せてくれました。

 

ベルギーのルナ・ヘンドリクス選手は、お兄さんもフィギュアスケーターとして、活躍されていましたね。彼女のディープエッジなスケーティングは、フィンランドキーラ・コルピを思わせるものがありました。ジャンプまでのスピードと、降りた後の流れもきれいで、そういった確かな技術の中に、大人の女性の優雅さや貫録をうまく演じていたと思います。SP2位で折り返し。足にテーピングを巻いた痛々しい姿からは想像もできないほど、メリハリの利いた、素晴らしい演技でした。

 

そして、SP1位に立ったのは、我らが坂本花織選手。正直、現地入りして、調子を崩していたとの報道があり、心配していたのですが、本番、全然余裕でしたね。ジャンプの前後のつなぎが濃いダブルアクセル。リンクの壁の文字を目で追えば分かるのですが、すごいスピードでぐいぐい進むスケーティング。音楽との調和がとれて、優雅さを魅せるレベル4のステップシークエンス。どれをとっても質の高い至高の演技。余裕と貫録に満ちたグラディエーターでした。

 

続いて男子SP。

 

若さ爆発の良演技を披露したのは、アメリカのイリア・マリニン選手。冒頭、持ち味のクワドルッツトリプルトゥル―プを決めると、あとは、「Billie Jean」のクールなサウンドに乗って、勢いのあるスケーティングを余すところなく伝えてくれました。まだ、ジュニアの年齢なので、PCSは、少し抑えめでしたが、10代のうちにここまでの高得点を打ち出せる彼は、これから、必ずやメダル争いの常連になることでしょう。

 

雪辱を果たすためにこのフランスの地に降りた選手がいます。その名は、アメリカのヴィンセント・ジョウ選手。オリンピックでは、まさかのコロナ感染による棄権。メンタルが非常に心配されていたのですが、終始、落ち着いていました。Josh Grobanによる「Vincent」は、とても、エモーショナルなプログラムです。彼の人生の歴史が込められていると言っていいこのプログラム。高難度ジャンプがちりばめられていても、失敗する気配が、最初から最後までありませんでした。リンクの白いキャンパスに、ヴィンスの色がどんどん塗られていくような、そんな鮮やかなSPでした。得点は回転不足を取られましたが、このショートプログラム、以前はミスが響き、フリーに進めなかった、いわくつきの作品でもありました。

今回、FP最終グループをこのプログラムで果たせたことで、ひとつ、何かを越えられているのではないかと思います。頑張ってほしいですね。

 

SP3位に躍り出たのは、「浪速のエンターテイナー」から「世界のストーリーテラー」へと階段を上り続けている日本の友野一希選手。友野選手にとっても、世界フィギュア進出までの道のりは本当にドラマティックでした。彼は、本来第二補欠だったのです。シーズンの締めくくり試合として選んでいた欧州のクープ・ド・プランタン。その移動中の飛行機で、第一補欠だった三浦佳生選手けがにより、繰り上りで、自身が世界フィギュアに進出することを知らされたとのこと。なかなか、心身を調整することが難しそうなシチュエーションでしたが、友野選手はまっすぐその報告を受け止めて、世界フィギュア入りしました。

冒頭の4回転3回転や単独の4回転を決めると、友野選手の持ち味である、甘さと柔らかさ、自由に音と戯れるイメージが、リンクに広がっていきました。恐らく、自身の史上最高のパフォーマンスができていたのではないかと思います。メダル争いに必要な100点台に初めて乗せることが出来て、FPの弾みになる演技になりました。FPも、友野選手のこれまでを信じて、自由を感じて滑ってほしいと思います。

 

SP2位、鍵山優真選手。かなり、レベルの高い状況で演技を迎えた彼。緊張しない訳がありません。いろいろな声がネットを行き交った試合前、様々な意味で戦いにくい状況であったと思います。ただ、そんなこと、彼はとくに気に留めていなかったみたい。冒頭の4回転3回転も、次の4回転も、スピードに乗ったディープエッジで軽々と決めてしまいます。シーズンの冒頭よりも、様々なつなぎが増えていることを感じました。3Aは少し、ひやひやしましたが、スピードと深いエッジワークで、なめらかなステップシークエンスを見たとき、「レベル4とったな」と確信しました。この若さで、あんなに、いろいろな声があったのに、ここまでプレッシャーの中で決められるって、すごく強いメンタルですよね。貫録すら感じられました。FPは一段階上の四回転ループに挑むことも明言。この際だから、一個でも上を目指して、おもいっきりやってほしいと思います。

 

SP1は宇野昌磨選手。冒頭の4Fがきまってから、最後までミスのない演技を披露していました。オリンピック後で、こちらも疲れていたと思いますが、調整がうまくいっていたことを感じさせてくれました。FPのボレロはかなり、エネルギーを使う構成になっていますが、ミスなく、完璧な演技目指して、頑張ってほしいと思います。

 

 

と、ここまで、書ききれないので、一旦ここまでの思い出話になります。ともすれば、暗くなりそうな春の瞬間、オリンピックの疲れを感じさせない密度の濃い戦いは私に希望を感じさせてくれました。こんなときにでも、楽しかったと思わせてくれる選手たちには、ただただ、頭が下がります。

試合の楽しみ方は基本的に自由。特に決まり事などなく、それぞれの好きなスタンスで応援出来ればいいと思います。けれども、試合を実際に見ることがなければ、称賛も批判も基本的にできない、と私は思います。自分の目で、耳で受け止めて感じたことが全て。そこだけが、私の中にあるルールです。

 

FPへ向かう選手たち、どうか、一人ひとりが、プレッシャーをはねのけて、SP同様、自由にのびのびとした演技を見せてくれることを、期待しています。

春になればきっと… お花見に盛り上がる春ソング特集!

 

 

ようやく、暦は3月。厳しい冬の寒さが和らいできた今日この頃。そろそろ、お花見のシーズンも近づいているのではないでしょうか? 私たち、日本人にとって、春のお花見は、特別な意味を持つ場合が多いような気がします。今年の桜を今年の内に、目に焼き付けるって、毎年、風物詩として、心に留めている方も多いのではありませんか?

コロナの時期、近所のお花見すら、どこか気が引けてしまう私たち。最近は、切り花でおうちお花見を楽しむ方もいらっしゃるとか。

そこで、ドライブでお花見を楽しむ方も、おうちで切り花お花見を楽しむ方も、傍らに音楽を響かせて、過ぎ行く春を堪能してみてはいかがかと思い、考えました。

名付けて「春はすぐそこ! お花見に盛り上がる春ソング特集」! 私のプレイリストからお気に入りの春ソングをご紹介したいと思います。

 

まずは、春の訪れを待ちわびる気持ちが高まるこの曲、Lucky Kilimanjaroで「春はもうすぐそこ」。

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出だしから、ゆっくり大地に花が芽吹いてくる気配を感じますし、色鮮やかなサウンドが春の日差しや春風を思い起こさせます。春は、新しいことを始めてみたくなる季節ですよね。急き立てるように何もかもが新しく始まるこの瞬間。聴いていると、自分の心にスイッチが入るような気がします。

 

夜の桜を思わせるMVが幻想的なのは、クラムボンからの一曲。「夜見人知らず」。

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どこかに終わった恋の面影をそこかしこに感じさせる歌詞。春の綺麗さと、どこかに感傷的な、刹那的なイメージが際立つ曲ですね。この曲はまさに、桜の花の息吹を感じながら、聴きたくなります。夜と桜と、恋。俳句の世界に通じるような文学的なコンセプトで春を描く名曲です。

 

春に終わった恋を、爽やかに前を向いて歌い上げる一曲がこちら。Rin音withクボタカイさんで、「春にふられて」。

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美しく、若い今どきの洒脱なリズムの中に見え隠れする、失恋の悲しさ。悲しいのに、春は私たちを急ぎ足で前へ向かわせます。この曲の主人公も、きっと、下をむくだけではなく、前を向こうとしているのだな、と感じさせてくれるのです。

 

春になると誰かが、必ず、出会いと別れの春を歌にします。日本人は、このように、春の一瞬の光景に様々な思いを詩に託し、春の思い出を形にしようとするアーティストさんがとても、多いのです。私調べになりますが、春の曲を歌っている洋楽って、実はあまりないのですよね。

 

そんな中、春とは、あまり関係がないかもしれませんが、メロディーが温かくて、一瞬の青春を感じさせてくれるナンバーをご紹介。88risingに所属していたAugust 08で「Good Girls」。

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メロディーは綺麗目で抑えめのゴスペル調。歌詞には、ある種の屈折感や、せつなさを感じますが、色とりどりの花に重なると絶妙にエモい!と個人的に思ってしまったのです。花や草木が「Good Girls」や「Bad Boys」に例えられても、良いのかな、と。MVも遊び心があって、とっても気に入っている曲です。

 

洋楽から、もう一曲。Bruno Marsで「Today my life begins」。

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様々な辛いことがあっても、刻々と変わっていく季節のように、重い荷物のような過去は下におろして、また新しいスタートを切ってみよう。今日から僕の人生は始まるんだ。力強く優しいボーカルに、前向きなメッセージが込められていますよね。人生において、新たな一歩を新しい季節に踏み出す、という意味で、この曲を春ソングに選んでみました。

 

どんなに寒くても、すでに芽吹いている草花や、温かみを感じるそよ風から、春の訪れを強く意識する季節になってきたのを感じます。

家族やお友達と集まって、お花見も良し、一人おうちでのんびりと花をめでるのも良し。どうか、あなたなりの春を、今年、めいいっぱい、楽しんでくださいね!